米国当局が取引データの分析に本腰を入れ始めた?

米国SECとCFTCが共同でヘッジファンドやファミリーオフィスの取引報告の厳格化を進めようとしている。10月11日までパブリックコメントを募集しているが、賛否両論となっている。

とはいえ、金融危機以降、金融市場の資金が銀行からファンドに移っており、もはや銀行のデータだけ見ていても全体像がつかめなくなっているのは確かだ。プライベートファンドの総資産は金融危機の初期には2兆ドル程度だったのが昨年末には10倍の20兆ドルに膨らんでいる。ここで対象となるのは、5億ドル以上の資産を有するファンドという提案になっている。日本だとデリバティブ想定元本3000億円を閾値としているので、米国の方が多くのファンドを網にかける形になっている。

報告内容はビットコインの保有額を含めた総エクスポージャー、借入、ファイナンス関連の契約となっている。これによって当局がポートフォリオの集中度合い、レバレッジなどを把握できるようになる。最近こうした取引報告の厳格化のニュースが良くみられるが、これは当局がこうしたデータの分析をかなり進めていることの裏返しなのだろう。これまでは、とりあえずデータを集めておこうということだったのだが、昨今の流れをみると、データ分析に本腰を入れ始めたように感じる。

当局同士のつながりも深くなっているので、おそらくこれが他の国でもスタンダードになっていくと思われる。その意味では日本では信託銀行にデータが集まっているため、海外より楽にデータが集められるのかもしれない。あとは集めたデータをどのように分析し、それを規制や金融政策に活かしていくかということになるのだろう。

デジタルレポ

レポ取引と言えば通常オーバーナイトだったり、期間が定められているが、それが日中の何時に決済されるかは決まっていない。これが技術進歩によって可能になれば、例えば3時間レポとか6時間レポというものが可能になる。レポ金利もオーバーナイト金利ではなく3時間分の金利を計算することができる。東京時間終了後からNY時間開始までといった短期間の資金ニーズもあるだろうから、それなりに意味があると思う。

JPMとBroadbridgeが既に、ブロックチェーン技術を使いこうしたサービス提供を開始している。こうした技術により、決済時間を分刻みで設定できれば、証券のフェイルがなくなり、効率性と流動性が上がる。

膨大な証券ポートフォリオを持っている投資家などが、こうした契約に入っていれば、分単位で使っていない証券を貸し出し資金を得ることができる。JPMのプラットフォームではJPMコインを使わなければならないが、通常の現金でこれを可能にするプラットフォームも存在している。

こうした技術革新を使えば常にドル調達のニーズがある日本でも、JGBなどの資産によって、より安価にドルを確保することができるかもしれない。たまにはこうした金融の革新も日本から生まれてほしいものである。

マーケットメイクからブローキングへ

銀行の社債保有額が過去最低レベルに落ち込み、市場の流動性が枯渇している。フェイルの件数も過去10年で最高レベルに増えており、担保不足も発生している。バランスシート規制の強化から、ディーラーサイドには常に在庫を減らす要請がある。ポジションを抱えていると、それだけで財務部門に日々コストを払う仕組みになっているため、トレーダーはなるべく在庫を最小限にしようとする。そしてAged Positionと言われる、長期にわたって保有する債券に関しては保有期間に関するリミットが設けられ、極力ポジションを回転させることが求められる。つまり、顧客の債券売りニーズがあったとしても、それがすぐに外せないリスクの場合は、顧客取引を躊躇してしまう。

そして、夏休み期間には、こうしたポジションを外せないため、必然的に社債を保有したいという銀行は少なくなる。当然債券価格は少しの取引でも乱高下しやすくなり、実際の取引がなくても気配値だけで値が飛んでしまう。特に戦争やインフレなどの不確実性リスクが高い時はなおさらである。実取引に基づかないレートは市場操作の可能性があるということでLIBOR改革が行われたのだが、社債市場に関しては、皮肉にも規制強化によって、価格の透明性が低下しているように思う。現場の感覚だと、マーケットメイクという業務が難しくなり、単なるブローカー業務がメインになってきたように感じる。

