バーゼルのカウンターパーティーリスクマネジメントガイダンス公表

バーゼルから、カウンターパーティーリスクマネジメントのガイドライン「Guidelines of Counterparty Credit Risk Management」が公表されている。特に目新しい内容という訳ではないが、何かイベントがあった場合には、ここに書かれていることを普段から行ってきたかどうかが問われることになるため、自社のリスク管理方針と照らし合わせて項目を確認しておくと良いと思う。

概ね以下のような項目について望ましいベストプラクティスが書かれている。

  • デューデリジェンスとクライアントオンボーディング
  • 信用リスク削減(担保、保証やその他のリスク削減)
  • エクスポージャー管理(エクスポージャーの捉え方、ポテンシャルエクスポージャー、ストレステストとシナリオ分析)
  • ガバナンス(人とカルチャー、リスクフレームワーク、レポーティング、リミットと例外管理)
  • インフラ、データ、システム
  • ポジションクローズアウト(要注意リスト、デフォルトマネジメント)

冒頭にも書かれている通り、このようなリスク管理の強化はLTCMやArchegosの破綻というカウンターパーティーリスクイベントを意識して作られている。その意味では、日本で起きているカウンターパーティーリスク損失というよりは海外ヘッジファンド発のものが念頭にある。とは言え、日本でもこうした海外ファンドとの取引が増えているため、無視できる内容という訳ではない。むしろ、海外に遅れないようにリスク管理を強化すべきセクターとなる。

確かに、日本に比べると海外の方がリスクの高い取引が多く市場のボラティリティも大きい。戦争などの地政学的リスクもあり、最近のコモディティ価格の乱高下もカウンターパーティーリスク管理を一層困難にしている。海外で業務を行う金融機関に対しては、こうしたガイダンスに注意を払い、リスク管理を継続的に高度化していくことが望まれる。

このガイダンスでも人の重要性が強調されているが、リスク管理に通じたプロフェッショナルを十分に配置し、それをトップマネジメントに報告する仕組みづくりが肝要である。ここ数年で、リスクマネージャーに対するニーズは大きく高まってきた。日本に比較して海外の方がリスクマネージャーの社内的立場が弱いと感じたこともあったが、最近では、リスク部門がかなり強力になってきている。それも長年リスク管理に携わってきたプロに対するニーズが高まり、給与水準にも変化が生じてきているようにも思える。

リスク管理の経験のないフロントの人間が、異動や転職でリスクの世界に入ってくるということも以前に比べて少なくなり、本当のプロが求められるようになったということは悪いことではない。とはいえ、規制の要請もあるのだろうが、若干リスク管理が増えすぎて保守的な方向に振れているようにも思える。3線管理は重要なのだが、1線と2線の線引きが曖昧になり、1線の中でもカウンターパーティーリスク、マーケットリスクのみならず、いわゆるNFR(Non Financial Risk)へとリスクの範囲が拡大している。

3線管理の問題は、フロントが商品によって複数部門に分かれているため、債券のリスク管理、株式のリスク管理といった形で、複数のリスク管理者が必要になる点だ。そして今度はそれらの部門すべてのリスクを統括する人が必要なのではないかという議論になる。本来であれば2線が管理してきたところだが、2線から1線にリスク管理をシフトさせているところでは、1線のリスクがだんだん増えていく。といっても2線の要員を減らすわけにもいかず、結果的にリスクを見る人が増えていく。

どこかに最適解があるのだろうが、ここまで規制がきびしくなると、なかなか後戻りはできない。だた、昨今起きているイベントを見ると、人が増えれば解決するという問題でもないのは明らかである。リスク管理の高度化と厳格化は望ましいことなのだが、人の質を保ちつつ、効率的に組織運営をするというのも重要な視点だろう。

