年金基金のサイズは圧倒的に米国が大きいが、近年オーストラリアの年金資産の増加が著しい。人口が世界50位程度にもかかわらず、既に世界4位のサイズを誇り、2030年には2位になるという予測もある。オーストラリアでは雇用主が従業員の給与の一定割合を強制的に年金口座に積み立てるため、強制的に資金が集まってくるという性質がある。
このサイズの急増を受けて規制当局がリスク管理の強化を求めるようになってきている。SPS220という規制がメインだが、取締役会の最終責任(ガバナンス)、リスク許容度の明文化、独立したリスク管理部門の設置などは、国際規格に従ったものとなっている。
投資リスクだけでなく、サイバーセキュリティ、BCP、気候変動、ガバナンスの不祥事といった「非財務リスク」の管理体制が求められているのも金融機関向け規制と同じである。単に資金が足りているかだけでなく、それを管理する社内体制やガバナンスが機能しているかを厳しく問うものが多くなっている。
一方日本の場合は、積立不足に重視するほか、実務のプロセスを細かく規制しており、どのような基準で委託先を選んだか、投資のリスクや時価算出根拠をどう確認したかといった、運用の現場におけるプロセスチェックや財政検証に重きを置いている。
一方海外は、独立したリスク管理専任の最高責任者や部門を置く、取締役の責任などガバナンス重視の傾向がある。これは海外が、金融規制を担う当局が管轄しているのに対し、日本は厚生労働省が所管しているという点に起因しているのかもしれない。
市場変動によるデリバティブ取引のマージンコールの金額を見積もって、流動性不足に備えるとか、ストレステストを行うべきといった、細かなリスク管理は、やはり金融機関向け規制の方が親和性があるのだろう。もちろん、日本では低金利が続き、デリバティブ取引の活用が海外ほど行われてこなかったため、こうしたリスク管理を重視する必要性がなかったという事情もある。
しかし、金利上昇が始まり、海外資産やリスク資産への投資が増加していく中では、為替リスクや金利リスクにも注意が必要になってくるだろう。G20の店頭デリバティブ規制は、年金ファンドもカバーしており、英国LDIショックなどの例もあるため、海外の規制はますます高度化している。日本もそろそろこうしたリスクを気にする必要性が出てくるのではないだろうか。