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資産運用業を拡大したい日本と、規制を強化したい米国

海外ではNBFIに対する規制強化の話が徐々に盛り上がりつつある。NBIFはNon-Bank Financial Intermediationの略でノンバンク金融仲介機関などと訳される。以前から議論されてきたことではあるが、米国当局からの発言がここ最近目立つようになってきた。特にイエレン米財務長官が議長を務めるFSOC(Financial Stability Oversight Council)では最近活発な議論が進められている。ここでシステム上重要とみなされると、巨大銀行と似たような規制や報告義務などが科せられる可能性がある。

先週はFDIC議長も、銀行資産が23.7兆ドルであるのに対してノンバンクが20.5兆の資産を持っているため、このセクターに対する規制強化に言及している。明らかに売電政権は、この分野に踏み込まなかったトランプ政権とは異なるアプローチをとることを明確にしつつある。

こうなるとヘッジファンドやBlackRock、Fidelity、Vanguardといった資産運用会社の名前が真っ先に頭に浮かぶ。折しも岸田政権が資産運用業の強化を打ち出したばかりであるが、米国ではすでに強くなりすぎたこのセクターに対するコントロールを議論するといった段階になっている。資産運用特区の話もあるので、米国の規制強化の流れを受けて、規制緩和を検討している日本進出を検討する運用会社も出てくるかもしれない。

ただ、米国の規制強化の議論が一部で言われているようにドッド・フランク法のようなインパクトを持つものになるのであれば、金融業界地図が大きく塗り替えられることになろう。日本ではこうしたプレーヤーが少ないのであまり話題にならないが、最近では、大手金融機関からヘッジファンドや資産運用業界への転職者が相次いでいる。給与水準も大手金融機関を大きく上回り、取引の自由度も高く、収益も上げやすいので、確かにバランスが崩れている感がある。

昨今の中国をめぐる政治的、経済的情勢、ようやく金利やインフレ動向に変化の兆しが見えつつある日本への注目が高まっているのは確かである。税金が高いに日本には誰も来ないという意見もあるが、金融庁主導で意外と地道な税制改革は行われている。

海外ファンドの人達と話していると、業績連動給与の損金算入、国外財産の相続税免除、国外財産への税免除、キャリードインタレストの分離課税などがネックと言われることが多いのだが、これはすべて一定程度すでに改善されている。シンガポールや香港並の税金にすることは難しいだろうが、借り上げ社宅形式の税控除などを組み合わせれば、生活コストの安い日本の生活は言われるほど悪くない。

これまで日本の金融ハブ化構想は何度となく失敗してきたが、NISA拡充などもあり、今回はひょっとすると何らかの変化が起きるのかもしれない。

SA-CCRが為替取引のやり方を変える

SA-CCRが為替取引に与える影響についてIFRの記事が出ている。SA-CCRへのシフトによる資本賦課の増加を受けて、今後はCCPによるCleared Tradeや先物へシフトしていくという論調だ。

米国と英国は、SA-CCRに移行したのは昨年の1月くらいだが、そのころからマーケットに影響が出始めた。もともと為替取引は、短期のものが多かったため、従来の方式だと資本賦課が少なかったが、これがSA-CCRになると、短期取引も含めて資本コストがかかるようになった。金利取引などはすでにCCPに移行したり、先物マーケットも成長しているが、為替には元本決済が伴うため、CCPでの取引は極めて小さい。清算集中義務もない。一部NDFのみが細々とクリアリングされてのみであった。

すでにLCHのForexClearでは取引量が増えてきており、過去2年間で42%清算取引が増えたと報じられている。Clearedされた想定元本も25%増とのことだ。為替先物の取引量も2022年9月時点で前年比42%増となっているそうだ。

とは言ってもドル円の為替取引はNDFではないので(技術的にはNDFにすることもできるが)、資本コストをあまり気にしない日本の金融機関が多いことも相まって、日本では先進行以外では話題にすらならない。為替先物の取引量も目立って伸びているわけではない。ROEハードルが満たせないビジネスは厳しく精査される海外金融機関では、今後のFRTB導入を控えて、為替取引を先物やCCPにシフトさせようとしているところが多いと報道されているが、日本ではあまりこうした動きも見られない。無担保で取引をするところも多いので、わざわざ有担保でかつ当初証拠金が必要な取引へシフトしようというインセンティブも働かない。

グローバルでは、NDF、先物、Cleared FX、相対の為替取引をまとめて最適化し、ポストトレード処理で資本賦課を減らそうという動きが盛んである。資本のみならず、当初証拠金のファンディングコストやオペレーショナルリスク削減のために極力ブックをきれいにしておこうという意識が高まりつつある。資本規制は全世界で課せられ、日本では金利スワップのコンプレッションは市民権を得つつあるので、時期は遅れるだろうが、為替についても今後同じような変化が起こることになるのだろう。

管理相場のメリット

中国が人民元の下落に歯止めをかけるべく銀行にドルを買わないよう指導しているとReutersが報じている。中国のゴールデンウィークに当たる10月にドルニーズが増えることを見越しての政策のようだ。厳密には、ドル買いニーズに対応する取引を行った際には、そのポジションを直ちにヘッジしてスクエアにするのではなく、しばらくオープンで持っておくようにとの要請だ。$50mmを超えるドルを買う企業は中銀の承認を取る必要があるとも書かれている。銀行に対して、顧客にドル買いを控えるよう促してもいるようだ。

$50mmというのは結構小さいように感じてしまうが、時期をずらせばある程度の取引はできるのかもしれない。しかし、こうした行動を指摘されたときのリスクはあるだろう。日本でも為替介入を行うことはあるが、こうした様々な手段が使えるのは中国のある意味強みなのだろう。人民元の変動が他通貨に比べて少ないのも、こうした理由があるのだろう。同様に金利変動も他通貨に比べると緩やかである。

色々な意見もあるだろうが、こうした市場変動が少ないということは、あらゆるメリットがある。最近話題になっている証拠金の増加についても、変動の少ない商品についてはその増加幅は少ない。といことは人民元のスワップを行った際の必要証拠金が少なくなり、取り引きコストが安いということになる。同時にストレスロスも少なくなるため、所要資本も少なくなる。つまりMVAとKVAが低くなる。

価格は市場が決めるべきというのも今では当然のこととして受け入れられているが、これは市場が完備であれば問題ない。規制強化により、収益機会があってもそのポジションを取れないことが多くなってくると、効率的市場仮設は成り立たなくなる。そうなるとある程度管理された相場の方が全体的な効率が良いということが起きてしまうのではないだろうか。