信用リスク移転マーケットの拡大

CDSの流動性が低い日本では、以前からCVAのヘッジにCLNが使われるケースがあった。クレジットイベントに相対のISDA契約の下での取引のevent of default を加えるForth trigger CDSの形だ。通常はiTraxx Japanでヘッジするのが一般的なのだが、以前はCapitalのReliefも少なかったため、何とかカウンターパーティーリスクを完全に消そうという努力が行われていた。Indexのヘッジ効果が50%認められる可能性のある今では、そこまで頑張ってヘッジする必要はないかもしれないが、それでもデフォルトリスクをダイレクトにヘッジできるメリットは大きい。

対象会社は、そこそこの規模の会社だが、CDS市場での取引が行われていないところとなる。一方CDSの流動性はないものの、社債が流通しているため、ディーラーによっては、Bespokeにマーケットを作ってヘッジをすることもあった。また、複数の銀行が、それぞれに集中しているリスクを交換しあうというアイデアも検討されたが、実際に約定にまで至ったケースは少ないだろう。

CDSやCLN、保証などを使ってこうしたクレジットリスクのポートフォリオのリスク分散を図ることは可能である。こうした場合いつも守秘義務のハードルが立ちはだかるが、CDSでサイレントにヘッジすることが可能なのだから、第三者が間に入ってリスクの最適化をすることは可能なのではないかと思われる。

このようなリスク外しのニーズがある一方で、日本でよく知られた会社のリスクならとっても良いという参加者がいるのも事実である。だからこそ日本ではCLNが比較的盛んに取引される。ネックになるのは会計で、日々時価評価をすることを嫌うところが多い。満期保有にしてPLが日々ブレないようにしたいというニーズが良く聞かれる。その意味ではCDSよりはCLNや保証の方が好まれるマーケットである。

一方米国では、FRBが昨年2023年9月28日のFAQで、ローンの信用リスクを移転するCRT(Credit Risk Transfer)にCapital Reliefを与える道を開いた。実はドイツなどの欧州やカナダではこうしたCRTは広く行われていたのだが、米国では数年前にRegulation Qを保守的に解釈するようになったため、あまり取引が行われてこなかったという経緯がある。

ディール毎に承認を得るのは非現実的であったが、昨年から、一定の条件を満たせば個別承認を省略できる可能性が高くなった。銀行向けのレターによれば、CLNの合計残高が$20bnまたは銀行の資本の100%のどちらか低い方を上回らない限り、毎回承認を取りに行く必要はないとされている。

さらに今般大手銀行のみならず、米地銀5行に対しても同様の承認が与えられた。昨年からのディール数も増えていることから、今後CRTマーケットが大きな注目を集めるようになるかもしれない。そして、このリスク移転のガイドライン緩和に際しては、CDSのみならず、日本で好まれる保証形態も含まれている。こうなると、ISDAの下でのCDSや時価評価を避けたい投資家へとすそ野が広がるかもしれない。海外ではPEファンドなどがメインだが、日本では地銀などもこうした投資を行うようになっていくかもしれない。

NISAはやはり国内個別株に流れた

日本証券業協会の3月末のNISA口座の開設・利用状況が公開された。先月書いたように、これまで個別株にすでに投資していた投資家が、新NISA開始に合わせて成長枠のポジションを一気に増やしたという仮説を裏付ける形になっていると思う。これまで既に投資を行って資産を築いている投資家にとっては、一気に新NISAの枠を使い切ろうというのは自然な行動だろう。

口座開設は昨年同期比1.3倍、投資額が約3倍となっているが、成長枠での投資額は1月から1.68兆、1.28兆、0.9兆と減速傾向にある。積立枠の方はコンスタントに0.26-0.27兆となっているので、積み立て枠の残高は着実に積みあがっていくことが予想される。

個別株は全体の半分くらいだが、うち9割超が日本株となっている。前月もコメントしたように、NISAが始まると、オルカンや米株インデックスにお金が流れるだけという人が多かったが、実際は日本株へ流入している。ただし、投信だけを見ると海外、内外に分類される投信が多いので、海外に流れているというのもあながち間違いではない。経験の長い投資家が国内株を新NISAへ移行させる動きは当初よりは少なくなるだろうから、今後は国内個別株ではなく海外投信が増えていくことになろう。

