ついにEONIA(Euro OverNight Index Average)からESTR(Euro Short-Term Rate)へのディスカウントレートの変更が2/27、今度の月曜に行われる。当然取引の時価が変わるため、得をする人もいれば損をする人もいる。CCPでクリアされている取引については混乱なく移行が進むだろうが、相対取引をどのように移行させていくのかは非常に興味深い。特にSwaptionでこの移行がどうやって進むかに注目が集まる。
ECBがサポートする委員会ではここで発生した損益は現金のやり取りによって相殺すべきであり、ここから損得が発生しないようにすべきとの指針を打ち出してはいるものの、相対契約に対する法的強制力はない。
10月にはUSDについて同様の変更が控えているため、来週以降のマーケットで何が起きていくかは非常に興味深い。日本円の場合は既に翌日物金利での割引が行われており、ディスカウントレート自体の変更は発生しないが、ドル金利スワップやドルスワップションを取引している参加者にとっては無視できない動きである。
自分勝手にここから儲けてやろうという参加者が出てこないことが切に望まれる。
待ちに待ったCFTCのクロスボーダー規制の最終案が公表された。これでリーマンショックに端を発するDodd Frank法の大きな改訂が完了することになる。
日本を含む海外市場参加者との取引について米国同局がどこまで関与するかが明確化されたため、日本にとってもポジティブなニュースである。たとえ日本国内の取引であったとしても米国に本社を持つ外資系が関わった場合に、どこまでドッド・フランク法が関与するかは常に厄介な問題であった。もともと、TOTUSレターを手配して米国人が関与しないよう、様々なプロセスを追加しなければならなかったが、昨年のTOTUSレターの廃止に続いて、今後はUS Personが関与したとしてもドッド・フランク上のスワップディーラーの要件がかからなくなる(まだ全文を読んではいないが、おそらくそのはず)。
これで、日本の規制にさえ従っていれば、米国規制の影響を受けることなく取引ができるようになるはずだ。いわゆるANE問題がクリアになることになる(ANE=Arrange、 Negotiate、Execute。米国人が取引のアレンジ、交渉、執行にかかわると米国規制に服すというルール)。
もともと日本では、米国人が関与すると米国規制に従わなければならないというコンセプトだけが有名になってしまい、その詳細がわかりにくいということで、かなり厄介な規制であった。当然のことながら、日本の市場参加者からすると、面倒なので米国と関係していそうなら止めるとか、相手に米国と関係していないことを証明させるという選択肢しかなかったのだと思う。
しかもANEの定義があいまいで、取引のアレンジに関わるとは、どこまでを指すのか、交渉にはどのような話が含まれるのかを定義するのが難しく、このためにNY州法の弁護士に多額のフィーを払うよりは、止めてしまえという判断もあったのではないだろうか。
今回のドラフトを読んでいて面白いのは、JFMC/IBAJのコメントが多数引用され、採用されている点だ。JFMCはJapan Financial Markets Councilの略で、日本の金融市場関係者からなる業界団体、IBAJは言わずと知れた国際銀行協会である。ほかにJSCCのコメントも引用されている。日本の意見が米国でも評価され、採用されているということになる。コメントレターの作成に関わった市場関係者の方々の努力に感謝したい。
2012年から金融規制・市場最新動向をお届けしてきました。今般アメブロから引っ越してきました。