現状では大きな市場変動のあった米国金利スワップ、英国金利スワップ、コモディディスワップの取引コストはかなり高くなっている。一方日本円の当初証拠金はこれらの通貨に比べるとかなり低い水準にとどまっている。かといって、全てのマーケットを管理相場にするのは当然望ましくないのだが、ここまで来ると市場変動が少ない方が有利という状況になってきているように思う。

クレジットセンシティブレートの終焉

BloombergからBSBYの公表停止に関する市中協議があった。当局からの意見募集でないConsultationを市中協議と訳すのは何となく違和感があるが、10/13まで市場参加者の意見募集が行われる。これが決まれば、クレジットセンシティブレート自体がなくなっていく可能性もある。

米国ではLIBOR改革によってリスクフリーレートであるSOFRへの移行が行われたが、銀行の信用スプレッドを含まないリスクフリーレートをベンチマークとしていると、銀行の調達コストが上がったとしてもそれを貸出金利に反映させられないとして、信用リスクを含んだクレジットセンシティブレートが複数作られた。

この中ではAmeriborとBSBYが比較的使われてきていたのだが、それでも取引量が細っており、結局Credit Sensitive Rateは必要ないという結論になるのだろうか。ただ、今回の背景には市場のニーズ低下というよりは、当局の意向が影響したように思う。もともとは7月にIOSCOが国際的なベンチマーク基準を満たしているかどうかに疑問を呈したのが大きい。十分な取引量に裏打ちされていないという点が最大の懸念ということなのだろう。

しかし、その他の国にはこうした少ない取引データに裏打ちされた金利指標は数多く存在する。複数の金利指標が存在する日本もその例外ではない。先日住宅ローンの金利更改時に長プラという言葉を久しぶりに聞いたが、日本にも様々な金利指標が存在する。何となくIOSCOがCredit Sensitive Rateを狙い撃ちしていような感もあるが、よほどSOFRへの流動性集中が必要ということなのだろう。裏を返せば、LIBORスキャンダルを二度と起こしてはならないという当局の強い姿勢の表れなのかもしれない。

Bloomberg社としては、BSBYの頑健性についての分析を行い、監査も得たうえで指標としての透明性確保をしてきたつもりだったのだが、取引量が細ってきていることもあり、今回の意見募集となったようだ。レート自体は1年程度公表されるが、ここで公表停止が決まれば、新たな取引に使われることがなくなる。

今回のケースもそうだが、つくづく海外は標準化に重きを置いていると感じる。日本は顧客のニーズがあれば、必死でカスタマイズをして、それに応えようとする文化がある。信用リスクを含んだレートが必要であれば、金融機関はそのニーズに応えようとすべきであるという意識が働き、当局からそれを妨げる動きは見られない。ドルより小さなマーケットであるにもかかわらず、2つのTIBOR、TONA、TORF、2つのTONA先物と、JSCC金利とLCH金利のように様々な指標が存在している。

住宅ローンの変動金利も短プラ連動とはされているが、ゼロ金利政策下でも、交渉しない限りずっと下がっていない。短プラは1年未満の短期貸し出しにおける最優遇金利で各銀行が金利を決められることになっている。その意味では日本では米国とは異なり、短プラで利ザヤを確保できるのでクレジットセンシティブレートの必要性が低いということなのだろうか。

どれか一つに流動性を集中させるべきという議論もあまり聞かれない。細々とでも良いから、使う人がいるのだからそのまま置いておけばよいのではないかというスタンスだ。米国であれば市場操作の可能性や、指標をメンテナンスしていくコストが問題になるところだ。

いずれにしても金利に対する考え方は日本と海外でずいぶん異なっているように思う。ネット銀行の参入による競争もあるが、海外に比べると銀行にとって優しい仕組みなのかもしれない。その分シリコンバレーバンクのような危機は起きないという意味で一長一短なのかもしれないが。

金融危機はFire Sellが引き起こす

デリバティブマーケットで起きた最近の事件は、多くがFire Sell、つまり資産の投げ売りから発生しているように思う。もともとは火事で損傷した商品を安値で売りさばくという意味から来ているのだろうが、これを行うと、資産価格が急落する。

債券の場合は資産価格の急落はクレジットスプレッドの拡大とともに、金利の急上昇を伴う。2020年3月のDash for Cashでは、米国債を売って現金を確保しようという動きが国債暴落に拍車をかけた。2020年10月のGilt Shockでは、マージンコールに応えるために資産を現金化する動きが市場変動を増幅させた。シリコンバレーバンクは破綻時には預金の引き出し請求の増加したため保有米国債のFire Sellが起きた。

つまり、Fire Sellが起きなければかなりの金融危機は抑えられるのではないだろうか。通常市場変動によって短期的に資金が必要になることは頻繁に発生するが、これをレポや短期の資金で賄えれば、手持ち資産を売却しなくても良くなる。または、社債が適格担保に入っていれば、それを担保に出せばよく、Fire Sellを行う必要はない。もっともCCPや海外の証拠金規制では、プライシングが異ならないよう、VMが現金に限定されているので、Fire Sellが起きてしまう。日本の証拠金規制上は変動証拠金に国債が使えるので影響は少ない。

資産、負債のデュレーションミスマッチが危機を増幅させたという反省から、金融危機以降はレポに対するRWAが上がり、レポの流動性が低下している。これが市場変動に拍車をかけているという側面もあるかと思う。米国では、レポのクリアリング規制が議論されている。

やはり、何とかしてレポの流動性を上げて、適格担保を拡大したり、銀行のコミットメントライン、保険などを使って、資産のFire Sellを起きにくくするような政策が必要なのではないかと思う。

SIMMの更新サイクルが年2回になる

先週ISDAから当初証拠金モデルのSIMMのパラメーター更新が現状の年一回から年二回に変更されるというアナウンスがあった。2025年からの変更になるが、年の前半の変更は上期中に決められ8月から実施、年後半の変更は下半期中に決定され、2月から実施となる。

2020年3月の米国金利、2022年の10月の英国金利の他、コモディティ価格の乱高下などが発生したが、その後かなりの時間が経ってからSIMMの変更が行われることに対し批判の声が大きかった。これを受けて今年はSIMM 2.5Aと称してオフサイクルのCaliburationが行われた。これは5月5日に公開され、7月15日から実施されたが、現場ではそれなりの混乱を招いた。

市場変動が大きかったためアドホックでモデルのパラメーター変更が行われるのは仕方ないのだが、やはり変更時には準備期間が必要である。その意味では年二回に変更して変更適用時期も2月、8月と決めておくのは、市場参加者の準備、当局への報告などを考えると望ましい変更と言えよう。

とは言え、証拠金の増額によるプロシクリカリティには根深い問題がある。例えば市場変動が大きくなり金利上昇したのだから、その分証拠金を増やすというのは当然なのだが、それによって保有する国債を売却して現金を捻出する市場参加者が増えると、さらに金利上昇が激しくなる。

