米国Basel III最終化でCVAが資本制約に

2026年3月19日のBasel III endgameは、前回案に比べると規制緩和ともいえるものだが、その中でCVA資本賦課の役割が大きくなってきた。

これまで、CVA資本賦課は先進的手法(Advanced Approaches)のみに含まれており、標準的手法では対象外となっていた。多くの銀行にとって、先進的手法で資本賦課が減っても、結局はコリンズフロアがあるため、結局は標準的手法の資本賦課がフロアになってしまっていた。しかし、今回の最終案では、この二つのアプローチが拡大リスクベースアプローチ(ERBA: Expanded Risk-Based Approach)に一本化されたため、コリンズフロアも無関係となった。

つまり、これまで標準的手法の資本賦課だけを見ていればよかった銀行は、先進的手法にのみ含まれるCVA資本賦課を気にする必要がなかった。しかし、ERBAではCVA資本が含まれるため、大手行は皆CVA資本を気にせざるを得なくなった。これによってCVA資本賦課は全体で約96%増加とされているので、約2倍になるということだ。

一方で、CCPのクライアントクリアリングによって清算した取引については、クライアントレグ、つまりブローカーが顧客のリスクを取る部分についてCVA資本賦課の対象外となった。当初案ではCVA資本賦課があったので、この変更はクライアントクリアリングを行うブローカーにとっては朗報だ。資本コストがあまりにも高く収益性が低いため、クライアントクリアリングビジネスから撤退するところもあったが、米銀にとってこの状況がかなり改善される。またレポなどのSFTがCVA資本要件の対象外と明確化された点も大きい。

CVA資本賦課の詳細については、BA-CVAとSA-CVAの枠組み自体は維持されるが、最新の国際基準に合わせて若干精緻化されるようだ。SA-CVAでは、金利や為替ヘッジを行えば資本賦課を下げられるということもあり、SA-CVAを採用するインセンティブが大きくなる。BA-CVAではCDSによるヘッジ効果を織り込むことができるが、このヘッジ効果は75%を上限とするとされている。

このように、CVAがERBAのメイン項目へと格上げされたため、BA-CVAの保守的な75%フロアに甘んじ、マーケットヘッジ効果を無視して高い資本を積むか、コストをかけてSA-CVAを導入し、ヘッジ効果を最大限に活用して資本を節約するかという選択になるが、これまでよりはSA-CVAを導入するインセンティブが高まったように思える。

JGBレポ市場に起きている構造変化

日銀のレポート「本邦レポ市場のトレンドと近年の特徴点」が非常に示唆に富む内容になっているので、ここで紹介したい。JGBレポ市場はYCCの下で低迷してきたが、日銀の政策変更を受けて突然取引量が急増した。受け渡し銘柄を特定しないGCも増えているのだが、それ以上に銘柄を特定したSCの増加が著しい。

特にこれを増加させているのが「非居住者」に分類される市場参加者である。SCの増加は日銀の政策変更を後押しするように金利上昇に賭ける10年近辺の銘柄をショートする戦略を海外ヘッジファンドが取ったことを示している。特に2022年の年末頃にこうした海外フローが急増し、市場からモノがなくなってしまったのは、市場関係者であれば記憶されているところだろう。アウトライトで長期国債を強烈にショートし、そのための玉をレポ市場で大量調達していたのである。これはある意味海外からのYCCアタックだったと言えるのかもしれない。

YCC撤廃後は5-10年ゾーンの特定銘柄のショートニーズは減ったのだが、その後は1-5年ゾーンでの両建ての取引が活発になり、先物vs現物の価格の歪みも解消された。金利のボラティリティは高まったものの、正常化と言ってよいだろう。

ただし、両方向のレラティブバリュー取引となると、やはり海外ファンドの取引量の方が増えやすく、今後も非居住者フローにフォーカスが当たってくるものと思われる。レポートによると、所在地別の取引残高では英国が突出しており、これが海外ヘッジファンドの取引量の代替指標となっているとしている。米国はデリバティブと異なってキャッシュ取引に関してオフショアブッキングに制約があるので、これはおそらく正しいと思う。

直近でも、日銀の量的緩和策終了に伴い、昨年6月以来四半期ごとに2000億円の国債購入の減額が行われており、市場に放出されるJGBが増えてきている。長期国債先物の取引量のうち海外投資家の占める割合は7割を超えており、海外中心の動きが強まっている。

とかく投機的などと言われて批判されがちなヘッジファンドであるが、海外では流動性向上に大きな役割を担っている。特に近年は市場アタックをする投機筋のみならず、市場の歪みを捉える参加者が増えており、こうしたフローは、ある意味流動性向上や市場正常化に役に立っていると言えなくもない。米国債のように保有主体の多様化は、国債の安定消化にも望ましいはずである。デリバティブの世界では、日本も海外並みに取引の透明化や標準化が進んでいるが、JGBについても市場の効率化を図ることが望まれる。