米国債取引の清算集中規制はとん挫するか?

SECが米国債の清算集中義務化の議論を延期するという記事が出た。個人的にはCCPでの清算は望ましいと思っているのだが、これはデリバティブ取引やレポ取引のようなカウンターパーティーリスクを取る取引に関してのもので、国債のキャッシュ商品の売買に関して清算を義務付けるのが、市場の安定性と効率化につながるのかよくわからない。どちらかというとマージンや清算基金のコストが高すぎて全体としての効率が悪くなってしまうのではないかと思う。

年内には詳細がまとまると言われていた米国債の市場改革プランであるが、各方面から異論が噴出しているため、来年第一四半期に結論を先送りすることになったようだ。もともとのプランとしては、過去6か月のうち4か月において、米国債の取引量が$25bnを超えた場合は、一連の資本規制と報告規制をかけるというものだった。ある程度の取引を行うヘッジファンドなどが対象となるため、そうした会社が$25bn以内に取引を抑えようとすることにより、市場流動性に悪影響が及ぶと懸念されていた。

個人的にもこの懸念はもっともだと思っており、規制が強化されるのなら取引量を抑えようというのは当然の行動である。昨今はカウンターパーティーリスクや資本不足の懸念よりも、市場流動性が枯渇してることが最大のリスクだと思う。この状況下でさらに流動性を悪化するような規制は極力避けないと、米国債市場の価格変動がさらに大きなものになる可能性がある。昨今の価格急変はSVBショックを引き起こし、米国債の取引量の多い日本の機関投資家も痛手を被ったところが多いので、日本としても無視できない。

昨今の流れだと来年の第一四半期にルールの最終化ができるとは思えず、いったん仕切り直しになる可能性も高いと思っている。