このようなプロシクリカリティの問題の他に、増え続けるCCPの証拠金に耐えかねて、CCPから取引を移したいという参加者が出てくることが懸念される。また、相対取引であっても、有担保取引を無担保に変更したい、Thresholdを上げたい、CSAの条件を変えたいという要望が出てくる。

せっかく清算集中、証拠金規制によってカウンターパーティーリスクが減ったのに、証拠金の急増によって、脱CCP、脱担保取引の動きが見られてしまうという問題がある。これは非常に難しい問題であるが、適格担保の拡大やレポ取引の利用、銀行の信用状、保険など、個人的には様々な方法があると思っている。米国CFTCなどでは適格担保にこれまで禁じられていたレポを使ったMMFを加えるという提案がなされていたが、これもプロシクリカリティを抑える働きがある。

しかし、本来は激しい市場変動が起きないのが望ましい。それにはマーケットが一方向に動いたときに反対をとるディーラーやヘッジファンドなどの存在も重要である。規制によってこうした行動を抑えに行くと、流動性が枯渇し、市場変動が激しくなるということは、常に意識しながら規制の設計が行われることが望まれる。

すべてのリスクをヘッジすべきか

米国ターム物SOFRと後決めSOFRのベーシスリスクの話はその後あまり進展がないが、日本の感覚だとそもそも何故そんなに気にするほどのことなのかという意見も多い。ベーシスリスクがあるのは確かだが、それが極度に拡大する局面がそう何回もあるとは思えないうえ、たとえそれが起きたとしても放っておけばそのうち収斂するのではないかという意見だ。日々各種取引の時価評価が求められる金融機関は別として、一般的に時価を気にしない慣行があるからかもしれない。

コストが安ければヘッジするに越したことはないが、ARRCのガイダンス等の影響でヘッジが限られコスト高になっている現状では、わざわざ高いお金を払ってヘッジするほどのことはないというのも最もである。特にローンを時価評価していなければ、ターム物ローンは時価評価されず、ヘッジのスワップだけが日々値洗いされるため収益変動が激しくなる。先日海外でも、ヘッジコストを払うくらいなら何もしない市場参加者が増えているという記事があったが、当然の行動だろう。

日本の地銀等でもTIBORやTORFなどの変動金利指標で貸付を行った際に、それをTIBOR/TONAやTORF/TONAのベーシススワップでヘッジしているところはどれくらいあるのだろうか。事業会社なども、会計上損失が出ないケースが多ければ、このベーシスが広がったからと言って大騒ぎをするところも少ないだろう。

ただし、コストがかからないからヘッジをするのをやめようというのは、健全なこととは言えないので、バランスが重要である。特に昨今は規制によって様々な取引コストが上がってきているので、こうした行動を取るところが増えてきているのが気になる。金利のベーシスリスクなどはまだしも、例えば清算集中規制の対象とならないよう、スワップなどによるヘッジを減らして金利リスクを抱えているところがあるかもしれない。また当初証拠金のIM Thresholdである50億円を超えないように、取引量を調整しているところもあろう。

「コストがかかるからベーシスリスクをヘッジしない」というのと、「コストがかかるから金利リスクのヘッジをしない」というのは若干性質が異なる。清算集中規制や証拠金規制を避けるためにヘッジをせずに金利リスクを抱えたままになり、シリコンバレーバンクのような破綻が起きれば本末転倒である。

ここでも会計の問題が重要になるが、もしローンを時価評価していないのであれば、金利変動があったとしても何も起きないのではないかという点である。シリコンバレーバンクの場合は、金利上昇時に預金引き出しが起き、その資金を捻出するために米国債を売却せざるを得ず損失が発生した。しかし、こうした資金流出が起きなければ保有する米国債の値上がりを待てばよいということになる。

たとえば、昨年の台湾生保のケースのように、保有債券をすべて時価評価したら債務超過になるという状況はたまに発生する。しかし結局当局が会計計上手法を変更して債務超過を免れた。一見怪しい変更と思われるかもしれないが、資金流出がない限り生保が破綻するシナリオは考えにくい。海外では極力時価評価をしようという方向性になっているため様々な問題が起きるが、ヘッジ会計を多用したり、時価評価をしない方向を好む国では、こうしたベーシスリスクに対する感応度が異なってくるものと思われる。どちらが望ましいかはよく分からないが、どこか中間のような着地点があっても良いのではないかとも思える。

規制が流動性枯渇を助長した?

少し前のものになるが、7月にCFTCがマージン規制の当初証拠金の適格担保拡大を指示するコメントをしていた。このブログでも規制強化によってディーラーの体力低下が流動性の枯渇と、極度の市場変動をもたらしていることは何度か紹介してきたが、このコメントを読むとCFTCも「重大な金融危機は市場流動性の欠如によって起きた。」と述べられている。

リーマンショック後の各種規制、特に清算集中規制と証拠金規制により金融システムから信用リスク、カウンターパーティーリスクの削減が図られた。そして金融機関に十分な資本を積ませることによってシステミックリスクを避けようというものだった。これによって、金融機関の頑健性は高まり、連鎖倒産のようなシステミックリスクを軽減したのは事実であろう。

しかし、一つ気になるのは、米国債、英国債、各種コモディティなど、極度の市場変動が大きくなったことである。もちろん、コロナウィルス感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻といった特殊事情はあったが、現場の感覚からすると、市場変動が起きたときに、金融機関サイドはそれを静観せざるを得ないようになってきたように感じる。

最近では少し影響が少なくなってきたが一時期はボルカールールに抵触しないよう、こうした市場変動に立ち向かって反対の取引をすることが難しくなった。また、レバレッジ比率規制の影響などもあり、国債を買ったり、レポを提供すると資本コストが膨らんでしまうため、以前のようなサイズで取引をすることができなくなった。また、アルケゴス以降巨額損失を避けるプレッシャーが銀行トップに重くのしかかり、何か大きな市場変動があった時は、できるだけ何もしないようにしようという意識が銀行業界全体を覆っているようにも思える。

以前であればあまりにもマーケットが動けば、反対のポジションを取って収益を上げようという銀行ディーラーの取引が、一方向に動くマーケットのバックストップになっていたと思う。今ではこのようなことはかなり難しくなっているので、ヘッジファンドなどがそれを補っているが、ヘッジファンドの取引相手方となる銀行が保守的になっているため、あまり大きなサイズで取引ができない。

つまり、信用リスク、カウンターパーティーリスク、システミックリスクを減らすために規制強化を行った副作用として、市場全体の流動性が枯渇し、極度の市場変動が起きやすくなっているのではないかと思う。

