LIBOR代替レートの今後

LIBOR改革に関しては英国が先行しており、ターム物リスクフリーレートの構築も徐々に進んでいる。IHS Markit、FTSE Russell、Ice Benchmark Administration、Refinitivと4社がしのぎを削っている。MarkitはSONIA OIS、先物市場における実取引に基づいてレートを作成するとのことだが、他の3社は、SONIA OISのデータを使っている。

一方米国においてはSOFRリンクのデリバティブの取引量が思ったより増えず、若干後れを取っているように見える。ARRCでは2021年末までにターム物RFRが使えるようにというのが当初の目標だったが、何とかこれを半年程度前倒しにして2021年上半期の公表を目指している。

しかし、実際のマーケットを見ていると引き続きLIBORベースの取引が多く、SOFRベースの取引に比べると、100倍以上の開きがある。CMEに上場したSOFR先物も3月に取引が急増したもののその後はまた減少傾向にある。着実に取引が増えているSONIA Swapとは大きな違いである。やはり、10月のCCPの割引率変更を待っているようにも見える。そうは言ってもターム物ができるのを待っていると間に合わなくなる可能性もあるので、やはり一旦はRFR後決複利への移行が起きそうだ。

ISDA、Linklaters、BlombergからIBOR Factsheetが先週公開されたが、こうしたデータについてもBloombergで確認できるようになる。これまでのLIBORのTickerの前にFをつければフォールバックレート、Sをつければスプレッド調整値が見られるようだ。例えば3ヶ月円LIBORなら通常JY0003Mだが、フォールバックレートはFJY0003M、スプレッド調整値はSJY0003Mといった具合だ。

このFactsheetには、新レートの計算タイミング等が示されているが、例えば、2022年1月1日にLIBORがDiscontinueされるとなると、3m LIBORであれば2016年10月1日から2021年10月1日までの5年間のデータから中央値を計算することになり、12m LIBORであれば2016年1月1日から2021年1月1日までの5年間のデータが使われると示されている。

つまり、全てのLIBORが一斉にDiscontinueされるとなると、そのスプレッド計算の時期がテナーによって異なるということである。そうするとDiscontinuation直前に大きな市場変動が起きると、1m LIBORと12m LIBORで大きな差が出るのだろうか。とは言え5年間分のデータがあり、しかも平均ではなく中央値なので、あまり大きな問題にはならないかもしれないが。

こうした5年間の中央値を意識した上で取引が行われることになると思われるので、今後のレートの動きに注目したい。