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英国がレポの最低ヘアカット導入へ動き出した

英国中銀が、これまで段階的に英国債レポの改革議論を進めてきていたなか、今週7月2日にヘッジファンドのレバレッジ規制を目的として、最低ヘアカットを導入するかもしれないという報道が出ている。

金融危機以降、金融システムの安定化を目指し、資本要件を大幅に引き上げてきた。英国中銀としては、これによって銀行がこの分野を縮小し、シタデルやミレニアムといった投資家がそのギャップを埋めるために参入してきたと結論づけていた。昨年、英国国債レポ市場における借入の33%をヘッジファンドが占める可能性があると報じられたこともあり、ヘッジファンドなどのNBFIに対するレバレッジ抑制の議論が盛り上がっていた。

昨年9月には、英国中銀が「Giltレポ市場の強靭化に関するディスカッション・ペーパー」を公表し、中央清算の拡大や、非中央清算レポ取引への最低ヘアカット規制の導入案を提起した。

市場慣行として、立場の強い一部のヘッジファンドが0%ヘアカットを求めることも多く、これが高レバレッジを助長しているというのが英国中銀の認識のようだ。確かにヘッジファンドは、複数の銀行と取引可能で、銀行としても、取引頻度の多いこうしたヘッジファンドは上顧客である。ヘアカット引き下げ競争が起きているというのは、誰もが認識するところだろう。ただし、2年10年のようなカーブ取引で一方の取引のヘアカットをゼロとすることも多い。スワップや現物とセットでみるとリスク中立だったり、プライムブローカーが別途担保を抑えているケースもあるため、単純に各取引につけられているヘアカットを見ても全体像はつかめない。

仮に2%や5%の最低ヘアカットが義務付けられれば、レバレッジが実質的に制限されるため、今年4月に公表された業界からのフィードバックでは、資金調達コストの上昇が国債市場の流動性に悪影響を与えるとして、最低ヘアカットの導入に反対する意見が多数を占めた。

このような反対の声は強いものの、今回の報道を見ると、英国中銀としては、やはり何らかのレバレッジ抑制策は不可欠と考えているようだ。ただし、米国のように清算集中を義務付けるような方向ではなく、相対取引のままIMを導入した証拠金規制と同じような方向性を目指しているのかもしれない。

今後は、7月中にヘッジファンドのレバレッジポジション制限に関するさらなる詳細情報を提供する見込みとなっており、その後各当局と連携し、来年早い段階で最終提案を取りまとめるようだ。日本にはこうした規制は入らないだろうが、グローバルバンクの中にはヘッジファンドの日本国債レポについても同様のヘアカットを要求するところが出てくる可能性があり、日本市場への影響も出てくるかもしれない。

来週からSIMMの新バージョン適用開始

SIMM® version 2.8+2512が公表され、来週7月11日から適用となる。2025年12月までのデータが使われているので+2512がついているが、イラン情勢を受けた市場変動がまだ含まれていない。市場環境が目まぐるしく変わることを考えると、半年ごとの更新に変更したのは正解だったが、それでもこうしたラグが発生する。昨年は特に金利についてはそれほど大きな動きもなかったので、金利のリスクウェイト(RW)には変更はない。インフレや通貨ベーシスのRWも51と21で据え置きとなっている。

ただし、ポジション集中によるペナルティがかかる閾値については、以下のような変更があった。いずれもペナルティがかかりにくくなる方向なので、IMが減る方向に働く。

低ボラティリティ(JPY): 230 → 370 (USD mm/bp)
標準(USD, EUR, GBP): 210 → 220 (USD mm/bp)
標準(その他): 100 → 110 (USD mm/bp)
高ボラティリティ: 51 → 71 (USD mm/bp)

リスククラス間の相関は金利とFXで10%が15%に上がるなど若干の変更がある。

今回注目なのは為替に関する変更だ。以下のようにボラティリティが高い通貨が関係するとリスクウェイトが格段に上がる形になっている。ドル円などRegular/Regularでも7.1から7.4へとRWが上がっている。為替関連に関してはIMが増える方向になりそうだ。RUB(ロシア)とVES(ベネズエラ)がHighからRegularに変更されているのが興味深いが、ほとんどリスクがないだろうからあまりインパクトはなさそうだ。新たにISK(アイスランド)がHighに認定されている。一方Vegaリスクについては0.34から0.33と緩和されている。

v2.8+2506v2.8+2512
Regular / Regular7.17.4
High / Regular18.031.7
Regular / High18.031.7
High / High30.631.7

クレジットについては、金融セクターのRWが327から271に減っているのがプラスに働くが、ハイテクが326から423に上がっている。株式は微調整程度の変更にとどまっている。

一方大きく低下したのがコモディティだ。欧州電力などは64から29へと大幅に低下、石炭、天然ガス等も軒並み低下している。

総じて日本の市場参加者にとっては、コモディティ取引を大規模に行っていない限り大きな変動はなさそうだ。特に金利に変更がないのが大きい。為替取引を大きく行っているところは若干の影響が出るかもしれないが、為替のフォワード取引がSIMMの対象外であることから、影響はそれほど大きくないだろう。TARF、RDC、PRDCなどのExoticな取引やFX Optionが多いところを除くと、SIMMの増加は限定的なのではないかと思われる。あとは次回のVersionで金利のRWがどう変化するかに注目したい。

為替の清算取引がQ1に急増

Clarusブログによると、今年Q1にCCPで清算された為替取引は前年同期比45%増と大きく伸びている。特にFX Optionが70%増と伸びが著しい。

清算集中規制やマージン規制がかからないFX Forwardも49%増となっている。FX Forwardは、普通に相対で取引をしていればIM(当初証拠金)を出す必要もなく、CCPで清算しなければならない理由もない。日本では、別に清算する必要もないものをなぜクリアするのかというよく聞かれるが、海外では資本コストに対する意識が急速に高まっている。これは欧米に限った話ではなく、アジアの銀行も資本コスト削減のために、CCPへの移行を始めている。HKDやCNHはHKExで清算されているが、当局サイドも清算取引への誘導を進めているように見える。

海外では、NDFはマージン規制対象なので、既にIMを拠出しているため、クリアリングに移したいというニーズは昔からあった。おそらく日本ではNDFの清算は極めて少ないだろうが、現状グローバルなNDF取引の約3分の1がCCPで清算されている。

急速にクリアリング比率が上がっているFX Optionも日本円のオプションがユーロに次ぐ清算量になっている。日本の参加者がクリアリングしないにもかかわらず、第二位の通貨となっているのが興味深い。クリアリング比率は11%とのことである。

この急速な上昇は今年の1月~3月に起きているが、おそらく中東情勢の緊迫化を受けて、ボラティリティが高まり、リスク回避のためのヘッジ取引を増やしたことが主因だろう。だが、同時にクリアリング取引も大きく増えているのが興味深い。市場変動が激しくなると、ストレス損失が増えるため、相対取引よりは清算取引を重視したグローバルバンクが多そうだ。