規制緩和はかなり困難であることが予想されるため、今後はバイサイド同士で取引をする仕組みや、上場物のように売り手と買い手を結び付ける場を拡充していくしかないのだろう。

MVAとは

MVAはMargin Valuation Adjustmentの略で、IMを拠出するコストを反映するものである。CVAやFVAのように取引時価の一部として会計計上しているところは少ないが、プライシングに含める銀行が多くなっている。清算取引と相対取引の両方に適用される。

CCPでは、VMの金利とIMの金利が異なったり、IMの金利にはマイナス金利を適用しないという条件になっている場合もあるので、厳密な計算は複雑になる。VMを受け取れば、それを他のカウンターパーティーに対する担保に使えるが、IMは証拠金規制によって分別管理を求められるので、担保の再利用ができない。ただし、証拠金規制の対象となっていないカウンターパーティーとの取引では、再利用が可能な場合もあるので、この辺りの計算も複雑だ。IMとして流動性のない仕組債などを拠出できる契約もあるので、その場合は当初証拠金拠出コストが低くなる。

また、CCPに対するIMが偏りやすいので、相対取引であったとしても、CCPと行う反対ヘッジにかかるMVAが大きくなることが多い。これは、特にLCHとCMEにIMが偏るドルスワップにおいて影響が大きくなっている。つまり相対取引そのものにかかるMVAのほかに、ヘッジ取引にかかるMVAも考慮しなければならないということだ。

ヘッジ会計適用スワップなどは、その取引が満期まで解約されないという前提でMVAを計算すればよいが、途中で解約される可能性の高いスワップの場合は満期までのコストをMVAに含める必要はない。スワップションなどでは、権利行使時にCCPに移るため、相対のIMがCCPに対するIMに変わる。このようなVelocityについても一定の前提をおいてMVAの計算をする必要がある。最近では、コンプレッションベンダーが当初証拠金の最適化サービスも影響し始めているので、MVAを減らせる可能性もでてきた。

以上のように、MVAの計算は非常に複雑であり、厳密にこれという数字が計算される訳ではない。マーケットでも、一定のMVAを取る慣行はあるが、ディーラーの既存ポジションにもよってMVAも異なるため、その他のXVAに比べると厳密な計算手法が確立しているとはいえないように思う。一方で、このコストがかなり大きくなることもあるので、完全に無視するわけにはいかない。また、IMを多くとると、CVAやFVAが減るうえ、資本の計算手法に資本コストを削減できることもある。資本規制、ポストトレード処理、適格担保の拡大など、今後更なる発展が見込まれる分野である。

Dirty CSAのニーズが高まっている

証拠金規制が定着しCSAの条件も標準化されてきたが、ここへきて現金以外の資産を適格担保に含めるいわゆるDirty CSAが増えているという報道があった。市場変動が激しくなり、必要なVMが大きくなってきたため、現金が足りなくなるバイサイドが増えたとのことだ。

通常はレポやストックローンなどのSFTによって、債券や株式を現金に換えて担保拠出をするのだが、昨今のバランスシート規制の強化により、レポのコストが著しく上がっている。ここまでコストがかかるのなら、少しくらいプライスが悪くなったとしても、CSAの適格担保に現金以外の担保を入れた方が良いのではないかということだ。ここでプライスが悪くなると言ったのは、社債などの非現金担保を受け入れてしまうと、レバレッジ比率規制上、エクスポージャーと担保をオフセットできないため、銀行のROEが低下してしまうからだ。他にもNSFRを悪化させるという効果もあるため、銀行サイドとしてはできるだけClearn CSAを入れておきたいニーズがある。

特にポートフォリオが大きい場合は、このCSA変更のコストはかなり大きくなる。銀行サイドとしては、将来にわたって資本コストが上昇するのでKVAをチャージすることになるが、これが思ったより大きくなることが多い。とはいえ、どうしても担保がないという場合には、現金以外であったとしてももらっておいた方が得策である。特に市場変動が激しく担保がいくら必要になるかわからないようなケースでは、現金に固執してカウンターパーティーリスクを取ってしまっては元も子もない。

