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Synthetic LIBOR問題

Synthetic LIBORに関する質問が増えてきた。6/23にFCAに対してSynthetic LIBORなるものを作る権限を与えるというニュースが出てから、一部のマーケット参加者の間でLIBORが存続するのかという不思議な期待感が盛り上がってしまったようだ。

LIBORのパネル行がレートを提出しなくても、何らかの計算式に基づいてLIBORと名のついたレートが存続すると聞くと、準備が遅れている人たちにとっては飛びつきたくなるニュースなのは間違いない。

しかし、これが米国や日本など他の準拠法の下で問題なく使えるかは定かではなく、訴訟になったらどのような結果になるのかわからない。また、円のSynthetic LIBORが作られるかどうかもかなり疑わしい。FCAはSynthetic LIBORの計算にはターム物が使われることを示唆しているが、まずはターム物のRFRができるかどうかが重要であり、これについては当初想定よりもかなりの遅れがみられているからだ。

おそらくターム物の取引が比較的進み始めている英国ではこの問題はそれほど大きくならず、当局もSynthetic LIBORの利用は極限まで少なくすべきとのスタンスを取っている。米国でも当局がSynthetic LIBORの利用を制限する可能性が高いので、ひょっとしたらこのSynthetic LIBOR問題は日本に最もインパクトがあるのかもしれない。

2021年末以降パネル行がレートの提示を停止した後も、何らかの計算式に基づく円LIBORがスクリーンに表示され続けるのであれば、準備が間に合わない日本の市場参加者は、それを使い続けるのだろうか。さすがに海外がSynthetic LIBORの利用を限定的なものにとどめようとする中、日本だけがこれを大々的に使い続けることはないのだろうが、これに期待する声がちらほら聞こえてくるのも事実である。

どうしても移行ができないTough LIBOR契約が残ってしまうのは仕方ないのだろうが、極力この割合を減らすよう業界としては努力すべきだろう。