米国案が緩和方向に傾いていたため、欧州の銀行が競争上不利にならないよう、2029年末まで最大3年間延期される方針が決定した。本来2027年1月から全面的に適用される予定だった市場リスク資本規制を先送りされることとなった。
英中銀がFRTBの実施を2028年まで延期したのに続く措置で、各国で導入延期や規制緩和への動きが続いており、これらの基準が明確になるまで時間が必要との判断のようだ。先に導入してしまった日本としては歯がゆいところかもしれないが、海外ほどには、現場の日々のトレーディングにおいて資本コストが問題になることが少ないためか、市場へ大きなインパクトは出ていないようだ。ただし、海外との競争にさらされる海外現法や、外資系との競合が大きいところにとっては、潜在的には問題になってくるものと思われる。
欧州の3年間の延期措置は、欧州委員会だけでなく、ECBやEBAとの合意のもとで進められているようで、問題が広く共有されているようだ。今後6カ月以内にEU加盟国政府または欧州議会によって拒否されない限り、この2029年末までの延期スケジュールが確定するが、おそらく反対意見はないだろう。
より懸念されるのは、今回の延期に合わせて、EUが米国案を睨みながらFRTB規制そのものが大幅に修正されるというシナリオである。今回も、単なる期間の先送りだけでなく、FRTBを適用した際に発生する銀行の資本負担増(欧州銀行管理局の試算では市場リスク資本が平均30%、一部で最大80%増加)を相殺するための、独自の調整係数マルチプライヤー導入の話もあり、結局資本に対する影響を無くすような方向の話も出ている。したがって、ルール自体は導入されるものの、実質的な資本コスト増はゼロを目指すというものである。
さすがにここまでくると、既に導入してしまった国からの方針変更が出てきてもおかしくない。カナダなどもアウトプットフロアの引き上げを一旦停止しており、シンガポールやスイスなどからの批判の声も聴かれる。これは何も金融に限ったことではないが、何といっても米国が自国優先に走っていることが大きい。とはいえ、金融危機で起きればまた一気に雰囲気が変わる可能性も大きい。しばらくは様子見の状態が続くのだろう。