一部では、こうした場合に1か月から3か月だけ一時的に担保条件を緩めるということが行われている。CSAの適格担保には通常Catch All条項が入っていることが多いので、おそらくそれを使っているのだろうと思われる。Catch all条項とは、適格担保に「その他両者が合意した担保」といった形でいざというときに何でも取れるようにしておく条項だ。この条項は、あまり頻繁に使うと適格担保の意味がなくなってしまうので、デフォルトの危険性が高いとき、極度な市場変動が起きた時に限定的に使われるべきものである。

PRAのSIMMレビュー

英国当局のPRAから、SIMMについて出されたレターが話題になっている。PRAとしては、コロナショック、ロシアのウクライナ侵攻、アルケゴス破綻などを考えるとSIMMベースのIMが不十分ではなかったかということなのだが、これらのリスクをすべてSIMMでカバーしようとすると、かなりのIMが必要になる。

アルケゴスレベルのリスクをカバーするためには元本の40%程度のIMが必要だったとも言われているが、全てにおいてそこまでのIMを取る必要があるかどうかはよく分からない。そもそもアルケゴスは証拠金規制対象外であり、SIMMに基づいて担保を取っているところはなかった。また、IMを40%取っていたわけでもないのに、アルケゴス破綻に際して損失を被らなかった銀行もあった。これをもってSIMMが機能しなかったと結論づけるのは早急とRisk.netでも指摘されている。

PRAのレビューを読んでみると、いくつかのカウンターパーティーに対しては、SIMMが当局が求める99% VaRのリスクをカバーするのには不十分であり、特にフェーズ6で証拠金規制の対象となるファンド等はリスクプロファイルが若干これまでの大手市場参加者と異なることから、SIMMの見直しが必要とされている。

また、SIMMのモデルガバナンスにはいわゆる「3+1バックテスト」が使われている。これは直近3年と1年のストレス期間をベースにストレステストをするという手法である。これだとサンプルデータに偏りがあり、モデル化できないリスクファクターを考慮できないということが問題視されている。

現場では、SIMMというよりは、当局が設定した標準法であるグリッドの扱いに苦慮しているという声もよく聞かれる。SIMMで計算されたIMとグリッドのIMだと、本来グリッドを使った方が保守的になるべきなのだが、SIMMを厳格化すると、グリッドを使いたいというファンドが増えてくる。特にグリッドは40年などの長期の取引になると、IM所要額がSIMMよりかなり小さくなる。アルケゴスで問題になったトータルリターンスワップでも、グリッドのIMは元本の15% にしかならない。

ウクライナ侵攻を受けたコモディティ取引の市場変動も、VaRなどでは測れるものではなく、極地理論でも援用しないとカバーできないリスクである。これをすべてSIMMで解決しようというのには無理があるのではないだろうか。むしろ担保だけ取っていれば大丈夫というよりは、どの程度のポジションまでを許容するのかという視点が、近年のカウンターパーティーリスク管理には重要なのではないかと思う。

海外当局が報告データの精査を始めた?

米国で取引報告義務違反で罰金が科されるケースが相次いでいる。同様の罰金はこれまでも発生していたが、最近のケースは必ずしも悪質とはいえず、単純ミスや、法の解釈ミスによるものである点が注目されている。過去5年間の間のミスなど、長期にわたって行われてきたものに対する罰金も含まれている。これは裏を返せば当局が集めたデータを精査しているということなのかもしれない。

カウンターパーティーが誤ってNon US Personに分類されていたものもあるが、これはかなり複雑だ。規制によっては米国人と判定されるケースとそうでないケースがあるうえ、親会社保証がついている場合は米国人と判断されるなど、非常に細かい分類となっている。おそらく、これをすべて把握しているセールスは少ないだろう。これもシステム的に判断するしかないので、昨今ではこうした分類もテクノロジーの力を借りて判定するのが一般的になっている。

コモディティ取引を誤って株式関連取引としてレポートしていた件なども摘発されている。簡単なようだが、コモディティリンクのエクイティスワップなど、デリバティブ取引には様々なものがある。長期のクーポンスワップなどについても、為替のフォワードストリップなのか、通貨スワップなのか迷うケースもある。トムネの為替などはスポットとほぼ同じ感覚なのだが、今回はこのレポートミスも摘発対象になっている。

