マーケットメイクからブローキングへ

銀行の社債保有額が過去最低レベルに落ち込み、市場の流動性が枯渇している。フェイルの件数も過去10年で最高レベルに増えており、担保不足も発生している。バランスシート規制の強化から、ディーラーサイドには常に在庫を減らす要請がある。ポジションを抱えていると、それだけで財務部門に日々コストを払う仕組みになっているため、トレーダーはなるべく在庫を最小限にしようとする。そしてAged Positionと言われる、長期にわたって保有する債券に関しては保有期間に関するリミットが設けられ、極力ポジションを回転させることが求められる。つまり、顧客の債券売りニーズがあったとしても、それがすぐに外せないリスクの場合は、顧客取引を躊躇してしまう。

そして、夏休み期間には、こうしたポジションを外せないため、必然的に社債を保有したいという銀行は少なくなる。当然債券価格は少しの取引でも乱高下しやすくなり、実際の取引がなくても気配値だけで値が飛んでしまう。特に戦争やインフレなどの不確実性リスクが高い時はなおさらである。実取引に基づかないレートは市場操作の可能性があるということでLIBOR改革が行われたのだが、社債市場に関しては、皮肉にも規制強化によって、価格の透明性が低下しているように思う。現場の感覚だと、マーケットメイクという業務が難しくなり、単なるブローカー業務がメインになってきたように感じる。

規制緩和はかなり困難であることが予想されるため、今後はバイサイド同士で取引をする仕組みや、上場物のように売り手と買い手を結び付ける場を拡充していくしかないのだろう。