CCPでの清算が義務付けられたものの、ディーラーが顧客向けにクリアリングを提供すると資本コストが嵩(かさ)むようになったため、多くのディーラーがクライアントクリアリングから撤退した。主にリーマンショック後の規制強化を受けて、2014〜2015年頃にRBS、State Street、BNY Mellonが、そして2017年にはドイツ銀行が米国のクライアントクリアリングから撤退した。
主にレバレッジ比率規制上、顧客からIM(当初証拠金)を受け取っていたとしても、それをリスク(エクスポージャー)から控除できなかったため、業界からはかなり大きな批判が上がっていた。
しかし、このブログでも紹介したように、バーゼルIIIの枠組みの見直しにより規制緩和が行われ、クライアントクリアリングで顧客から預かった「分別管理された当初証拠金」を、エクスポージャーから差し引くことができるようになった。これを受けて、ドイツ銀行が米国のクライアントクリアリングビジネスを9年ぶりに再開したこともあり、取引量が第二四半期に8倍に増加したと報じられている。ドイツ銀行の場合は、規制緩和というよりは顧客ニーズに応えたもののようだが、今後もクライアントクリアリングに戻ってくるディーラーが現れてくるかもしれない。
特に最近は、クリアリングブローカーからの枠(キャパシティ)が厳しくなったという声がよく報道されるようになってきた。若干の緩和が行われつつあるとはいえ、クライアントクリアリングには依然として大きなコストがかかっている。アルケゴス破綻などを受けてストレステストを厳格化する銀行も多くなり、クライアントクリアリングの顧客に対するキャパシティはかなり減っているようだ。
こうした状況下で、顧客が一度は撤退した銀行に対して、クライアントクリアリングの再開を求めているという事情もあるようだ。
確かに取引量が毎年増えていく中、ディーラーに対する資本規制が厳格化されてきたため、このままではエンドユーザーがいざというときに取引できないという状況が発生しないとは限らない。長らく指摘されてきたことだが、規制強化が逆に流動性枯渇を招き、それが市場変動を増幅させているような気がしてならない。リスク管理は重要だが、市場全体を考えると市場流動性を高める努力も必要である。その意味では、今回の再参入の動きは良い方向に向かっていると言えるのかもしれない。