明らかに海外当局は取引データを何らかの目的で利用し始めているように見える。そうでもない限りこうした過誤に突然気づくのは不思議だ。アルケゴスのポジション拡大を取引報告データによって検証したり、LMEのニッケル暴騰と取引報告の関連性などを調べたりしている。今後はISDAのCDMや取引報告のシステム化が急務になる。というよりは、海外ではこれが急速に進んでいる。日本でCDMといってもあまり通じないのが少し気がかりだ。

店頭デリバティブ取引のリスク削減要件

店頭デリバティブ取引に関しては、可能な限りCCPで清算し、それが不可能な店頭デリバティブ取引に関しては証拠金規制をかけるというのが基本方針だ。しかし、証拠金規制だけでカバーできないリスクもあることから、別途IOSCOからガイダンスが出ている。これは、Legal Certainty、つまり取引の法的有効性を確保し、カウンターパーティーリスク管理を容易にし、金融システム全体を安定化するために導入された。米国、欧州、香港、シンガポールなどでは、規制やガイダンスが出されている。

Valuationなど日本でも似たようなガイダンスは出ているが、日本ではあまり注目されていない。オペレーションの高度化とか、システム化、自動化、効率化という日本が最も不得意とする部分のように思える。ポートフォリオ照合、Disuputeの管理、コンプレッションの努力など、オペレーションが面倒だという理由からか、海外ほどこれらを推進しようという動きも見られない。規制で厳しく求められたり資本コストが上がるわけでもないので、システム投資をしようというインセンティブがない。人権費が安いからシステム投資をしようというインセンティブがないという理由もあるかもしれないが、ここ10年くらいの間に日本のテクノロジー化がかなり遅れてしまったように思う。

Trading Relationship Documentation

取引に際して契約を締結し、取引の法的有効性を確保する。店頭デリバティブ取引の実行前(または実行と同時)に、契約を締結する方針や手続きを準備し、その通り実施しなければならない。今となっては当然のことではあるが、以前はISDAなどのマスター契約を締結することなく取引を行ったがために、トラブルにつながることもあった。

Trade Confirmation

マスター契約を締結した後に、個々の取引の内容を規定したコンファメーションを取引直後に交わす必要がある。取引を執行したら、直ちにコンファメーションを送付し、当事者同士で取引内容を確認しなければならない。以前は、このコンファメーションの送付と確認に数日かかったりすることもあったが、国によっては、これに期限を設けるようになった。

Valuation and Counterparties

マージンコールに使われる時価評価手法を確立しておかなければならない。取引の実行から終了、満期、失効といったいかなる際にも、その価値を決定するプロセスを合意し、それにしたがって時価評価が行われなければならない。時価評価自体に合意できないと、マージンコールが行えず、金融システム全体の不安定化につながってしまう。日本においてもValuationに関しては注意深くモニタリングすることが求められるようになっている。

Reconciliation

取引相手との間で、取引の内容や時価評価に相違が発生すると、前項同様金融システム全体のリスクになる。したがって、取引を行った後も、定期的に取引の照合作業を行うべきである。

Portfolio Compression

オフセットする取引を減らすべく、コンプレッションを定期的に行わなければならない。TriOptimaやQuantileといったベンダーのサービスを使った複数社間のMultilateralコンプレッションと、相対で個別に行うコンプレッションがある。コンプレッションを行えば想定元本ベースの取引量が減るため、レバレッジ比率を向上させたり、G-SIBスコアを下げたりすることができる。

Dispute Resolution

取引時価にDisputeが発生すると、担保授受が行われなくなる。それをそのまま放置しておくと、担保の効果が損なわれてしまう。したがって、Disputeの解決プロセスを決め、タイムリーに担保授受が行われるようにしないと、証拠金規制自体の効果に問題が発生する。また、米国や欧州では、一定のDisputeが継続して発生した場合は、資本賦課が上がるため、これを放置しておくと収益圧迫要因になる。