長期のトレンドを見ると、海外においては、今後は為替取引についても清算取引が増えていくのだろう。

資本規制によって銀行の対応が異なってきた

米系大手銀行はすべてSA-CVAを採用し、高度なCVA管理を進めている。3月のバーゼルIII最終化案でもCVAコストが高くなることが確実となったため、SA-CVA一択という方向性はさらに強まっていくことになる。

欧州でもデリバティブの取引量の多い大手行はSA-CVAを適用するケースが目立つが、ソブリン、事業会社や年金基金に対するCVA免除もあるため、CVAリスクを完全にヘッジせず、BA-CVAを選択するところも多い。

欧州でCVAが一部免除されるのは、為替や金利のリスクヘッジを活発に利用する事業会社が多く、CVA資本を大きくすると、それを銀行がチャージすることにより事業会社が不利になるためと言われている。ソブリンも年金基金も国民生活に悪影響があるということでCVA免除となっている。これを言い出すと何でも緩和できそうだが、欧州では、事業会社向けのコストをある程度銀行が負担しており、取引先破綻時には信用損失が発生しやすいという構図になっているとも言えよう。

一方米国ではこうした例外は一切なく、規制緩和の方向にある昨今でさえ、CVAに対しては厳しい態度が継続している。米国版アウトプットフロアであるColins Floorも廃止されることとなったため、ますますSA-CVAの重要性が高まる。SA-CVRを使うためには資本計算でSA-CCRを使っていることが前提となるが、米銀はIMMが使えなくなり、原則SA-CCRがデフォルトなので、SA-CVAを使うのは極めて自然である。CVAヘッジも日々行っているので、その慣行に規制資本の計算も合わせにいくというのは理にかなっている。

欧州ではカウンターパーティー信用リスクの計算に内部モデル方式(IMM)を使っているところが多いため、CVAの計算自体は問題なくできるはずである。しかし、IMMの継続利用が容認されており、事業会社などへの免除も広範囲に認められるため、BA-CVAのままでいいというところも多いのだろう。しかし、この状態が続くと、米系や一部欧州銀がリスク管理をますます高度化させ、リスクのヘッジも精緻に行っていくようになるのに対し、多くの欧州銀行のリスク管理の発展が停滞してしまうのではないかという懸念もある。

こうした銀行の対応の違いが規制によって起こっているというのは興味深い点である。大手行のリスク管理担当に聞いても、リスク管理上何が正しいかは明らかであるものの、実際の規制によってそれを曲げることは、普通に容認されているようである。

本来であればバーゼルなどの国際基準が幅広く導入されれば、常に共通のルールの上で、システミックリスクを抑えながら金融の安定を達成できる。しかし、国民生活を守るためといった理由で、規制は変更可能であり、自国主義が強まった現在では、こうした傾向がますます強くなってきてしまっている。この弊害は次のリーマンショックが発生して初めて明らかになるのだろう。

リスク削減取引の清算義務免除が進展

既に欧州とオーストラリアで認められていたPTRR (Post Trade Risk Reduction) 取引に関する清算義務免除が、米国でも認められることになった。先週6/17に度米国CFTCからもNo Action Letterが出されている。UKも、英国中銀に清算義務免除を認める権利が定められており、同じような免除が検討されている。欧米で足並みがそろい始めたため、いよいよ、本格的にグローバルでのリスク削減が進むことになる。

これは、相対取引でA銀行との取引が増えリスクが集中してしまった時に、そのリスクをB銀行へ分散させ集中リスクを減らすためのサービスである。この際、金利リスクをA銀行からB銀行へ移す際には、A銀行との間で既存リスクを相殺する金利スワップをブックし、B銀行との間でもとの金利スワップをブックするのが簡単である。しかし、ここで金利スワップを使ってしまうと、それはCCPで清算しなければならないので、自社とCCPとの取引に置き換わってしまい、A銀行からB銀行へのリスク移転は不可能ということになる。

これを解決するため、グローバルでは金利のスワップションが使われているが、これはPayerとReciverの組み合わせとなるため、取引元本が2倍になったり、リスク削減の効率が落ちるという問題がある。

今回米国での免除が実質的に認められたことから、例えば海外で幅広く行われている当初証拠金削減などにおいて、スワップを使ったリスク移転が可能になる。通常は、リスク削減を行う金融機関は、カウンターパーティー毎にIM増加の許容額や、どのカウンターパーティーとリスク削減取引を行えるかを指定できることになっているが、米国とEUの銀行とは、わざわざスワップションを使わなくても良くなるので、想定元本を増やさずにIMの削減効果を上げることができる。両者がスワップをブックできなければならないので、欧州とオーストラリアのみに免除が認められていた従来はなかなか運用が拡がらなかったが、これに米国が加ったのは大きい。

ここで懸念されるのは、免除のない国のカウンターパーティーの場合は、これまで通りスワップションを使う必要があるため、相対的に削減効率が悪化し、取引想定元本が増えG-SIBスコアやSLRが悪化してしまう。参加者によっては、こうしたカウンターパーティーを敬遠するところが出てこないとも限らない。昨今では担保コストをプライシングに入れるIMVA、MVAといった慣行が拡がっているため、IMがより多くかかってしまうカウンターパーティーが敬遠されるという懸念もある。

とはいえ、現在こうしたリスク削減を行っている参加者の多くはこの免除の恩恵を受け始めることができるので、グローバルな金融システミックリスクの削減には資することになるだろう。

FRTBの延期が広がってきた

米国案が緩和方向に傾いていたため、欧州の銀行が競争上不利にならないよう、2029年末まで最大3年間延期される方針が決定した。本来2027年1月から全面的に適用される予定だった市場リスク資本規制を先送りされることとなった。

英中銀がFRTBの実施を2028年まで延期したのに続く措置で、各国で導入延期や規制緩和への動きが続いており、これらの基準が明確になるまで時間が必要との判断のようだ。先に導入してしまった日本としては歯がゆいところかもしれないが、海外ほどには、現場の日々のトレーディングにおいて資本コストが問題になることが少ないためか、市場へ大きなインパクトは出ていないようだ。ただし、海外との競争にさらされる海外現法や、外資系との競合が大きいところにとっては、潜在的には問題になってくるものと思われる。

欧州の3年間の延期措置は、欧州委員会だけでなく、ECBやEBAとの合意のもとで進められているようで、問題が広く共有されているようだ。今後6カ月以内にEU加盟国政府または欧州議会によって拒否されない限り、この2029年末までの延期スケジュールが確定するが、おそらく反対意見はないだろう。

