海外当局が報告データの精査を始めた?

米国で取引報告義務違反で罰金が科されるケースが相次いでいる。同様の罰金はこれまでも発生していたが、最近のケースは必ずしも悪質とはいえず、単純ミスや、法の解釈ミスによるものである点が注目されている。過去5年間の間のミスなど、長期にわたって行われてきたものに対する罰金も含まれている。これは裏を返せば当局が集めたデータを精査しているということなのかもしれない。

カウンターパーティーが誤ってNon US Personに分類されていたものもあるが、これはかなり複雑だ。規制によっては米国人と判定されるケースとそうでないケースがあるうえ、親会社保証がついている場合は米国人と判断されるなど、非常に細かい分類となっている。おそらく、これをすべて把握しているセールスは少ないだろう。これもシステム的に判断するしかないので、昨今ではこうした分類もテクノロジーの力を借りて判定するのが一般的になっている。

コモディティ取引を誤って株式関連取引としてレポートしていた件なども摘発されている。簡単なようだが、コモディティリンクのエクイティスワップなど、デリバティブ取引には様々なものがある。長期のクーポンスワップなどについても、為替のフォワードストリップなのか、通貨スワップなのか迷うケースもある。トムネの為替などはスポットとほぼ同じ感覚なのだが、今回はこのレポートミスも摘発対象になっている。

明らかに海外当局は取引データを何らかの目的で利用し始めているように見える。そうでもない限りこうした過誤に突然気づくのは不思議だ。アルケゴスのポジション拡大を取引報告データによって検証したり、LMEのニッケル暴騰と取引報告の関連性などを調べたりしている。今後はISDAのCDMや取引報告のシステム化が急務になる。というよりは、海外ではこれが急速に進んでいる。日本でCDMといってもあまり通じないのが少し気がかりだ。