このような店頭デリバティブ取引に関する規制強化については、国ごとの進捗がFSBによって報告されている[2]。IOSCOのガイダンスにもあるように、デリバティブ取引はクロスボーダーで取引されており、現地法人などを通じてブッキング拠点を移すことも可能である。こうしたなか、規制アービトラージが起きないよう、当局同士が密接に連携することにより、国による違いが大きくならないようにしなければならない。FSBのレポートにも示されているように、日本の規制はほぼグローバル並みの基準を達成している。

しかし、細かい規制を比較していくと、たとえば執行した取引を即時に公開するリアルタイムレポーティング、取引を電子的にブックする電子取引規制、約定から決済に至るプロセスを人手を介さずに行うSTPガイダンスなど、システム化、標準化、オートメーション化においてスタンスが異なっている。電子取引などはETPによって規制は整備されているものの、米国のSEFなどと比べると対象取引範囲がかなり狭い。グローバルな金融業界は、自らの効率化努力と規制からのシステム化要請によってIT産業化しているのに比べると、日本のIT予算は各段に少ない。アジアの金融機関が急速にキャッチアップしているなか、日本の金融が世界から取り残されないよう、テクノロジーや金融インフラの高度化努力を推進すべきだろう。

日本の金利マーケットの将来

米国では、ARRCがCMEのターム物SOFRを正式承認し、取引量が増えている。ディーラー間での取引禁止の解除を求める声も大きくなっており、徐々にターム物SOFRの利用が本格化しつつある。6月に再開したARRCのターム物タスクフォースで隔週の議論が続けられているようだが、まだPublicに出てきている情報はなさそうだ。あれほど銀行の信用力にリンクしないリスクフリーレートで貸し出しをするのは問題だという意見があったのだが、ふたを開けてみるとターム物SOFRのローンがかなり増えているようだ。当然AmeriborやBSBYのようなCredit Sensitiveなレートのローンも増えてはいるが、全体の割合はきわめて小さい。

SOFR先物も取引量が急増したというニュースが先ほどBloomberでも出ており、こちらも順調に取引量が伸びている。オプションに関するSOFR Firstの効果もあるようだ。

日本のターム物であるTORFは1年以上公開されているが、マーケットで幅広く使われているという話は聞かない。TONA先物に関しても話は出ているようだが、こちらも今後の展開次第だ。現状の市場の温度感を見るとTORFもTONA先物もあまり盛り上がるという兆しがない。BSBYがCCPでクリアリングされたり、ターム物や先物の取引量が増えている米国とは大きく異なる。

TOFR先物が増えたのはLIBORからの移行というのもあるが、米国金利上昇に備えたヘッジとも報道されている。金利が変動しない日本においては、金利先物はあまり意味がないのかもしれない。そう考えるとTORFもあまり広がっていくとは思えなくなってくる。単に先決め金利という意味ではTIBORも残っているので、ターム物に対するニーズがどれほどあるのか疑わしい。TFXのユーロ円金先の取引もほとんど見られない。

当然金利が動かいないのでヘッジのニーズも少なく、Buy and Holdの投資家も多いので、金利のトレーダーも業界からどんどん少なくなっている。何とか日本の金融市場を発展させようと様々な努力が続けられているのだが、金利が動くまでは難しいかもしれない。

債券取引の即時報告が1分以内に

以前から話は出ていたが、債券取引の報告が取引執行後15分から1分以内に変更するとSECのゲンスラー委員長がコメントしている。債券市場の透明性を高めるための方策だが、米国では店頭デリバティブ取引についてもリアルタイムレポーティングが存在しており、取引後直ちにそれを明らかにするという方向がますます進んでいる。

ゲンスラー委員長の言い分では、テクノロジーの進化に併せて情報開示も進化すべきということだ。欧州でも即時報告についての意識は高い。確かに取引執行後にシステムにブックすれば、それがすぐにSTPで流れていくので、システム整備が終わっている銀行にとっては、それほど手間ということはない。こうした当局からの要請がテクノロジーの進歩と、自動化、標準化、効率化を推し進めているように思う。

なぜか日本ではこうした要請は聞かれないが、手作業が多いので技術的に難しいという事情もあるのかもしれない。ただ、海外の著しいテクノロジーの進歩と巨額のIT投資額をみると、日本と海外の差が急速に広がっているような気がしてならない。