より懸念されるのは、今回の延期に合わせて、EUが米国案を睨みながらFRTB規制そのものが大幅に修正されるというシナリオである。今回も、単なる期間の先送りだけでなく、FRTBを適用した際に発生する銀行の資本負担増(欧州銀行管理局の試算では市場リスク資本が平均30%、一部で最大80%増加)を相殺するための、独自の調整係数マルチプライヤー導入の話もあり、結局資本に対する影響を無くすような方向の話も出ている。したがって、ルール自体は導入されるものの、実質的な資本コスト増はゼロを目指すというものである。

さすがにここまでくると、既に導入してしまった国からの方針変更が出てきてもおかしくない。カナダなどもアウトプットフロアの引き上げを一旦停止しており、シンガポールやスイスなどからの批判の声も聴かれる。これは何も金融に限ったことではないが、何といっても米国が自国優先に走っていることが大きい。とはいえ、金融危機で起きればまた一気に雰囲気が変わる可能性も大きい。しばらくは様子見の状態が続くのだろう。

米国レポ市場における米系の復活

米国規制緩和の影響が日々の取引に表れ始めてきた。まずは米国レバレッジ比率規制であるSLRの緩和によって、米系のバランスシート制約の余裕が生まれたことにより、米系のレポ取引が増えている。このブログでも過去に何度か紹介したように、米国MMFとの取引においては、フランス、カナダ、日本などの銀行がシェアを伸ばしており、メインであるべき米系金融機関のシェアは低位に止まっていた。

各種バランスシート規制と、規制資本対比のリターンの低さから、米国の取引でありながら米系銀行が取引できないという皮肉な状況が続いていた。しかし、3年ほど前から米系が徐々にシェアを伸ばし、直近では過去最高を更新し続けている。15年前くらいには米系のシェアが3割程度のシェアだったのだが、ものが、2022年頃は5%近くにまで下がっており、BNPパリバなどの欧州系の独壇場となっていた。しかし、それ以降米系のシェアが復活し、再び3割近いレベルにまで戻ってきている。バーゼルIII最終化案が3月に出てから、この傾向に拍車がかかっているようにも見える。つくづく規制の影響は大きいということを再確認させられる。

https://www.financialresearch.gov/short-term-funding-monitor/datasets/mmf-single/?mnemonic=MMF-MMF_RP_wDFI-M

ちなみに、FICCで清算される取引も以下のように着実に増えており、これはスポンサーモデルの影響が大きい。FICCのシェアは約4割程度になっているが、これには米系がスポンサーモデルによって持ち込んだ取引も含まれているので、米系のシェアはさらに高くなる。米国債レポの清算集中義務化が始まれば、このシェアがさらに高くなる。

https://www.financialresearch.gov/short-term-funding-monitor/datasets/mmf-single/?mnemonic=MMF-MMF_RP_wFICC-M

個別の銀行のデータをOFRのデータから確認してみると、米系はほとんどが取引を増加させている。特にJPMの増加が著しい。CCPへの集中に併せて、各種オペレーションプロセスの自動化やシステム化を進めているので、薄利多売ながら地道に収益を上げるという、株式取引や短期の為替取引と同じような方向になっていくのだろう。

特に米国はオーバーナイトの取引、しかも双方向のネッティングが効きやすい取引が多いため、大量の取引を効率的に処理する能力がキーとなる。米系がバランスシート制約により食い込んでいなかった頃は、マニュアル対応でもある程度ビジネスが伸ばせたが、今後は装置産業化が進むと思われるので、システム投資が圧倒的に少ないところは、さらにシェアを失っていくことになるだろう。

G-SIBスコア日次平均化のインパクト

米国バーゼルIII最終化案に含まれていたG-SIBスコアの計算方法の変更が大きな波紋を呼んでいる。6/19の米国案は、2023年案よりも後退したため、歓迎ムードが漂っているかと思いきや、この日次(あるいは月次)平均化への影響により、これまでより、ディーラーのキャパシティが落ちるのではないかと懸念する声が聞かれる。

Risk.netでも報道されていた通り、マーケットインパクトのみならず、計算負荷を懸念する意見もある。3月の提案では、いくつかの指標については日次平均で、その他の指標では月次平均でG-SIBスコアを計算することを義務付けている。従来は四半期に一回計算していたものが、毎日の計算となると、これまでシステム化投資を行ってこなかったところには大問題となる。当局報告であるため、手作業で正確な計算が求められるとコストがかかるほか、間違いも多くなるためシステム化は不可欠となる。日々データを集めるだけでなく、その分析や記録、それを金融機関内の移転価格に反映させるという作業も発生する。この結果が、ストレステストやリスク管理などにおける、その他の規制報告データと整合的かをチェックする必要も出てくる。

また、日次となると、日々バランスシートの状況をモニタリングし、それを迅速にプライシングに反映させる必要が生じ、新たなチャージ、あるいはXVAのようなプライシングが一般的となるかもしれない。

年末にバランスシート調整を行っていたレポ、為替、PBなどのビジネスに年間を通じた影響が生じ、年末に重点的に行っていたコンプレッションなどの元本削減努力が、常に行われるようになる。

単なる米国のルールと思いがちだが、これまでの経験からすると米系がビジネス慣行を変更すると、幅広く市場にインパクトが波及することが多い。特にアジアでは、米系の方針転換がデリバティブ市場の取引慣行に影響を与えたケースは、SA-CCR導入時のFXや、SLR導入後のレポ市場、クライアントクリアリング、PBなどにおけるリミット縮小など、多数見られている。

コメント期限は来月6月18日だが、どの程度の意見が出されるかに注目が集まる。しかし、G-SIBスコアの計算頻度に関しては、年末だけBSを取り繕う慣行を問題視する声が高まっていたため、覆ることはないように思う。導入自体は来年になる可能性が高いが、徐々に市場に影響が出てくることになろう。

市場変動と自動化によってデリバティブ取引数が急増してきた

足元2026年のデータが少しずつ明らかになってきたので、ISDAのSwapInfoのレポートを確認してみる。大方の予想通り、市場変動を受けて2026年第一四半期のデリバティブ取引量は大幅増となっている。金利デリバティブは38%増、CDSもインデックスものは40%の増加となっている。

金利デリバティブについては、Q1の取引件数、取引元本とも爆発的な伸びを見せており、過去最高水準になっている。

出所:SwapsInfo First Quarter of 2026 Review

当然ながらLIBOR改革を経てOISが7割近くを占めるようになってきたが、EURIBORなどOIS以外の金利スワップも一定程度残っているようだ。取引の7割が1年以下となっており、短期ヘッジが多くなっているために、全体の想定元本が増えているとも言えよう。

全般的に取引件数が急増したものの、平均取引サイズが縮小傾向にある。電子取引、アルゴリズム取引の増加に伴い、細かいヘッジが増えているものと推測される。SEFを通じた取引も急激に増え、海外ではSTP化が進んでいるため、オペレーションの手間をかけずに、自動で取引のブッキングが行えるようになったことで、大量の取引件数にも対応可能となった点が大きい