為替取引の未来

為替のスポット取引の電子化はかなり進んだが、直近ではフォワードや為替スワップ、NDFにおける取引が急速に増えている。

こうしたスポット以外の1日の取引量は、昨年比2倍近くに増えているというデータもある。フォワードについては、従前3ヶ月未満がほとんどだったが、最近では1年を超えるような取引も増えてきている。今後は為替取引のかなりの部分が電子取引に移行していくだろう。

一方大手ディーラーはスポット取引のInternalizationを進める傾向が顕著になっている。外部の取引プラットフォームで取引を行いマーケットを動かしてしまうよりは、内部で売り買いをマッチングさせることができれば、マーケットインパクトを抑えることができ、取引コストも低減できる。

2016のバーゼルのレポートでは、63%のスポット取引がinternalizeされており、多いところでは90%を内製化している。こうなると、規模の経済が働くようになり、取引量の多い大手銀行が有利になる。為替関連取引からの収益の60%は、上位10銀行が上げているというデータもある。

すると今度は、パブリックプラットフォームでの取引が少なくなり、価格の透明性を低下させる懸念が発生する。内製化を完全に禁じることは難しいだろうが、米国の規制はこうした取引をなるべくパブリックな執行Venueを使うように義務付ける傾向があるので、SwapをSEFで取引させたように、極力パブリックな執行機関経由で取引させる規制が生まれるかもしれない。

アルゴやHFTの台頭もあり、取引を小刻みに分けて行い、マーケットインパクトを減らすという努力も続けられているため、そもそも価格が見えにくくなる要因は内製化に限らない。

ここ数年の電子化の拡がりと、内製化の増加は、今後の為替マーケットの方向性を変えていく可能性がある。しばらく、注意を払っていく必要がありそうだ。

経済制裁とデリバティブ取引の解消

ロシアに対する中国の支援抑制を目指して、米政府が中国の一部銀行に対して制裁措置を検討しているという報道があり、マーケットが混乱した。

国として経済制裁を発動するのは仕方ないが、経済制裁で痛手を被るのは、制裁をかけた側、または関係のない国の市場参加者が不利益を被る可能性が高い。業界としても経済制裁発動時にいかにして市場の混乱を抑えながらポジションを解消していくかどうかについて、完全に準備ができているとは言い難い。

経済制裁に関してはISDAがEconomic Sanctions Program & Derivativesというペーパーを出している。この中で挙げられている架空の事例がとてもわかりやすいのでここで紹介しておく。

とある米銀が架空の国Ruritaniaの銀行NBR(National Bank of Ruritania)とCSAの下で$10bnの通貨スワップを行っていたと仮定して、このRuritaniaに経済制裁がかかったら何が起きるかというシナリオが書かれている。

該当取引は通貨スワップなので、時間差で米銀が架空のローカル通貨であるR$を支払い、NBRが米ドルを支払うことになるが、経済制裁のため、米銀はR$を支払うことができなくなるという想定だ。経済制裁によってローカル通貨であるR$が20%下落して($1=100R$と想定)、米銀は$2bnものエクスポージャーを抱えてしまう。

米国の経済制裁リストはSDN(Specially Designated Nationals)リストと呼ばれるが、ここに掲載された会社とはライセンスなしにビジネスを行うことが禁じられる。当然スワップの支払いをすることもできず、マージンコールさえかけられないという判断になると判断される可能性がある。つまり、有担保の取引が、突然$2bnの無担保エクスポージャーとなり、スワップの決済も受けられなくなる。そして裸のポジションを抱えることになるので、市場変動によってはエクスポージャーが最悪$10bnまで無尽蔵に増えてしまう危険性もある。

経済制裁はおそらくISDAのIllegalityをトリガーするが、ライセンスがないと解約権行使さえも経済制裁の違反となる可能性がある。経済制裁のために米銀がスワップの支払いを行わないと、NBRは支払い不履行を理由にポジション解消をしようとするだろう。そしてそれがISDAのCross Defaultをトリガーし、その米銀のその他の契約の解消をトリガーしてしまう可能性もある。

