金利が動いたときに自動的にレポをする取引

もう10年くらい前に書いた記事だが、担保契約の違いを利用してレポ取引をする方法を紹介したことがある。英国のギルトショック時に担保拠出のために国債の売却を余儀なくされたアセマネが多かったことから、今般この手法についての報道が見られた。Collateral Switch という名前で紹介されている。

仕組みはいたって簡単だ。以下のようにBack to Backで金利スワップ(IRS)を行い、金利変動時には現金をA銀行から受け取り、国債担保をB銀行に出せるようにしておけばよい。Back to Backなのでマーケットリスクはゼロだが、カウンターパーティーリスク、IMコスト、資本コストがどれくらいかかるかは確認しておく必要はある。

自社がA銀行から固定金利を受けるIRSを行えば、金利低下時にA銀行に勝ちポジションを持つ。そしてA銀行から現金担保を受け取る。反対のB銀行に対しては負けポジションとなるので、国債を担保に出す形になる。

逆にA銀行に固定金利を払えば、金利上昇時にA銀行から現金担保を受け取り、B銀行に国債を出す。つまりギルトショックのような金利上昇時に国債を現金に換えるというレポ取引が自動的にできることになる。金利変動時に必要になる担保金額に応じてIRSのサイズを調整すれば、金利上昇時に現金が足りなくなって国債を売却する必要がなくなる。もちろん、金利が想定と逆方向に動いた場合には国債を受け取って現金を拠出しなければならない。

だが、このような仕組みを作っておけば、金利上昇時に突然レポで現金を取りに行ったりする必要がなくなるのでメリットは大きい。

こうして考えると完璧な仕組みのように思えるのだが、10年前に提唱した時は、ほとんどこれを実行に移すところは見たことがなかった。良い案ですねとは言われるのだが、実際に普段必要もないスワップを執行するまでではないという反応だった。しかし、ギルトショックを経て担保売却を余儀なくされたファンドの中では、今回こそ本気で検討しているところがありそうだ。

これは何も金利スワップだけでなく、為替やコモディティでも可能である。CCPとの取引、SwapAgentとの取引なども組み合わせて、あらゆる取引を最適化することも可能だ。現金以外のCSAはコスト高になる傾向があるが、国債や社債担保に抵抗感のない中堅銀行、日本、韓国、中国などの銀行と取引をすれば比較的安く取引ができる可能性はある。逆に言えば、銀行サイドはこうしたコストを取引にきちんと反映しておく必要がある。