海外当局は、こうした取引増を見込んでシステム化や自動化を促すべく、米国ではSEF、欧州ではOTF、MTFの規制を強め、取引を自動的に処理するためのSTPガイダンスによって、金融機関のシステム投資を促してきた。リミットチェックなどで取引ができない場合は、それをあたかも存在しなかったものとして扱う規制や、リアルタイムレポーティング規制なども、こうしたシステム化を後押しした。本邦では一応ETPはあるものの、海外ほどの効果はなく、STPを進める規制等は存在していないこともあり、引き続きマニュアル対応が可能となっている。このまま金利上昇やボラティリティの上昇、取引量急増、人手不足、決済期間短縮などが進んだ場合、海外に後れを取らないよう、プロセスを見直す必要があるという意見が業界でも多く聞かれるようになってきた。

通貨別でみると、BISの統計などとは異なり、USDが全体の35%と最大の取引量となっている。しかしQ1の取引量はそれほど増えていない。GBPが前年同期比+71%と急増えているのが目立つ。残念ながら円についての内訳はないが、その他通貨が増えているので、円についても一定の増加が見られるものと思われる。EURについては2025Q4からの伸びが、45%増と著しい。

CDSについては、インデックスCDSが強い伸びを見せている。市場変動やクレジット市場の変調を受けてヘッジニーズが高まっている。CVAのヘッジなどもこうした増加に貢献しているものと思われる。増加分はほとんどが米国CDXとiTraxx Europeとなっている。これも本邦ではCDS市場の盛り上がりに欠けており、若干グローバルと乖離した動きになっている。

これらのデータから読み取れることは、短期を中心とした取引数の急増、CCPやSEFなどを通じた高頻度取引の増加、各通貨におけるヘッジニーズの更なる高まり、信用不安を背景にしたインデックスCDSの増加である。取引増に対応できるシステムや人員体制の整備がますます求められることになるだろう。

    担保の増加とともに、非現金化の利用が拡大

    2025年末のISDAマージンサーベイが公開されているが、必要担保額が格段に増えているのがわかる。主要市場参加者が受け入れた証拠金(IM+VM)の合計額は、2025年末時点で前年末比9.3%増加している。このうちIMは21.7%増の$524.7bnと大幅増加した。VMは4%増の$1,038bnなので、VMとIMを合わせた担保は$1.56tnにまで膨らんでいる。これだけデリバティブの取引量が増加すれば担保が増加するのも当然だが、昨今の市場変動がIMの担保の増加に拍車をかけている。SIMMなどは若干のラグをもって改訂されるので、今後もIMが増加していく可能性が高い。

    ISDA Margin Surveryより作成

    最近特に顕著になってきたのが現金以外の担保へのシフトである。2025年は、Bilateral取引における受け取り担保において、非現金担保が現金より多くなる歴史的な転換点となった。

    ISDA Margin Surveryより作成

    VMは以前として67.6%が現金だが、2020年のピーク時の80%から比べると着実に減少している。IMは約半分が国債だが、そのシェアは低下傾向にあり、代わって株式やETF、社債などの「その他の証券」の割合が37.2%まで上昇し、多様化が進んでいる。

    CCPに対するIMは4,235億ドルとなり、前年末比8.7%増となった。CCPに差し入れられたIMのうち、キャッシュは約32%で、残りの約68%は国債やその他の証券で構成されている。その他証券で株式とETFが半分超を占めているのも興味深い。

    マージン規制が完全に導入され、担保実務も落ち着いてきたが、取引増加とボラティリティ上昇によるIM増加によって、IM Thresholdの50億円を超えるところも増え始め、新たにIM拠出を始めるところも出てきた。金利上昇も相まって現金担保のファンディングコストを気にするところも増えてきたので、国債やその他の担保を利用しようという動きも活発化してきている。クロスマージンなどのニーズもますます高くなっている。引き続き担保を効率的に管理しようという動きは続きそうだ。

    モデルベンチマーキングが資本計算に変革をもたらす

    先週公表されたISDAの資本モデルに関するペーパーが興味深い。これまでは、各銀行が独自に作成したモデルをベースにリスク管理が行われてきた。内部モデルを許容している場合は、この独自モデルの結果によって資本賦課をするため、リスクを低く見積もるモデルを使えば資本コストを下げられるというモラルハザードの問題がつきまとう。こうした独自モデルは信用できないということで、標準法での計算を義務付けたり、アウトプットフロアが設けられてきた。

    そもそもモデルが共通であれば、こうしたフロアなどは必要なく、共通の土俵で資本賦課が可能になる。最も簡単な解決法は当初証拠金の計算に使われているISDA SIMMのような標準モデルである。しかし、すべてのリスクとなると共通のモデルを準備するのは難しいため、今回ISDAが提唱しているのは、各社のモデルの出力結果を取りまとめて比較するというモデルのベンチマーキングである。

    仮定のポートフォリオに対して各行でEEPEやEPEなどを計算し、それを比較すれば、業界の標準的な計算結果が明らかになり、そこから極端に乖離しているところも明らかとなる。こうした結果を当局が確認することによって、各行の独自モデルが概ね似たような計算をしていることが明らかになれば、ある程度独自モデルに基づいた結果によって資本賦課をするということが正当化される。

    今回はUSD、EUR、GBP金利スワップ(1、5、10年)、ドル円為替フォワード(1、5、10年)、インフレーションスワップ(USD、EUR、GBPの1、5、10年)の仮想ポートフォリオに基づいた、大手10行の計算結果をもとに分析している。データフォーマットはCRIFで統一され、モデルとしては誰でもアクセス可能なオープンソースのORE(Open Source Risk Engine)が使われている。

    EEPEやEPEは、大手であれば同じような結果になると思ったのだが、思ったより大きなばらつきがみられる。おそらく10行のうち6行はヒストリカルシミュレーションベースのEPE計算を行っており、残りの4行がMarket Impliedの計算を行っているように見える。そして、ヒストリカルデータを使っている銀行の方がEPEが大きく出ている。CVAの計算は通常Market Impliedだと思われるため、6行はCVAとCCR用のPFE計算に異なる計算を行っているということなのだろう。ヒストリカルデータを使っている銀行のうち1行はかなり他社と異なる結果となっているため、データエラーがあったのか、さもなくばモデルの見直しが求められそうだ。あるいは為替取引のブレが大きかったので、PFE計算のベースカレンシーが異なっていたのかもしれない。

    このようなベンチマーキングが行われるようになると、業界標準的なモデルの考え方が統一され、各行の計算に統一性が生まれることになる。そうすれば、銀行が恣意的にモデルを操作してリスクを低めに見積もるのではないかという当局の懸念もある程度払しょくされることになる。これにより、内部モデル方式+標準法+アウトプットフロアという既存の枠組みが、ベンチマーク標準的モデルへと一本化することが可能になる。ベンチマーキングは行わないものの、米国が目指すERBAもある意味似たような方向性を模索していると言っても良いかもしれない。

