一部メールによるマージンコール処理を行っている小規模参加者を除けば、STPによる担保管理の自動化はかなりのレベルまで進んできた。おそらく最後まで残るのがDispute Resolutionと例外処理だろう。
自社と相手方の評価額が異なると、その原因を究明しない限り担保のやりとりが始められない。評価モデルの違い、マーケットデータの時点やカーブ構築方法の違い、センシティビティの計算の違いなど、様々な理由があるのだが、これを瞬時に解決するのは不可能に近い。合意できる部分まではやり取りを行い、その後も解決の努力を続けるべきというのが正しいやり方なのだが、これが正確に行われないことが多い。海外の場合はDisputeを放置すると規制ガイダンス違反になり、これが継続すると当局への報告義務が発生したり、資本コストの上昇を招く。
また、こうしたVMのDisputeとは別に当初証拠金であるIMのDisputeも存在する。こちらはISDAのSIMMによってモデルの統一化は図られ、データ形式もCRIFに統一されたため、かなりの改善が見られたが、センシティビティの違いや一部のリスクマッピングで不一致が起きることがある。
しかし、CCPやSwapAgentなどでは、既に第三者であるCCPなどがVMとIMの計算を行い、各参加者には異議を唱える権利がないため、Disputeが完全排除されている。つまり、同じようなことがそれ以外の取引でも可能であれば、Disputeをなくすことは理論的には可能である。
各社のモデルを共通化することは不可能だが、プライシング時に時価が一致しなくても、マージンコールのためであれば、中立的な第三者が計算した結果を使うことに反対する人は少ないのではないだろうか。そうすると、Disputeがなくなり、マージンコール額が一意に決まるため、その第三者がそれを計算し、自動的に資金を移動する仕組みさえあれば、マージンコール実務は極限まで自動化され、担保管理オペレーション業務が大幅に簡素化される。
あるいは、ISDAなどがクラウド上で共通の金利カーブ、標準バリュエーションエンジンなどを提供すれば、Disputeは消滅する。既にオープンソースのリスクエンジンなどが存在しているので、あらゆる商品についてこれを用意するのはそれほど難しくないはずである。新商品が出てきた場合も、オープンソースのエンジンにそれを追加し、当事者同士が合意すれば、それを使ってDisputeを無くすことも可能だろう。
あとは例外処理であるが、一つは相手方の信用力不安に直面した時のリスク判断がある。リーマンショック時などには、相手方から着金があるまでは担保の送金を止めたりする慣行が横行し、金融の安定性に大きな懸念が生じた。これも中立的な第三者が間に入り、取引のクーポンなどの決済金とマージンコールを集約し、双方からの着金を確認した後に資金をリリースしたり、ある程度のネッティングを行えば、この問題も解決する。ヘルシュタットリスクもある程度削減できる。当然、取引相手に対して深刻な懸念があり、送金を完全に止めるケースまではカバーできないが、これはかなりまれなケースだろう。
単純なオペレーションのトラブルによる決済遅延等についても何らかの対策が必要だが、CCPなどでは既にこうした遅延に対するプロセスが決められている。
こう考えると、平時のマージンコールプロセスは5年くらいしたら完全自動化できるのではないかと思えてくる。取引相手の信用不安に際して必要になるクレジット判断は最後まで人の判断が入るが、それ以外は人手を介さずプロセスを構築することは十分可能である。
ただし、テクノロジーが進んだからといって、24/7で即時マージン決済をする必要性はなく、通常の日次コールに、極端な動きがあった場合のAd hocコールで事足りると思う。マージンを拠出した5分後に市場が動いてそれをまた受領するといった即時マージンを行うよりは、ある程度の時間軸でネッティングを行う方が事務的に効率的だろう。








