オーストラリアの年金基金が急速に拡大

スーパーファンドと呼ばれるオーストラリアの退職年金はの規模が急速に拡大し、今や世界第4位の年金システムとなっている。その取引量がグローバルでも注目され始めたため、今般ISDAがレポートを出している。

そもそもオーストラリアでは、政府が雇用主に対して法律で義務付ける強制拠出率を段階的に上げてきたため、給与の約12%が自動的に基金へ流入する。このため、年金基金の総資産はオーストラリアのGDPの1.6倍になっている。そして、2021年の政治改革「Your Future, Your Super」によってオーストラリア当局のAPRA(英語でアプラと呼びます)が運用成績を厳しく審査し、パフォーマンスが悪いと新規加入者を受け入れられなくするという厳しい制約を課した。

これにより、年金基金の集約が進む(10年で249→95)とともに、より高いパフォーマンスを求めて、投資先の海外資産シフトが起きた。こうしてデリバティブ取引が約9000億豪ドルまで増え、特に海外資産のヘッジのための為替取引が約5000億ドルまで拡大した。こうなると急激な為替変動によるマージンコールなどにより、基金が十分な現金が確保できなくなるリスクに注目が集まり、金融システム全体に対する監視が強まっている。2020年には、AUDが14%急落して180憶豪ドルのマージンコールが発生しており、2022年のGilt Shockとともにリスクの火種の一つとして注目された。実際米国でトランプ大統領が週末に何か発言すれば、最初に為替市場でインパクトを受けるのがオーストラリアとなる。

ここまでのサイズになってくると、いくら優良顧客とはいえ、グローバルバンクにもリミットの問題が発生し、資本コスト、誤方向リスク、日々のマージンコールなどのリスク管理が重要になってくる。特にオーストラリアでは、レポ取引やマージンレンディングに規制上の制約がかかっており、流動性リスクには注意を払う必要がある。こうした資金ニーズからレポのニーズが高まっていることもあり、Risk.netでも二つのCCPが参入を計画していると報じられたばかりだ。

当然APRAは、こうしたファンドに対してもグローバルスタンダードなリスク管理の強化を求めている。2023年のSPS530では、マージンコールに対応するための現金確保に関する計画について、取締役会の承認を義務付けた。そして、ストレステストの定期的なシミュレーションを義務付けた。そして、2025年のCPS230では、デリバティブ実務を外部に丸投げすることが実質禁じられ、市場混乱時にもデリバティブ決済や評価が滞りなく行えるような体制維持が義務付けられた。

以前から、ここが金融危機の火種の一つになるのではないかと言われていたのだが、やはり当局も市場関係者も十分理解していたようで矢継ぎ早に改善策を求めている。しかし、為替取引は今後10年でさらに2倍になるという見通しもあるため、市場への影響も無視できない。何か問題が起きればその危機がグローバルに広がる可能性も否定できない。引き続き目が離せないセクターになりそうだ。