    いずれにしても、CRIF、CDMなどによってデータの標準化を推し進め、モデルの標準化が進むのは、金融業界にとっても望ましいことだろう。ただし、グローバルスタンダードへの対応が不可欠になっていくのだろう。

    クリアリングの最終形

    為替取引を行う際に、ヘッジファンドなどが、大手銀行の与信を利用して、複数の金融機関と有利な条件で取引できるFXPBがある。銀行としては、重要顧客のビジネスを囲い込み、担保資産も全て集中させるというメリットがある一方、想定外の市場変動が起きた時に巨額の損失を発生する可能性がある。なおかつ為替という取引の性質上、リスクに見合った収益性があるかという問題もある。

    日本でも個人にFXサービスを提供するオンラインブローカーがPBに取引を集中させることがあるが、これもリスクリワードの観点から誰でも提供できるサービスではない。これを解決するために、一部外資系では、CSAの条件を極限まで厳格化し、ほぼリアルタイムでマージンコールを行い、担保不足に陥ったら強制終了させるというモデルが存在していた。確かに担保をリアルタイムで徴求し、担保不足になったら強制アンワインドすれば、理論上は、カウンターパーティーリスクは極限まで抑えられる。

    しかし、ブッキングや担保送金の事務ミスなどのオペレーショナルリスクもあり、このリスク管理を担当する身としては、全くワークしないと思った記憶がある。夜中に起きた為替変動により、強制終了を告げるメールが来て、一瞬で判断を迫られたことがあったが、単なる送金ミスなのか、夜中の2時にわかるはずもない。確かに法律上は強制終了をさせる権利はあるものの、それを行使することによって起きるインパクトは計り知れない。

    しかし、現在のテクノロジーをもってすれば、これはすべて解消できる可能性がある。特に米国では、昨年12月にクリアリングブローカーを介さない直接清算モデルに対するパブコメ募集が行われた。同時にビットコインやステーブルコインを担保としてい受け入れることをCFTCが実質的に承認し、その後も着々と検討を進めている。

    当局サイドが前向きになっているのであれば、冒頭に紹介したリアルタイムマージンシステムが構築可能である。現在では一定の条件に基づいて行動を起こすスマートコントラクトが実現しており、ポジションの自動清算も容易になっている。そして、デジタル資産の決済が24/7で行える土壌が整備されつつある現在では、為替変動があれば24時間、休日でも担保を決済させることが可能になっている。

    そもそもクリアリングブローカーは、顧客のリスクを保証し、清算基金を拠出するという役割があったのだが、顧客の担保が自動拠出が可能になり、担保不足時に強制終了ができるのであればブローカーは不必要となる。そもそも当初証拠金(IM)も、2週間などのクローズアウト期間に損失が拡大するリスクをカバーするものなので、担保の即時拠出が可能になればMPORは0となり、IMは必要なくなる。そして、カウンターパーティーリスクに起因する清算基金も理論的には不要になる。

    また、発生しうる最大限のリスクを常にIMとして取っておくというコンセプトは以前から存在していたが、とりあえずこの担保をフルに取っておいて、後はスマートコントラクトによる自動マージンや自動清算を行えば、現代版FXPBのビジネスが完成する。

    これを実現させるのが、スマートコントラクトによるリアルタイムマージン、リアルタイム自動清算、24/7の担保決済である。極端な話、24/7決済が可能であればデジタル資産を担保に使う必要もない。

    既にKalshiEX、Polymarket US、Nadex、Gemini Titan、ForecastExなどはクリアリングブローカーを介さない自己清算型のモデルの提供を始めている。この点米国はやはり進んでいて、法整備とともに新たな新興企業が金融においても続々参入している。

    いずれもトークン化担保と結びついた文脈で語られることが多いが、実はトークン化しなくても即時決済が可能であれば、自己清算モデルは実現可能である。どうしてもデジタルとかトークン化というと注目を集めやすいのだが、実はトークン化資産の担保化を進める以前に、FXPBや自己清算型のクリアリングモデルの構築は可能なのではないだろうかと思っている。

    もちろん、こうした自己清算型モデルは、すべての資産に適用するとうよりは、株式や国債などの現物資産、為替などのレバレッジの低い資産により適しており、高レバレッジの商品に関しては既存のブローカーを介する方式の方が望ましいかもしれない。

    どうも最近は、AIとかデジタル資産、ステーブルコインなどの新しい用語を使えば資金が付きやすい傾向があり、ビジネスの実態から離れてしまっているような気がしてならない。規制当局、中央銀行、大手銀行もこうした流れに取り残されないよう、様々なInitiativeを立ち上げているが、もう少し既存のビジネスに結び付けた議論が出てくることが、ひいては新しい分野の発展にもつながるように思う。

    プライベートクレジットの危機が銀行規制緩和を後押し

    プライベートクレジット市場の変調がリーマンショック直前に似ているという指摘が、頻繁に聞かれるようになってきた。確かに、ファンドの解約制限などの事態は、かつての「パリバ・ショック」を想起させる。現在の市場環境は間違いなく火種の一つではあるが、証券化市場に比べればプライベートクレジットの市場規模は5分の1程度であり、当時ほどの過度なレバレッジもかかっていない。そのため、金融システム全体を揺るがすような危機にまで発展する可能性は低いようにも思える。何よりも、今回は銀行部門の健全性が高く、直接的な痛みが少ないという点が決定的だ。

    そもそも、プライベートクレジット市場への資金集中は、皮肉にも「規制強化の産物」と言える。リーマンショック以降、銀行に対する規制は継続的に強化され、マーケットメイク(市場流動性供給)機能への制約から流動性の低下を招いた。その結果、融資においても銀行の代替としてノンバンクやシャドーバンキングの占める割合が上昇した。当局もシャドーバンキングへの監視を強めようとしているが、銀行ほどコントロールは効きにくい。そうであれば、銀行規制を適正化し、本来の融資機能を呼び戻すのが最も現実的な解決策となる。

    その意味で、直近の米国バーゼルIII最終化案の修正は、この考え方に沿ったものと解釈できる。今回のERBA(拡張リスクベース方式)による企業融資のリスクウェイト(RW)引き下げにより、大手銀行が追加で提供可能となる融資枠は4,410億ドルに達すると試算されている。

    具体的には、投資適格(IG)企業向け融資のRWが従来の100%から65%へ引き下げられる。これにより企業融資のRWA(リスクアセット)が3,600億ドル減少し、理論上4,410億ドルの融資余力が生まれる計算だ。このRW変更の対象は、当初案では上場企業に限定されていたが、最終的には「非上場でもIG相当であれば適用可能」と緩和された。ERBA適用行のエクスポージャーの約53%がIG向けとされる中、この引き下げが与えるインパクトは極めて大きい。