米銀としては、Illegalityが支払い不履行に優先すると主張することもできるが、Illegalityをトリガーしたとしても結局3営業日のWaiting Periodの後はNBRに解約権が生じる。そして、ポジション解消時にクォートを取るのはNon Affected PartyであるNBRサイドにある。そう。経済制裁では、Affected Partyは制裁リストに入ったNBRではなく、米銀になるのである。

ここで、Illegalityを主張する通知を送ると共に、NBRの支払い不履行を訴える。しかし当然ながらRuritaniaの方も国として敵対する国外への外貨支払いを禁じている可能性が高いため、政府の承認なしには支払いができず、これは支払い不履行ではなく、Force Majeureであると主張する。

また、Illegalityでポジションが解消できれば、これ以上のマーケットリスクを負わないというメリットはあるものの、どの価格で解消するかについて不透明性が残る。この場合、NBRがポジション再構築のために得られるクォーテーションを元に解約することになるが、経済制裁などが起きた直後にローカルマーケットがどのようになっているかは定かではない。したがって経済制裁は、制裁をかけた方の国の企業が、大きなリスクを負うことになってしまうのである。

これがISDAが最低30日間のポジション解消期間であるWind-Down Periodを提唱している理由である。OFAC(米国財務省外国資産管理室)でも30日間はライセンスに猶予期間を設けているので、実際にはポジション解消のための時間が与えられる可能性が極めて高い。

ISDAのガイダンスでも、市場の規模、流動性等に応じてこのWind-Down Periodを十分に取ることが推奨されているため、例えば中国などのケースでは、3か月程度の猶予が与えられることになるように思うのだが、実際どうなるかは誰も保証できない。しかし、ロシアですら3か月の猶予があったことは一つのデータポイントとなる。

とはいえ、経済制裁に備えた準備をするとなると、どうしても最も保守的なシナリオが議論される傾向がある。最悪の状況に備えるのがリスク管理者の仕事なので仕方ないが、Wind-Down PeriodもなくIllegalityにヒットするシナリオを考えると、上の架空の例にあったように、かなり困難な状況が予想される。ただ、そうは言っても今の段階から取引を停止してマーケットを壊すのも得策ではない。

ISDAもこの辺りはよく理解しているため、こうしたホワイトペーパーを出して注意喚起をしているのだが、ある程度政府との調整も必要になるのではないだろうか。少なくともISDAの1992年版を2002年版に変えておく、それが難しい場合にはIllegalityの文言修正をしておく必要はある。また、独自に制裁に備えた文言を入れている市場参加者も増えているので、契約の見直しは急務である。

ローンヘッジが一般化してきた

CVAヘッジのためにCDSが本格的に使われ始めて20年近くたつが、これがローンの世界にも広がってきた。CVAは日々値洗いされるため、CDSでヘッジしておけば日々のPL変動が避けられる。しかし、ローンの場合は日々時価評価が変わらない一方CDSの時価だけが変動してしまうため、日々のPLに極度の注意を払う欧米行では、これが大きなネックとなっていた。とは言え、日本のようなマーケットでは、CDSがローンヘッジに使われているところもあり、日々のPL変動を気にしなければ、実質的にはヘッジになっているため、特にこれが問題という訳ではない。

最近欧州銀行を中心に使われているスキームはSRT(Synthetic Risk Transfer)と言われており、主なリスクの引き受け先はバイサイドとなる。投資リターンを上げなければならないバイサイドは、10%とか20%のリターンが得られるなら、こうした資産に投資するインセンティブがある。一方銀行にとっても、バーゼルIIIの最終化もあって資本規制が厳しくなる中、クレジットリスクを減らすことができればRWAの削減にもつながるため、双方にとってWin Winとなる。特に標準法のもとでは、クレジットリスクはかなり大きな資本コストとなるため、リスクが減らせれば資本上のメリットは大きい。

本来であればローン自体を売ってしまえば、様々なオペレーショナルリスクやベーシスリスクを抱えることなくリスクを削減することができる。しかし、銀行としては顧客との関係性を重視するため、貸出金を他に売り払うことはなかなか難しい。SRTによってリスクを減らせれば、顧客関係を損なうことなく資本削減を図ることがj可能になる。