おそらくCFTCもこのような状況に気づいていて、市場変動時に年金やファンドが保有資産を投げ売りしなくて済むように、適格担保の要件拡大などを推し進めているのではないだろうか。短期のレポを活用するMMFはCCPの適格担保ではないが、証拠金規制上は、適格とされていない。これはもともと当初証拠金にはリハイポ(担保の再利用)を認めていなかったため、レポを利用したMMFも平仄を揃えただけのように思う。

ただし、これで適格担保に認められるMMFは非常に少なく、実質的にはMMFは当初証拠金には使えないということでロビー活動が続けられてきた。これが認められると、確かに市場変動時の資産売却がマーケット変動を加速させた2020年春の米国、昨年2022年9月の英国の金利変動のようなインパクトを和らげることができるかもしれない。少なくとも、保有資産を急いで売却するという動きを若干でも減速させることができる。

このような変更をするとMMF市場の安定性を損なうという反対意見があるようだが、市場変動時に売却せずに担保に使えるようになるのだが、あまり
MMF市場の不安定化につながるとは思えない。コメント期限は10月10日だが、おそらくこのまま認められることになるのだろう。あまり日本には関係のない話かもしれないが、適格担保の拡大は、流動性リスクを減らすためのツールとしてこれからも検討されていくのだろう。

米銀にとっては更に資本コストが重要になる

米国G-Sibスコアをめぐる変更の中でもう一つ注目されているのが、スコアの刻み幅の変更である。これまでは、スコアが一定の閾値を超えると資本コストが0.5%一気に跳ね上がる計算だったところ、これを0.1%刻みに変更し、いわゆるCliff Effectを避けようというものである。

確かにそんなに大きく資本コストが跳ね上がるのなら頑張ってスコアを減らそうという動きがあったのかもしれない。多くの銀行がスコアの閾値上限近くに張り付いていたこともあったようなので、一定のインパクトはあるだろう。

米国の場合はG-SibスコアといってもバーゼルのMethod 1と米国独自のMethod 2があるのは以前紹介した通りである。Method 1は相対スコアなので、例えば全社のサイズが大きくなればスコアは上がらないが、Method 2は全社のスコアが上がってしまう。本来ではどこかで調整されるはずと聞いていたのだが、資本規制を緩めることに抵抗の強い米国では、見直しには困難が伴う。

また、今回はいくつかの計算項目において、一時点のスコアで判断するのではなく、期中平均を使うことも提案されているので、ますますG-Sibスコアをコントロールするのが難しくなる。

いずれも理にかなった変更なので、そのまま施行される可能性は高いように思うが、今後は資本コストについてさらに注意を払う必要が出てくることが予想される。と同時に異なるルールが適用されるほかの国の金融機関と比べた時の米銀のスタンスがどう変わるかにも注目が集まる。

デフォルトリスクの内部モデル

何かと話題になっているBasel III endgameであるが、米国ではトレーディング勘定で持つ社債のデフォルトリスク計算に内部モデルが使えなくなるというのが話題になっている。この提案がそのまま施行されれば、国債などの信用力の高い債券の取引にかかる資本コストが少なくなり、リスクの高い社債の資本コストが上昇する可能性がある。

バーゼルの内部モデル方式ではどんなに信用力が高くても0.03%がデフォルト率の下限となっていたが、標準法を使えば一定の当局承認のもとで0%に引き下げられる。一方標準法で資本コストが上がる投機的等級の社債などについては、取引コストが上がることになる。

様々な規制改革の流れの中で、自社でモデルを構築し、それを維持していくコストが高まってきている中、さらに内部モデルをあきらめるところが増えるかもしれない。こうした動きは銀行のリスク管理能力の低下につながり、単にサイズを減らす方向のインセンティブが強くなる。これが本当に金融業界のためなのか個人的にも定かではなかったのだが、ここまでくると、サイズは完全に無視できなくなってきた。もともとほとんどデフォルトが起きない先進国の国債などについてバックテストが有効なのかという議論もあった。

G-Sibの規模スコアや、清算集中義務や証拠金規制がかかる閾値、レバレッジ比率規制、カントリーリスクなど、すべてサイズが重要になっている。昨今ではリスクが高いからという理由ではなく、大きいからという理由で却下される取引も増えてきたように感じる。こうした中、リスクの高い社債から低リスクの国債などへのシフトを促す今回の変更はあながち悪いことではないのかもしれない。

内部モデルで精緻にリスクを理解することは引き続き重要だと思うが、ここまで内部モデルのメリットがなくなると、標準法のもとで何ができるかということを考える方が良いのかもしれない。FRTB導入を控え内部モデルをどうするか各金融機関とも分析を行っている最中かと思うが、ひょっとすると一部商品について内部モデルをあきらめようというところが増えてくるかもしれない。

サイズのみといってもコンプレッション、担保、ネッティングのようなサイズの削減も不可能ではないため、今後はポストトレード処理を高度化させて、現状の制約のもとでもリスク削減を行う努力を継続するのは重要になってきているように思う。

あとは米国が若干先走って様々な変更を発表しており、オリジナルのバーゼルIIIからの乖離が目立ち始めている。この辺りはLevel Playing Fieldを意識しながら国際間の連携が取られることが望ましい。

クライアントクリアリング業務は持続可能か?

米国のG-Sibスコア計算方法変更をめぐるアナウンスメントに注目が集まっているが、最大のサプライズは、クライアントクリアリングに関する提案だった。クライアントクリアリングには欧州で一般的なPrincipal Modelと米国で始まったAgent Modelがあるが、Principal ModelではCCPと顧客の間にクリアリングブローカーが入ることになるが、Agent Modelでは、取引自体はCCPと顧客の間に立ち、クリアリングブローカーはその取引をAgentとして保証するだけである。

従来G-SIBsスコアの計算上は、規模指標計算(相互連関性と複雑性スコア)に、Principal Modelの場合は対CCP、対顧客で2つの取引が存在するとして計算が行われる。一方Agent Modelでは、このような二重計算は行われなかった。このため、業界団体は、欧州のCCPでも、米国と同じようなAgent Modelを使えるようルール変更ができないか模索してきた。Principal ModelからAgency Modelへの変更が行われるのではなく、両モデルが並行して使えるような方向性が検討されているという話を聞いていた。LCHもAgency Modelを用意し、日本の顧客を含めてかなりのクライアントがAgency Modelを利用しているものと思われる。

ちなみに日本の場合は「取次」という方法が使われ、Principal ModelとAgency Modelの中間のような扱いになっており、どのような資本計算が行われるかは各銀行の判断によって異なる。しかし、概ねAgency Modelのような扱いをしているところが多いのではないかと推測される。