    また、地方銀行(中堅銀行)に対しても、企業融資のRWが100%から95%へ引き下げられ、約2,260億ドルの追加融資余地が創出される。

    さらに、このRW引き下げが非上場企業にも適用されるようになったことで、ファンド向け融資も恩恵を受ける。IGファンドに対して65%のRWが適用可能になれば、従来の「非上場プレミアム(高い資本コスト)」がなくなり、銀行による貸し出しが容易になる。また、ファンドへの出資についても、資産特定が困難な場合に1250%へと跳ね上がるとされていたRWが現行の600%に据え置かれるなど、随所に緩和が見られる。

    こうした一連の修正により、銀行はプライベートクレジット市場においてノンバンクに対し強力な競争力を取り戻すことになるだろう。いわば、米国のバーゼルIII緩和は、プライベートクレジット市場の不調を逆手に取る形で「大義名分」を得た格好だ。事実、米国では「規制強化が市民の生活(住宅ローンや中小企業融資)を脅かす」といった趣旨のテレビCMが流れるほどの激しいロビー活動も展開された。

    以前議論した「SFT(証券金融取引)とデリバティブ取引のクロスプロダクト・ネッティング」のような市場機能維持に資する緩和と併せれば、米銀の収益向上余力は格段に高まったと言える。今後は自社株買いや配当増額を背景に、米銀の収益性向上と株価上昇が続く可能性は高い。

    今後の焦点は、米国のこうした動きに他国がどう呼応するかだ。米国案がこのまま実現すれば、相対的に厳格な規制を残す欧州系銀行が不利になる場面も出てくるだろう。一方、日本は国際規制に対して忠実であり、米国のようなドラスティックなルール変更は期待しにくい。とはいえ、詳細な明文化はせずとも、日々の監督によって「匙加減」を調整する独自の柔軟性があるようにも思える。それはそれで、極めて現実的かつ賢明な対応なのかもしれない。

    オーストラリアの年金基金が急速に拡大

    スーパーファンドと呼ばれるオーストラリアの退職年金はの規模が急速に拡大し、今や世界第4位の年金システムとなっている。その取引量がグローバルでも注目され始めたため、今般ISDAがレポートを出している。

    そもそもオーストラリアでは、政府が雇用主に対して法律で義務付ける強制拠出率を段階的に上げてきたため、給与の約12%が自動的に基金へ流入する。このため、年金基金の総資産はオーストラリアのGDPの1.6倍になっている。そして、2021年の政治改革「Your Future, Your Super」によってオーストラリア当局のAPRA(英語でアプラと呼びます)が運用成績を厳しく審査し、パフォーマンスが悪いと新規加入者を受け入れられなくするという厳しい制約を課した。

    これにより、年金基金の集約が進む(10年で249→95)とともに、より高いパフォーマンスを求めて、投資先の海外資産シフトが起きた。こうしてデリバティブ取引が約9000億豪ドルまで増え、特に海外資産のヘッジのための為替取引が約5000億ドルまで拡大した。こうなると急激な為替変動によるマージンコールなどにより、基金が十分な現金が確保できなくなるリスクに注目が集まり、金融システム全体に対する監視が強まっている。2020年には、AUDが14%急落して180憶豪ドルのマージンコールが発生しており、2022年のGilt Shockとともにリスクの火種の一つとして注目された。実際米国でトランプ大統領が週末に何か発言すれば、最初に為替市場でインパクトを受けるのがオーストラリアとなる。

    ここまでのサイズになってくると、いくら優良顧客とはいえ、グローバルバンクにもリミットの問題が発生し、資本コスト、誤方向リスク、日々のマージンコールなどのリスク管理が重要になってくる。特にオーストラリアでは、レポ取引やマージンレンディングに規制上の制約がかかっており、流動性リスクには注意を払う必要がある。こうした資金ニーズからレポのニーズが高まっていることもあり、Risk.netでも二つのCCPが参入を計画していると報じられたばかりだ。

    当然APRAは、こうしたファンドに対してもグローバルスタンダードなリスク管理の強化を求めている。2023年のSPS530では、マージンコールに対応するための現金確保に関する計画について、取締役会の承認を義務付けた。そして、ストレステストの定期的なシミュレーションを義務付けた。そして、2025年のCPS230では、デリバティブ実務を外部に丸投げすることが実質禁じられ、市場混乱時にもデリバティブ決済や評価が滞りなく行えるような体制維持が義務付けられた。

    以前から、ここが金融危機の火種の一つになるのではないかと言われていたのだが、やはり当局も市場関係者も十分理解していたようで矢継ぎ早に改善策を求めている。しかし、為替取引は今後10年でさらに2倍になるという見通しもあるため、市場への影響も無視できない。何か問題が起きればその危機がグローバルに広がる可能性も否定できない。引き続き目が離せないセクターになりそうだ。

    米国Basel III最終化でCVAが資本制約に

    2026年3月19日のBasel III endgameは、前回案に比べると規制緩和ともいえるものだが、その中でCVA資本賦課の役割が大きくなってきた。

    これまで、CVA資本賦課は先進的手法(Advanced Approaches)のみに含まれており、標準的手法では対象外となっていた。多くの銀行にとって、先進的手法で資本賦課が減っても、結局はコリンズフロアがあるため、結局は標準的手法の資本賦課がフロアになってしまっていた。しかし、今回の最終案では、この二つのアプローチが拡大リスクベースアプローチ(ERBA: Expanded Risk-Based Approach)に一本化されたため、コリンズフロアも無関係となった。

    つまり、これまで標準的手法の資本賦課だけを見ていればよかった銀行は、先進的手法にのみ含まれるCVA資本賦課を気にする必要がなかった。しかし、ERBAではCVA資本が含まれるため、大手行は皆CVA資本を気にせざるを得なくなった。これによってCVA資本賦課は全体で約96%増加とされているので、約2倍になるということだ。

    一方で、CCPのクライアントクリアリングによって清算した取引については、クライアントレグ、つまりブローカーが顧客のリスクを取る部分についてCVA資本賦課の対象外となった。当初案ではCVA資本賦課があったので、この変更はクライアントクリアリングを行うブローカーにとっては朗報だ。資本コストがあまりにも高く収益性が低いため、クライアントクリアリングビジネスから撤退するところもあったが、米銀にとってこの状況がかなり改善される。またレポなどのSFTがCVA資本要件の対象外と明確化された点も大きい。

    CVA資本賦課の詳細については、BA-CVAとSA-CVAの枠組み自体は維持されるが、最新の国際基準に合わせて若干精緻化されるようだ。SA-CVAでは、金利や為替ヘッジを行えば資本賦課を下げられるということもあり、SA-CVAを採用するインセンティブが大きくなる。BA-CVAではCDSによるヘッジ効果を織り込むことができるが、このヘッジ効果は75%を上限とするとされている。

    このように、CVAがERBAのメイン項目へと格上げされたため、BA-CVAの保守的な75%フロアに甘んじ、マーケットヘッジ効果を無視して高い資本を積むか、コストをかけてSA-CVAを導入し、ヘッジ効果を最大限に活用して資本を節約するかという選択になるが、これまでよりはSA-CVAを導入するインセンティブが高まったように思える。

