一方FRBはPowell議長、Barr副議長ともに辞任することはないと言っているが、これは中銀の独立性を考えたら当然のことではある。それでもBarr副議長は少し前にBasel III Endgameの緩和についてアナウンスをしたばかりであり、今回の委員会でもその立場を貫いている。Yutubeで、別の委員からこの緩和は根拠がない、銀行に屈したのではないかと指摘された際に、緩和を正当化していた姿を見ると、少しリーズナブルにふるまおうとしているようにさえ見える。
これは全世界共通のバーゼルルールだが、米国にはこれとは別のMethod2があり、Substitutabilityの代わりにShort Term Wholesale Fundingが使われている。これは銀行預金、担保付借入など1年未満の短期借り入れが中心になるので、預金を持たず短期資金に頼りがちな証券会社のスコアが大きくなる。もしかしたら野村證券がG-SIBから抜けたのは、バーゼルルールでこのShort Term Wholesale Fundingが入っていないからなのかもしれない。
5年ほど前も、FFレートとSOFRのスプレッドが300bp近くに開いたことがあったが、同じような雰囲気も感じられる。今年もSOFRは10月まで比較的落ち着いた動きを見せていたが、そこから急速に担保付のSOFRが上がり始めFF vs SOFRベーシスが開き始めた。短期資金を確保しようというニーズが急速に増えると、レポや株券貸借取引のレートが跳ね上がる。
大統領選前の10月28日にJPMのダイモンCEOが痛烈な規制批判をしていた。it’s time to fight back(反撃の時が来たと)と、あたかもトランプ大統領当選を予期していたかのような発言だった。報復を恐れて金融機関が声を上げられなくなっている、自分も脅されたと言ったニュアンスのことまで言っていた。
Basel III Endgameなどは全て白紙撤回になるかもしれないという意見まで聞かれるようになっている。逆に欧州では米国の規制緩和によって、欧州系の銀行が不利になるのではないかと恐れられている。あまり資本を気にしないから問題は少ないのかもしれないが、すでにFRTBを導入してしまった日本でも注意が必要だ。
特に、今やCCPは新たなToo Big To Failと言われるようになってきているので、それぞれの特色を出しながら、多様なクリアリングブローカーが参入してくるのは望ましいことと言えよう。ただし、G-SIBsやレバレッジ比率規制など、大手銀行が不利にならないよう、規制を調整する必要は出てくるものと思われる。