しかし、Agency Modelの計算方法が変わると、これまでの議論が白紙になる。日本のクライアントクリアリングをAgency ModelとしてG-Sib計算を行っていた銀行があれば、今回の計算方法変更に伴って日本の金利スワップ市場にも影響が及ぶかもしれない。

クライアントクリアリングを行った際に、銀行が対CCPの取引と対クライアントの取引の二つをエクスポージャーとしてカウントしなければならなくなると、現状のクライアントクリアリング業務の収益性では、業務撤退の動きが出てくるかもしれない。本来システミックリスクを避けるためにCCPが作られ、そのためにクライアントクリアリングによってほとんどの取引をCCP経由にするという目的のもと、相対取引からCCP取引へのシフトが起きた。

しかし、当初の予想と異なり、クライアントクリアリングにかかるリスクを思ったより考慮しなければならないルールになったため、クライアントクリアリングを提供するコストが上昇し、すでにいくつかの大手銀行がこの業務から撤退している。クライアントクリアリング業務を行うディーラーが減ると、たとえば大手顧客や大手銀行が破綻した場合には、誰もそのポジションを引き受けることができなくなり、CCP自体がToo big to failとなってしまう。

もしこのインパクトがG-Sibスコアのみに影響を与えるというのであれば、資本賦課は増加するものの、何とか吸収できる範囲なのかもしれないが、その影響度合いは各銀行によって異なる。また、どの程度その資本コストを顧客に転嫁できるかによっても異なる。その意味では何事においても最終価格に反映させるのが難しい日本へのインパクトも無視できないのかもしれない。コメント期間は11/30までとのことなので、今後の議論に注目が集まる。

社債担保の国債レポ

昨年9月のGiltショックで、多くのファンドが手持ちの英国債の売却を余儀なくされた。急激な金利上昇によって固定金利を受けていたファンドが金利スワップの負けポジションをカバーするために、現金担保の拠出を求められたからだ。

これを受けてファンド側では、担保契約であるCSAにおいて現金ではなく、国債や社債を担保に出せるようCSAの条件変更を銀行に依頼するところが増えた。だが、担保を変更すると取引自体のValuationが変わってしまうため、取引から損失が出たり、その後の取引のコストが上がってしまうというデメリットもあった。

今回BlackRock等が英国債のレポ取引の証拠金に社債を含むことを模索しているという報道があった。社債を担保に資金調達をする社債レポではなく、国債を担保に資金調達をする国債レポだが、その変動証拠金に社債を使えるようにしたというものだ。当然CSAでカバーされる金利スワップと同じようにレポについても担保条件が変わればValuationが変わるはずである。しかし、昔からレポ市場とデリバティブ市場の分断があったため、レポの担保に社債を使う方が受け入れられやすいのかもしれない。

当然理論的には全くおかしな話なのだが、当初CVAデスクができた頃は、通貨スワップや金利スワップからクレジットチャージの導入が進み、その後為替やコモディティなどの他の商品に拡がり、レポは蚊帳の外だった。レポの場合は、契約もISDAではなくGMRAで取引されており、別扱いされることが多かった。CVAトレーダーもレポに関してはコストをチャージするところは少なく、会計上もレポ取引にCVAなどの評価調整を入れているところは少なかった。当時は無担保取引にフォーカスが当たっており、ThresholdがゼロのCSAで行われる取引についてはCVAが無視されることも多かったので、レポについても同様の感覚だった。というよりはCVAトレーダーがレポ取引のリスクを取るところは少なく、レポトレーダーが自らリスク管理をしていたというのも大きな理由だろう。

その後CVAがXVAへと広がり、様々な取引についてXVAを考慮するのが一般的になり、当然レポ取引についても同じような扱いをするのが当然だろうということになり今に至っている。それでも、レポのヘアカットはデリバのIMより少なかったり、XVAを細かくプライシングする慣行がなかったりと未だに別扱いが継続しているところが多い。したがって、レポ取引の担保に社債を受け入れたからといって、Valuationを変えないところも多いのではないかと推測される。つまりISDA/CSAではできなかったことがGMRAなら若干の文言修正を入れれば簡単にできてしまうということである。BlackRockなどがこれを狙って社債の受け入れを進めているかどうかは定かではないが、意外と市場に拡がっていく可能性がある。

一応受け入れる社債にはA-以上といった格付制限があり、20%を超えるようなヘアカットが適用される。取引コストもそれなりに要求されるだろうが、それでも担保不足から突然資産売却を求められるよりはましである。社債レポによって直接ファンディングをするよりはコストが安いとのことである。市場が効率的であればこのようなことは起きないのだろうが、レポのXVA、当初証拠金の徴求(IM vs ヘアカット)、担保条件のプライシングなどが整合的に行われていないため、このような裁定機会が生まれてしまうのだろう。まあ短期だからValuationの違いは少ないため目をつぶってしまっても大きな影響はないというのが本音なのだろうとは思う。

G-SIBsスコアの計算方法のマーケットインパクト

7月28日に米国FRBから、G-SIBsスコアの計算に年末ではなく日々の平均を使うという提案がなされた。もともとレバレッジ比率などでは既に日々の平均が使われているので、これ自体は驚くことではない。これによって年末にレポが逼迫することがなくなるだろうが、常にレポのバランスを気にしなければならないため、全体としての流動性に対する影響を懸念する声も聞かれる。最速で2025年からの適用となるようだが、今後のマーケットインパクトにも注意が必要である。

特に気になるのが、金利スワップなどのデリバティブ取引に対する影響だ。金利指標がLIBORだったころはレポからの直接のインパクトはなかったが、現状ではRepoレートがSOFRのインプットになっているためレポ金利の変動はデリバティブにも波及する。金利変動が激しくなると、CCPのIMやSIMMのIMが増えることとなる。そしてその影響がしばらく続くことになるので、過度な金利変動は望ましくない。CCARなどのストレステストにも影響するので資本に対する影響もある。

最近のマーケットを見ていると、2020年春の米国債、昨年9月の英国債、各種コモディティの価格乱高下など、大きな市場変動が多発している。そしてこれらの市場変動が起きると、当初証拠金や銀行の資本充分性に対する懸念が高まる。証拠金の引き上げや資本規制強化をお行うと、更に銀行のマーケットメーキングが困難になり、市場流動性が枯渇し、更に市場変動が増幅するという悪循環になっているように思う。当然銀行破綻が起きてはいけないので、資本規制強化は避けられず、CCPの安全性が揺らいでもいけないので証拠金引き上げもやむを得ない。