    JGBレポ市場に起きている構造変化

    日銀のレポート「本邦レポ市場のトレンドと近年の特徴点」が非常に示唆に富む内容になっているので、ここで紹介したい。JGBレポ市場はYCCの下で低迷してきたが、日銀の政策変更を受けて突然取引量が急増した。受け渡し銘柄を特定しないGCも増えているのだが、それ以上に銘柄を特定したSCの増加が著しい。

    特にこれを増加させているのが「非居住者」に分類される市場参加者である。SCの増加は日銀の政策変更を後押しするように金利上昇に賭ける10年近辺の銘柄をショートする戦略を海外ヘッジファンドが取ったことを示している。特に2022年の年末頃にこうした海外フローが急増し、市場からモノがなくなってしまったのは、市場関係者であれば記憶されているところだろう。アウトライトで長期国債を強烈にショートし、そのための玉をレポ市場で大量調達していたのである。これはある意味海外からのYCCアタックだったと言えるのかもしれない。

    YCC撤廃後は5-10年ゾーンの特定銘柄のショートニーズは減ったのだが、その後は1-5年ゾーンでの両建ての取引が活発になり、先物vs現物の価格の歪みも解消された。金利のボラティリティは高まったものの、正常化と言ってよいだろう。

    ただし、両方向のレラティブバリュー取引となると、やはり海外ファンドの取引量の方が増えやすく、今後も非居住者フローにフォーカスが当たってくるものと思われる。レポートによると、所在地別の取引残高では英国が突出しており、これが海外ヘッジファンドの取引量の代替指標となっているとしている。米国はデリバティブと異なってキャッシュ取引に関してオフショアブッキングに制約があるので、これはおそらく正しいと思う。

    直近でも、日銀の量的緩和策終了に伴い、昨年6月以来四半期ごとに2000億円の国債購入の減額が行われており、市場に放出されるJGBが増えてきている。長期国債先物の取引量のうち海外投資家の占める割合は7割を超えており、海外中心の動きが強まっている。

    とかく投機的などと言われて批判されがちなヘッジファンドであるが、海外では流動性向上に大きな役割を担っている。特に近年は市場アタックをする投機筋のみならず、市場の歪みを捉える参加者が増えており、こうしたフローは、ある意味流動性向上や市場正常化に役に立っていると言えなくもない。米国債のように保有主体の多様化は、国債の安定消化にも望ましいはずである。デリバティブの世界では、日本も海外並みに取引の透明化や標準化が進んでいるが、JGBについても市場の効率化を図ることが望まれる。

    JGBの決済システムの未来を考える

    日本国債のレポ取引のオペレーションが複雑という不満が良く聞かれる。取引の8割程度はJSCCで清算されており、清算取引の効率化はある程度進んだが、残りの2割については、電話やメールなどで担保銘柄の照合、サブカストディアンである信託銀行への決済指示も自動で流れないことが多い。

    近年では海外ヘッジファンドの取引量が急増しているが、海外のようなグローバルカストディアンを経由したトライパーティーレポが実現していない。2割といっても約60兆円、1日あたりの取引高でも20-30兆円になるはずだから、無視できないサイズである。決済期間の短縮化やリアルタイム決済の流れが加速する中、何らかの改善が求められる。

    そもそもJGBの決済は日銀ネットで行わなければならないが、日銀ネットは世界的に見ても極めて高度で安定したシステムだったと思う。早くからRTGSを完備し、T+1化も他国に先駆けて実現した。だが、あまりにこれが優秀だったため、海外のようにこれを補完する民間インフラが育たなかったということなのではないだろうか。また日本の事務手続きが優秀だったため、何とか手作業でミスなく作業をこなすことができてしまっていたのかもしれない。

    米国などではFedwireは日銀ネットほど高度ではないが、BNYメロンなどのカストディアンが高度な計算、決済を行い、トライパーティーレポが発達したため、全体としては優れた仕組みを作り上げている。そして人手を介するとミスが多くなることから、極力自動化、システム化が進んでいる。これからデジタル資産やスマートコントラクトの利用が増えてくると、日本の優秀なマニュアル事務プロセスでは追い付かず、やはりシステム的に対応するしかなくなる。

    海外投資家はこうしたプロセスに慣れているため、JGBレポに参入するとその非効率さに驚くことが多い。海外のようにグローバルカストディアンがすべての処理をするのが不可能で、日本の信託銀行をサブカストディアンとして使うため、一つレイヤーが増えてしまう。このため、SWIFTのやり取りが増えたり、時差による確認作業が発生したりするので遅れが発生する。

    かと言ってグローバルカストディアンが日本の免税手続きなどを行うのは非効率であり、日銀ネットへの直接参加や信託ライセンスという高いハードルもある。JGB決済を大規模に行うオペレーション体制がなく、複雑な税務処理や国内規制対応が事実上の参入障壁となっており、結局はサブカストディアンに頼ることになろう。

    実際グローバルカストディアンやユーロクリアなどのICSD(国際証券決済機関)ではJGBブリッジという仕組みにより、外で帳簿を動かす仕組みも持っている。しかしユーロクリアなどに大量のJGBの在庫を置く必要があり、日本国内にJGBを戻す際には結局フェイルが起きたりする。また、何といってもJGBの保有主体を厳格に把握しなければならないという税務上の制約が大きい。ここは海外金融機関にとってはかなり難しい問題で、サブカストディアンの機嫌を損ねたくないという感情も相まって、海外からの参入にはどうしても制約がかかってしまう。

    逆に国内サブカストディアンがグローバルカストディアン並みに自動化を推進していく方が簡単なように思えるが、米国などと比べると信託銀行の数が多く、24時間対応、海外接続などの課題が残る。

    これらを解決しようとするとかなりの調整が必要になるのは明らかである。こう考えると、JGBのトークン化を通じて24時間の即時決済を可能にし、サブカストディアンを介さないデジタルウォレットを使う方法しかないのかもしれない。現金の方は中銀のデジタル通貨や、ステーブルコインなどを使えば良いだろうし、海外のDiSHのような仕組みを使うこともできる。トークン化を行う際の法的裏付け、税務対応が解決すれば、これが最も近道なのかもしれない。

    米国G-SIBルール改正案

    Basel III endgameに関連してG-SIBに対する資本上乗せ要件の見直しも行われている。先週木曜に公開された一連の文書から、G-SIBに関する概要をまとめてみる。

    米国のG-SIBスコアはBaselの原案と異なり、経済成長に合わせた調整がなかった。つまり、米国経済が成長して銀行のサイズが大きくなれば単純に全員のG-SIBスコアが上がってしまう。これは業界から長らく批判されてきたが、今般経済成長に併せて調整が行われる仕組みに変更される。

