BISのドル調達に関するレポートが今後のドル逼迫を懸念

BISからドル調達と中銀のスワップラインのレポートが出ている。リーマンショック以前と比べて銀行以外のドルニーズが高まっているとともに、欧州銀行からカナダと日本の銀行へのシフトが見られるとある。ほかにもロシア、トルコ、台湾などのドル調達も増えている。FRBのスワップラインのある国が多いが、このラインを持たない中国のドル調達も1兆ドルを超えているのが興味深い。

ドル資金を短期の為替スワップで調達している国として、カナダと日本の大きさが目立っている。一方、オーストラリアの銀行はドル資金の出し手となっており、英国の銀行も近年借り手から貸し手に回っている。カナダと日本はMMFと為替スワップからドルを調達し、それを貸出、準備金、米国債保有へと回している。ここでMMFや為替スワップ市場の混乱によって、金融環境が引き締められる時に、銀行以外のセクターもドル資金を奪い合う可能性があるため、そのリスクが懸念される。

日本の銀行は準備金と米国債を使ってドル調達を継続できるとされているが、中銀スワップラインの利用度も高いということが淡々と書かれている。一方カナダの銀行は多額の短期ドル調達を行っているものの、中銀スワップラインを使っていないので、まだ余力があるという判断のようだ。

今後の世界経済の情勢次第では、数か月以内にドルが逼迫する可能性も示唆されており、ドル調達が困難になる危険性があると結ばれている。

別のBISのレポートによると、ドルは世界経済活動の25%を占めており、クロスボーダーのローン、社債の半分はドル建てである。そしてこのドルを必要とする主体が金融機関以外や、新興国に広がっているため、その影響の度合いが図りにくくなっているように思う。次に世界的な金融危機が起きるとしたら、ドル調達に起因するものになるのかもしれない。

日本の場合は、低金利から海外投資が増えたたためのドルニーズであるが、通常の決済にドルが必要な局面も多い。あまり極度にドル依存が増えるのは、金融市場の安定という点からはあまり望ましくないのかもしれない。

やはりAMERIBORがドル建てローンでは主流になるのだろうか

ARRCがクレジットスプレッドを反映させた新レートの検討に入っていると報じられた。銀行の調達コストが上がった時にリスクフリーレートで貸し出しをすれば銀行の収益が悪化する懸念から、銀行の信用力を反映させた新レートの構築が期待されていたが、これまでSOFR以外のレートについてはあまり積極的ではなかったARRCが検討するというのは若干意外感がある。

もともとは、そのためにCSGが作られたと思っていたのだが、CSGの検討があまりうまくいっていないのかもしれない。確かに、6月のミーティングを最後にWorking Groupは開かれていないようであり、何のアナウンスメントも出されていない。期限が迫る中これだけの大きな問題を扱うのは、急場しのぎで作ったコミッティーでは難しいということなのだろうか。

こうなると、市場ではAmeriborが代替レートになるのではないかという憶測も強くなってくるのではないか。