なかなかこの問題には解決法が見つからない。個人的に考えられるのは以下のような策だろうか。

  • 価格統制(サーキットブレーカーや価格変動上限などによる市場変動の抑制)
  • 証拠金の負担分担拡大(銀行のコミットメントラインや保険会社の利用)
  • 介入(為替介入や日銀の国債買い入れなど)
  • 証拠金決済期間(MPOR)の短縮(ブロックチェーンなどを使った決済の高度化)

いずれも完璧な解決法ではないのだが、このまま証拠金や資本賦課を上げ続けていくと、どこかで限界が来るような気もしている。その意味では過度の市場変動を避けている日本というのは、優等生なのかもしれない。SIMMにおいても円金利は低ボラティリティに分類され証拠金負担が少ない。過去に過度な変動がないのがその理由だが、これが円金利スワップの取引コスト抑制につながっている。米国や英国と比べると市場変動に対する懸念と対策強化が進んでおり、これを市場操作と批判する声もあろうが、デリバティブ市場には好影響を与えているのは確かである。

あとは商業銀行や保険会社による負担の分散化である。そもそもデリバティブ市場参加者は何かあった時に巨額の現金を負担することに長けていない。こうした極端なマーケット変動に備えてコミットメントラインを持っておくのも重要な解決策の一つとなり得る。特にCCPなどでは銀行の信用状(LC、LOC)を適格担保にしているので、実際に現金を動かすことなく商業銀行が資金仲介の役割を果たすことになる。保険会社がこの支払いを保険でまかなうこともできるかもしれない。

上場商品であればサーキットブレーカーや、ニッケル問題の後に導入されたLMEの日々の価格制限なども過度な市場変動を抑える効果はある。如何せんマーケットでは過剰反応やオーバーシュートが起きがちなので、ある程度の対応は正当化されよう。

最後の決済期間短縮は技術的な解決策である。現状のように10日分のリスクをベースに証拠金を決めたり、資本規制を強化するのではなく、担保決済やクローズアウトに至る期間を短縮化することによって、証拠金水準を下げようというものである。

いずれもかなりの紆余曲折がありそうだが、証拠金や資本規制強化による対応だけではそろそろ限界が来そうな気がする。

CDSのDC問題

以前から問題にはなっていたが、CDSのDC(Determination Committee)のバイサンド参加者が減っていることがニュースになっている。DCはCDSのBig Bangによって設置されたデフォルトの認定を行う決定委員会(Credit Derivatives Determinations Committee:DC)である。以前はこのクレジットイベントの認定は当事者間に委ねられていたが、これをDCの下で業界横断的にクレジットイベント認定するようになったものである

導入当初はメンバーになるべく働きかけを行っていたところもあったようだが、結局このような公の場で自分のポジションに有利な主張をするのは難しく、特に規制やコンプライアンスの厳しい銀行では、当然トレーディングポジションに基づいた発言ができないよう、法務部門担当者がDCに参加し、トレーディング部門との情報遮断も行われた。

初期の頃はフロント部門でも議論の内容に興味を持つものが多かったが、結局議論をするというよりは法律の解釈に従って決定するだけなので、次第に関心が薄れていった。コンプライアンス的に問題にならないよう慎重に外部弁護士と相談するところもあったが、結局これにはコストがかかり、業界のためにコスト負担をするという側面が強くなっていった。当初はCDS取引に詳しいフロントやオペレーション部門の担当者の参加もあったように記憶しているが、今ではほとんどが法務部門の参加者になっており、CDSの市場について議論をするというよりは法的な文言についての議論が大半を占めているものと思われる。

ここまでくると、各社から代表を送る意味があるのかという議論も持ち上がり、本音を言えば抜けたいというところが多くなっている。結局この情報を使って取引を行い利益を得ることは不可能であり、自分のポジションに有利なように議論を誘導することも不可能である。LIBOR問題などもある中、参加者間で結託して議論の方向性を変えようと思うところがあるとは考えにくい。一方準備や法的分析、社内コンプライアンス対応なでのコストは大きい。業界でコストを出し合い、法律事務所などにアウトソースしても良いのではないかと思う。

委員会の構成としては15人のうち5人がバイサイドとなっているが、今ではこのバイサイド席の2つが空席になっていると報じられている。公平性を期すためにバイサイドを加えたのだろうが、銀行ではないからといってポジショントークができるとは思えず、銀行のような大規模な法務コンプライアンス部門を持たないところにとっては、負担が大きすぎるのだろう。このような状況でバイサイドが法律主体の議論に参加できるとは思えず、参加自体に意味がなくなっているように思う。

そういう意味ではCCPの破綻管理委員会なども同じで、業界を支えるために銀行から出席者を送らざる得ず、税金や参加料のようなイメージになっているのだろう。昨今の規制環境下においては、レートを提出したり、市場にインパクトのある事柄に意見するようなことは極力避けたいというのが銀行の本音であり、そこで市場操作を画策することは不可能である。銀行サイドでは、こうした委員会への参加について厳しいポリシーを策定しており、その発言内容も細かく精査される。DCについても早晩見直しの議論が持ち上がることになるのだろう。

TPRM (Third Party Risk Management)

通信記録保持義務違反に関連してNFRの強化が図られているという記事を昨日Postしたが、同様に外注ベンダーなどのリスクを管理するTPRMもグローバルでは必要以上に厳しくなっているものの一つである。

コンサルティング、各種業務委託、会計、税務、IT、データー入力といった外注のほかに極端に言うと清掃、受付、警備など様々な外注が行われている。10数年前であれば、便利なサービスがあれば使ってみてその意義を検証するということが容易にできたが、昨今では、こうしたベンダーから膨大な資料の提出を求め、厳密な審査とレビューを行わなければサービスを利用することができない。

通常こうしたベンダーの中にはベンチャー企業も多く、膨大な資料提出に対応が難しいところも多い。たとえ手間とコストをかけて、その資料をすべて提出したとしても採用されるとは限らず、結局大手独占を助長してしまうように感じる。

リーマンショックやアルケゴスショックなどを経て、Finandcial Riskのリスク管理強化が行われるのは理解できるのだが、最近はありとあらゆることを規制で統率しようとしているため、技術革新の妨げになっているように感じる。NFRやTPRMを担当する人員も数多く採用しているので、当然担当者は真面目に仕事をしようとする。こうして社内の統制がどんどん厳しくなっていく。

まだ日本はましだと思うのだが、海外業務を手掛ける場合は、先日の通信記録保持違反の罰金のように影響を受けてしまう。

今回は6/6に米国当局からTPRMに関するガイダンスが出されており、特にフィンテックに関する締め付けが厳しくなりそうだ。今回のガイダンスは、最近の流行りではあるのだが、リスクベースアプローチが取れらているため、何が許容され、何が禁止されているかという細かい規定はない。銀行が自ら考えてコンプライアンスプログラムを作成し、問題が起きないように考えてほしいというガイダンスだ。