    また、米国のG-SIB計算であるMethod2には、STWF(短期卸売資金:Short-term wholesale funding)が含まれており、GSやMSのような投資銀行系に多くの資本賦課が行われてきた。本来、STWFはMethod 2スコアの20%を占めるよう設計されていたが、実際には約30%に達していたので、今回はこれを20%に戻すような変更が行われている。

    現行ルールでは「STWFの加重平均額 ÷ 平均RWA」という比率でスコアを算出しているため、RWAが減少するとSTWFのスコアが逆に上昇してしまっていたが、今回は、RWAの分母をなくすことで、この問題を解決しようというものである。これはトレーディング業務の比率の高いGSやMSに朗報だろう。

    また、かねてから言われていたように、G-SIBスコアの計算が、年末時点の数値ではなく、日次または月次の平均値を使用する方向性へと変更になる。これによって、期末に流動性が逼迫して市場変動が大きくなることは少なくなるだろうが、一方で、常日頃からバランスシートを膨らませないように努力したり、コンプレッションなどを行っておく必要がある。

    そして、従来50bpごとに資本賦課のレベルが上がるスコアの範囲を10bpごとに細分化した。急激な資本賦課の上昇を抑えるために期末になると取引を制限していたような銀行に対するプレッシャーが和らぐため、市場の流動性逼迫が起きにくくなるというメリットがある。

    こうしてみると、色々と規制緩和が行われたように見えるため、政治圧力によって銀行規制が緩んでいるというよりは、どれも納得のいく変更であるため、従来から指摘されてきた問題に対処したという変更に見える。

    米国Basel III最終化案

    米国バーゼルIII最終化案(Endgame)の詳細が3/19に明らかになった。概ね想定通りだが、若干認識していなかった変更が含まれているように読める。

    まずは、資本計算の新しい方式が提案されている。これまでは、標準的手法と内部モデルを使った先進的手法の両方を計算し、内部モデルの計算が標準的手法より資本削減につながらないようなフロアが求められていた。今後は、両方式の計算の義務付けを廃止し、拡大リスクベースアプローチ(Expanded Risk-Based Approach)なるものが使われるようになる。

    大手銀行は、二つの資本計算を行い、それぞれの資本賦課の低減を図ってきた。これが一つの計算方法に統一される意義は大きい。

    この手法のもとでは、住宅ローンにつき、従来の画一的なウェイトではなく、LTVに基づいてリスクウェイトを細分化することになるようだ。また、全体的に事業法人向けローンのリスクウェイトを100%から95%に引き下げ、そのうち投資適格等級の企業向けローンのリスクウェイトはさらに65%に引き下げられる。全般的に規制緩和方向に見えるが、計算方法の精緻化も併せて行っており、望ましい方向性のようにみえる。

    次にオペレーショナル・リスクの標準化であるが、自社モデルの利用が廃止され、銀行の業務量に基づいた標準的な算出方法を用いることになる。ここはもう少し読み込んでみたい。ただし、投資運用やカストディ業務などリスクが低いとされる業務についての資本賦課も低くなりそうだ。

    信用リスクとオペレーショナルリスクについては、内部モデルの使用が禁止されることになるが、市場リスクについては、当局承認を条件に使用が認められる。

    市場リスクについては、従来のVaRに代わり、テールリスクをより正確に捉える期待ショートフォールが導入されており、これは最近のリスク管理の変化の方向性と一致している。

    CVAリスクについては、BA-CVAとSA-CVAをベースとしつつも、リスク感応度をより精緻に考慮し、国際基準に近づけた形に変更とある。BA-CVAを使っていたとしても、直接カウンターパーティーのCDSでヘッジしなくても、同一業種、地域だったりすると、限定的ながらヘッジ効果が認められるようになる。インデックスものに関しては、構成銘柄が同じセクター(業種よりも広い概念)、信用区分(投資適格、非適格の区分)にあれば、シングルネームヘッジと同じように扱い、リスクウェイトに0.7を乗じる。構成銘柄が複数のセクターにまたがる場合は、各銘柄のリスクウェイトを特定し、元本で加重平均し、0.7を乗じる。

    SA-CVAでは、デルタリスク、ベガリスクを補足するので、金利、為替、オプションによる市場リスクヘッジが資本賦課を軽減させることができる。CVAヘッジを行っている銀行であれば、この効果が反映される意味は大きいので、SA-CVA導入のインセンティブは大きい。また、クライアントクリアリングの顧客レグを含めた清算取引がCVA規制の除外と書かれている。これは若干驚きだ。これでクライアントクリアリングビジネスは一気にやりやすくなるのではないか。

    このほかG-SIBについての変更もあるが、別記事でまとめたい。本最終案のコメント期限は6/18となっている。そこから最終規則の公表までは数か月かかるだろうから、正式な施行日は年後半か来年になりそうだ。

    中東情勢がデリバティブ市場に与える影響

    戦争などが起きると、通常は安全資産が買われるのだが、今回の中東情勢はインフレ懸念を加速させ、各国金利は上昇基調となっている。米国も9月までの利下げはないという意見が支配的となり、これまで2回の可能性があると言われていた利下げの回数予測も1回とするところが多くなっている。

    国債利回りの更なる上昇に備えたヘッジ取引が活発化し、DTCCのデータによると、世界の金利デリバティブ取引高は戦争の翌週1週間で20兆ドルを超え昨年の平均の約2倍となり、過去最高水準の活況を呈している。米国では、年内の利下げ観測後退から特に短中期ゾーンの金利スワップの取引増が著しい。

    欧州でもウクライナ戦争時のインフレショックの連想から、金利上昇圧力が高まっているためか、米ドル金利スワップもよりも欧州通貨の金利スワップの方が取引が増えている印象がある。英国では年内利下げ期待が大きく後退し、フランスやドイツでも短期債を中心に国債が売られ、利下げどころか利上げの話まで出始め、金利が上昇している。

    一方為替市場では、安全資産のドル買いがみられ、円やユーロに対してドルが強含んでいる。EUは石油の64%を輸入に頼っており、日本はほぼ100%を輸入に頼っている。一方、引き続き安全資産とされるスイスフランが強含み、対ユーロで約11年ぶりの高値を付け、介入の話すら出てきた。一時期はスイスフランとともに円が買われることもあったが、昨今では円は有事で売られることが多くなってきた。

    この高いボラティリティが継続すると、ストレス損失、VaRの上昇を招くため、CCPの当初証拠金やSIMMのパラメーター変更を通じた相対取引の当初証拠金の増加が起きる可能性が高い。これまでのところ、市場変動が大規模な倒産につながるようなことにはなっていないが、同時期に起きているプライベートクレジットの変調は気になるところである。ここで何か大きなショックが起きると、各種資本規制強化の動きが出てきても不思議ではない。少なくとも、銀行内部では、ストレスシナリオの見直しの議論などが出てくるだろうし、いったいどこまでのストレスを想定してリミットや資本を積めばよいのかという問題がクローズアップされることになるだろう。