昔から、こうしたリスク削減は欧州系が盛んに行っていた。各種トリガーを時価評価に反映させたり、当初証拠金に現金以外の担保を含めてVA(評価調整)を減らしに行ったりという提案は、たいてい欧州系から寄せられていた。今回も欧州での動きが活発だが、Basel III Endgameの行方次第では米銀の参入も活発になるかもしれない。

とは言え、こうした商品にありがちなのだが、実際にデフォルトが起きた場合に投資家が何とか支払いを避けようという動きも出てくる。CDSのようにDCがデフォルト判定を行うプロセスが確立していれば問題ないが、SRTの場合は契約や事務手続きがすべてBespoke(ディール毎に仕立てられた独自のプロセス)となる。特に日本では、金利減免や返済猶予が他国よりは頻繁に行われ、そのほとんどがプライベートで行われるので、デフォルト判定が難しい。銀行が、SRTでヘッジしている場合だけ、金利減免や返済猶予をせずにデフォルトにもっていくということが起きてしまうかもしれない。

しかし、資本規制が年々強化されていく環境の中、こうしたリスク分散ツールが存在することは、金融が円滑に機能するためには望ましいことである。日本においても、会計士、当局を交えてWorking Groupなどを組織して、信用リスクの移転が透明性高く行えるようになれば、全体としてのリスク許容度が上がり、必要なところに資金が流れるようになるかもしれない。

金利が動いたときに自動的にレポをする取引

もう10年くらい前に書いた記事だが、担保契約の違いを利用してレポ取引をする方法を紹介したことがある。英国のギルトショック時に担保拠出のために国債の売却を余儀なくされたアセマネが多かったことから、今般この手法についての報道が見られた。Collateral Switch という名前で紹介されている。

仕組みはいたって簡単だ。以下のようにBack to Backで金利スワップ(IRS)を行い、金利変動時には現金をA銀行から受け取り、国債担保をB銀行に出せるようにしておけばよい。Back to Backなのでマーケットリスクはゼロだが、カウンターパーティーリスク、IMコスト、資本コストがどれくらいかかるかは確認しておく必要はある。

自社がA銀行から固定金利を受けるIRSを行えば、金利低下時にA銀行に勝ちポジションを持つ。そしてA銀行から現金担保を受け取る。反対のB銀行に対しては負けポジションとなるので、国債を担保に出す形になる。

逆にA銀行に固定金利を払えば、金利上昇時にA銀行から現金担保を受け取り、B銀行に国債を出す。つまりギルトショックのような金利上昇時に国債を現金に換えるというレポ取引が自動的にできることになる。金利変動時に必要になる担保金額に応じてIRSのサイズを調整すれば、金利上昇時に現金が足りなくなって国債を売却する必要がなくなる。もちろん、金利が想定と逆方向に動いた場合には国債を受け取って現金を拠出しなければならない。

だが、このような仕組みを作っておけば、金利上昇時に突然レポで現金を取りに行ったりする必要がなくなるのでメリットは大きい。

こうして考えると完璧な仕組みのように思えるのだが、10年前に提唱した時は、ほとんどこれを実行に移すところは見たことがなかった。良い案ですねとは言われるのだが、実際に普段必要もないスワップを執行するまでではないという反応だった。しかし、ギルトショックを経て担保売却を余儀なくされたファンドの中では、今回こそ本気で検討しているところがありそうだ。

これは何も金利スワップだけでなく、為替やコモディティでも可能である。CCPとの取引、SwapAgentとの取引なども組み合わせて、あらゆる取引を最適化することも可能だ。現金以外のCSAはコスト高になる傾向があるが、国債や社債担保に抵抗感のない中堅銀行、日本、韓国、中国などの銀行と取引をすれば比較的安く取引ができる可能性はある。逆に言えば、銀行サイドはこうしたコストを取引にきちんと反映しておく必要がある。