ある意味正しいやリ方なのだが、こういった場合に問題になるのはいわゆる「横並び」の必要性である。通常こうした新しい規制が始まるとコンサルティング会社などがアドバイザーとして入り、そしてコンサルには各社の対応状況が蓄積され、何となく業界スタンダードが出来上がっていく。しかしこうしたコンサルを使っていないと、いつの間にか自分だけがOutlierになっていまっているということもありうる。特に米国外の銀行の場合はなおさらだ。

米国では、これを受けてコンプライアンスプログラムのレビューが進んでおり、小規模のフィンテックが市場から締め出されているという報道も見られる。

リスクベースアプローチをとっていると、銀行によってはすべての点において保守的な対応をするところも出てくる。そうすると、これまでのように、革新的なサービスを思いついて起業したとしても、コンプライアンスの負担に耐えかね、どこからも契約が取れないということもありうる。いずれにしても、あらゆる規制が金融業界にInnovationを起きにくくしているように思える。とは言っても米国規制の影響は無視することはできないので、日本の金融機関もある程度の対応をしておかないと、突然罰金をかせられるということにもなりかねないので注意が必要である。

Non Financial Riskの重要性の高まり

海外の金融機関においては、様々な仕組みが業界横並びで導入されることが多く、以前であればXVAデスクなどの構築が業界全体で進められたが、昨今ではNFR(Non Financial Risk)に関する部門を作るところが増えてきた。特に米国では、ある程度当局の指導が入るのと、転職が多いため同じような部門が同時期に作られたりすることが多いが、最近はNFRリスクマネジャーの募集広告なども数多く見かけるようになってきた。

NFRとは文字通りNon Financialなので、市場リスクやカウンターパーティーリスクなどのようにVaRやストレステストなどによって計量的に分析するリスクではなく、もう少し定性的な要素が大きくなる。もともとバーゼルでオペレーショナルリスクの定量化の流れの中で、定性的管理と定量的管理を分離した上て定性的なリスクを一元的に管理するようになってきており、これを担当するのがNFRということになっている。

日本語では非財務リスクと訳されるのだが、何となくこの訳はしっくりこない。市場リスクやカウンターパーティーリスクを財務リスクとしてまとめることに違和感があるからだと思う。いずれにしても、このNFRはこれまでのオペレーショナルリスクとは異なり、コンダクトリスクやコンプライアンスの側面が大きくなる。

別の記事に書いたWhatsAppを使った通信記録保持違反などもこのNFRの範疇となる。これが100億円ちかくの罰金につながることがあるので、無視できない水準になってきたため、それを専門的に管理する部署を作ろうということだ。その意味では当局の規制が作り出した部署と言えなくもない。このほかにサイバーリスクや、危機管理に関するリスクもNFRの範疇となる。

このNFRを3線管理と結び付け、フロントの1線にNFR担当を置くところが多くなってきた。2線は特に新たな部署を作るというよりは、リーガル、コンプライアンス、2線のオペレーショナルリスク担当がカバーするところが多い。このように外資系ではNFRの認知度が上がりつつあるが、日本の罰金がそれほど大きくないので、わざわざ日本ではリソースを割くまでもないかもしれない。しかし、ここまで規制がボーダレスになってくると今回の通信記録の件のように海外現地法人が巨額の罰金を科せられることにもなりかねない。過去の流れを見ていると今後は日本の金融機関でもNFRというファンクションの拡充が図られていくことになるのかもしれない。

個人携帯利用に対する当局の温度差

個人用携帯で顧客とやり取りをすることがグローバルで禁じられてから5年くらい経つが、さらなる制裁金のニュースが出ており、今回はSMBC Nikkoやみずほ証券の米国法人も罰金の対象となっている。

5年前にグローバルで指導が入った時は、ここまで厳しく規制されるとは思っておらず、現場でも禁止命令を重く受け止めない風潮もあり、顧客からWhatsAppやインスタントメッセージで連絡が来てしまうから仕方がないではないかという反発も強かったと報じられていた。

しかし、そのうちに多くの金融機関従業員がこれを理由に解雇されるというニュースが増え、疑わしい行為は避けるという意味で、個人用携帯の利用は全面禁止としているところが多くなった。日本では営業担当と顧客がLineでつながることも多く、長年の顧客になると友人と顧客の区別もあいまいになり、今度飲みにでも行きましょうか、ゴルフでも行きましょうかという連絡が入ってしまうこともあるが、これも完全にアウトとしているところが多いだろう。

最初のうちは、顧客からLineが来てしまった場合は、会議に少し遅れますといった業務外の内容ならOKとか線引きをしていたが、これをいちいち判定する方も面倒で、そのうち顧客から仕事関係の内容が来てしまうこともあるので、今では全面禁止としているところが多いと思われる。それほど米国では通信記録が残せないというのは一大事として扱われている。日本では規制でここまで問題視されるという雰囲気はあまり感じられず、金融機関のみならず業務にLineなどを使っているところはかなり多いものと推測される。

インスタントメッセージを会社で記録できるようにしたりという努力も行われてきたが、日本は通信事業業者に通信記録保持の義務がないため、実質的には不可能である。

この辺りは、国の仕組みに応じた柔軟な対応をしてもらえると良いのだが、こと通信記録に関しては米国のやり方がスタンダードになりつつあり、日本人的には信じられないような他愛のない会話が大問題に発展してしまう。罰金の金額も日本の罰金に比べると格段に大きい。

電話の録音ももちろん、Zoomなども海外金融機関では記録できるようなカスタマイズをしているところも多い。それを何か問題があった時はすぐに当局に提出できるようにしておかなければならない。日本の金融機関でも、特に海外ビジネスを手掛けるところは、こうした仕組みを構築しておいた方が得策だろう。

レポ取引のヘアカット問題

CVAの黎明期は、金利スワップ、通貨スワップなどのデリバティブ取引を中心にチャージを計算しており、その後為替、コモディティと対象を広げてきた。その中でレポについては歴史的にCVAという概念がなかった。したがって、レポのカウンターパーティーリスク管理のみ担当部門が異なっていた銀行が多いものと思われる。

昨今ではすべてのプロダクトを扱うようになったため、スワップのIMに相当するレポのヘアカットも同じような計算をした方がよいという話が出てきている。しかし、レポに関しては昔からの慣行で国債のレポは2%とか5%のように単純に決まっており、金利スワップのように、年限毎に異なるIMを取ることが難しいことも多い。また、証拠金規制のように双方が担保を出すというよりは、一方のみが担保を出すような形になっている。

とはいえ、10年スワップのリスクと10年Underlyingのレポのリスクはほぼ似たようなものなので、本来はスワップのIMと10年債参照のレポのヘアカットは同じようなレベルになるはずなのだが、相対取引だと過去の経緯もありこれがなかなか難しい。

一方CCPでクリアリングする取引の場合は、同じようなVaR方式を使っているため、IMは同じくらいになっている。したがって、レポをクリアリングすると必要担保額が増えてしまうので、相対で取引をしたいという市場参加者が増えてくる。レポに清算集中規制がないのでなおさらである。資本コストを気にする銀行サイドとしては相対でレポを行うとバランスシートを使い、レバレッジ比率の悪化を招くので取引がしずらい。こうして世界で最も流動性があるはずだった国債のレポの使い勝手が悪くなり、ひいては国債の価格変動や流動性低下を招くことになってしまう。

特に、昨年大きな金利変動のあった英国債のレポの担保が著しく引き上げられている。長期の物価連動国債のIMに至っては25%にも達すると言われている。相対でレポをすればヘアカットは2%なので、極力クリアリングを避けようという市場参加者が増えても不思議ではない。

通常はProcyclicalityの観点から、IMが急激に上がったり下がったりするのは望ましくない。そのため、Volatiltyにフロアを設けたり、過去最大の市場変動や架空のシナリオを追加することにより、市場が落ち着いた時にもIMが下がらないような仕組みが検討されてきた。今回は全く逆で、Giltショックによって上がりすぎたIMを何とか早くもとに戻せないかということでLCHが何らかの変更を検討しているとのことだ。

ただ、あまりにIMの水準を低くすると99.99%のように決めたバックテストの基準を下回ってしまうので、バランスを取るのが難しい。だが、25%のIMというのはかなり大きく、クリアリングを使うインセンティブがなくなってしまうことから、これを引き下げるような変更が行われると予想される。やはりリスク管理の基本に立ち返って、Expected LossまではCVAでカバーし、99%などのテイルまでは担保でカバーし、それ以外は資本(CCPの場合は清算基金)でカバーするというのが王道なのかもしれない。

中国の金利スワップ市場

中国の金利スワップクリアリングであるSwap Connectが5月に稼働して2か月が経過したが、相変わらず取引量が伸びていない。相対取引に使う中国版ISDAのNAFMIも結構交渉が面倒で、全てをISDAのコンセプトに置き換えて現地の法律事務所を使って精査しなければならないので時間がかかる。仕方がないのだろうが、単純にISDAを使ってくれればどれほど楽になることか。

クリアリングが伸びない問題点の一つとして、金利先物のように満期がある程度決められており、取引解約がしにくい点が挙げられている。事業会社のように長期でヘッジする場合には問題ないだろうが、こうした会社がSwap Connectを利用するとは思えず、メインのユーザーは年金基金、資産運用会社などの頻繁に取引をする市場参加者が中心となる。

こうした市場参加者は、一旦取引をすると、ある程度の収益が確定したところで同じ満期、同じ固定金利で反対方向の取引を入れる。そして、完全にオフセットする取引が二つ残るが、それがCCPの日々のプロセスによって解消されるのが一般的である。もともとの取引を解約しても良いのだが、取引のブッキングプロセス上、新規の反対取引を入れてから消した方が新規取引と同じプロセスが使えるため、オペレーション的に容易であるためである。JSCCもLCHもこのプロセスを採用している。

しかし、中国の場合は10年固定受け金利スワップといった決まった年限の取引のみが可能なので、半年後に解約しようとしたら10年の固定払い金利スワップを行うことになり、その時点では9.5年固定受けと10年固定払いの二つが残ってしまい、それを打ち消すことができない。コンプレッションの高度化などによってこれを消滅させることも可能かもしれないが、基本的にはこれらのスワップが10年間残り続けることになるため資本効率が悪く、9.5年と10年のベーシスリスクも負い続けることになる。

とは言え、以前の日本も似たような状況で、スワップを頻繁に受け払いして金利リスクをマネージするヘッジファンドのような市場参加者は少なく、資本コストに無頓着ということも相まって、コンプレッションのニーズも理解されなかった。MACスワップなどの利用も、ほとんどが海外ファンド系で、国内参加者のなかで、これを真剣に取引しているところは少ない。それでも円金利を取引する海外投資家が多かったため、何とかグローバル並みの仕組みができており、最近少しづつ増えてきた国内系ファンドや金融機関などもこの恩恵にあずかっている。

おそらく中国においても、早晩こうした問題は解消されていくことになるのだろうが、JSCCを含む他のCCPに比べると、ユーザーのニーズにタイムリーに応えながら柔軟に仕組みを変えていくという点においては、今一つといった感はある。それでも、2国にまたがるCCPの相互接続を成し遂げ、以前に比べると格段に金融市場の進歩が進んでいるので、今後の進展に期待が集まる。

Basel III End Game

米国当局がバーゼルIII最終案を木曜に公表したが、これによって米銀大手行のRWAが20%増加するだろうというアナリストレポートが出ている。当初は12%程度の増加と言われていた記憶があるので、想定外に膨らんでいるということなのかもしれない。

この資本賦課の増加を賄うために、3から4年の収益を積んでおかなければならないとの分析だ。特にトレーディング業務の比率の高いGSやCitiに影響が大きいとコメントされている。JPMやバンカメは資本蓄積にかかる期間が2年未満とされており、影響は少なくなっている。FRB副議長のスピーチの中では2年というコメントがあったので、それほど大きな違いはない。

Bloombergニュースでも、米銀大手8行の資本増が19%と報じられており、20%との乖離は少ない。また、シリコンバレーバンクなどの地銀ショックを踏まえて、規制対象範囲が総資産1000憶ドルを超える銀行に拡大されおり、こちらの資本増加は16%と報じられている。FDICも対象となる銀行持株会社のティア1資本について、全体で16%の資本増強が求められるとコメントしている。先週別のニュースでも、この新規制によって、米銀6行の余剰資本が1180億ドル失われると報じられており、米国では大きな関心を集めている。

バーゼルIII Endgameと題されるこの一連の改革が施行されるのは2025年1月からだが、一定の移行期間があるため完全移行は2028年7月1日とされている。今回の最終案のコメント期限は11月30日になっているため、詳細な分析をしてコメントをまとめる作業が必要になる。日本でも資本対比の収益性に対する関心がようやく高まってきたように思うが、日本の金融機関への影響も予想される。金融機関の将来像を占ううえで非常に重要な変更なのだが、今一つ内容が分かりにくいためか、専門家が少ない。SA-CCR導入時もそうだったが、あまりよくわからないまま施行開始に突入し、それから突然プライシングが変わるということになるかもしれない。