台湾における清算集中規制

台湾の金利スワップの清算集中規制を控えて、台湾のTaifex(Taiwan Futures Exchange)のクリアリングブローカーが増えているとの報道があった。将来的には清算集中規制がNDFにも拡大するという声も聞かれる。清算集中規制は早ければ来年にもアナウンスがあるとのことだ。台湾のNDIRSはすでにLCHでクリアされているが、Derivalable IRSはTaifexのみの取り扱いとなっている。

Taifexはすでに欧州ESMAからティア1の域外CCPとして認証されており、日本でもCCPとしてのライセンス免除を受けている。USに対しては、JSCCと同じExempt DCOのStatusの申請を行っており、英国など他の国でも同様の認証や免除を取るべく準備を進めている。

これは当然歓迎される動きだが、やはり何といっても主戦場はNDFだろう。特に台湾では、生保を中心にかなりの米債を保有しており、そのヘッジのために短期の為替スワップによるヘッジ取引が活発に行われている。大手生保では、資産のうちの約7割が米債となっており、そのヘッジとしてオンショアの為替スワップとオフショアのNDFでヘッジをしている。グローバルバンクからすると、これはForwardでTWDを売る取引になるので、TWDに危機が発生すると、台湾企業の業績が悪化し、TWDが減価するため、Wrong Wayの取引となる。

特にロシアの例があってから、Capital Controlなどに対するリスクを精査する必要が生じ、米中関係が悪化する中、台湾に対するエクスポージャーにも注目が集まりやすい。ただし、これがCCPに移ったからと言って、台湾のCCPに対するForwardのTWD売りは、Wrong Wayとみなすところもあるものと予想されるため、どの程度の効果があるのかは定かではない。とは言え、相対でカウンターパーティーリスクを抱えるよりは対CCPに対するエクスポージャーの方がリスクが少ないとは言えよう。

最近こうした変化が急速に起きているため、今後の台湾の清算集中規制の動向にも注意が必要だ。

米国で銀行の支店が増え始めた?

オンラインでの取引が増える中、銀行が支店を減らし続けていると思っていたら、米国ではJPMやバンカメが支店を増やし始めている。

今般JPMが今後3年間で500支店増やすと発表した。懐疑派が多い中、2018年頃から支店新設のプランを掲げテストしてきたが、その間に支店を650増やし、期待以上の成果を上げているとのことで、さらなる支店新設を計画している。そして現在全米約12%の預金シェアを20%にまで高めるとのことだ。

ただし、同時に不採算支店の統廃合や非効率な店舗の閉鎖も行っている。新規出店は、これまでカバーできていなかった州や地域への進出が中心になっているようだ。バンカメも同じような目標を掲げていることから、今後は支店の重要性が見直されていくのかもしれない。

確かに預金、支払い、送金などは全てオンラインで完結するので、こうした事務取引のために支店を訪れるメリットは少ないだろう。今後は、JPMが言うようにTransactionからGuidanceへという標語がキーになると思う。特に法人はやはり支店が近くにあることが重要になっている。また富裕層向けにウェルスマネジメントサービスを行うには、支店が近くにあった方がきめ細やかなアドバイスができる。

日本では法人を設立するときにメインバンクを選ぶには、やはり近くに支店があるということが重要になってくる。特に日本では法人営業と個人営業が分かれているため、法人の場合はどこの支店でも取引ができるという訳ではない。最近では法人専用支店が統廃合されたりして、かなり不便になってきている。

NISAでも、慣れた人ならネットで完結するが、初めての投資家などは支店である程度のガイダンスを受けた方が安心できるだろう。

当然こうしたサービスは付加価値が高く、単なるTransactionに比べると銀行にとっても収益が大きい。個人だと振込手数料などは無料だが、法人だと結構取れる。法人の場合は、手数料が高くても決算や税務処理の関係でその銀行口座から取引をすることが多い。個人事業主や小規模法人て副業的にビジネスを行う人も増えてきていることから、日本でも支店の意義というのを見直しても良いのかもしれない。

米国債市場の規制強化が進む

今週はSECから矢継ぎ早に規制改革案が出ているが、いずれもゲンスラー委員長らしい内容である。CFTC長官時代にデリバティブ取引に対して行ったことと同じことを米国債市場にも適用しようとしている感がある。

まずは、Proprietary Tradingを行う会社に対して、ブローカーディーラー登録を義務付け、大手行並みの規制をかける方針が示された。SECの5人の委員のうち共和党の2人を除く5対3での可決のようだ。この辺りの力関係を見ていると、トランプ大統領となれば規制緩和に舵を切るかもしれないことを示唆しているようにも見える。私募ファンドや投資アドバイザーに対して取引報告を義務付けることとしている。

とは言え、Citadelなどの新たなプレーヤーが米国債市場において急速に存在感を高める中、さすがにこのセクターを無視し続けることはできないというのも一理ある。

では、誰が登録義務を負うかというと、基本的に取引量によって対象が決まる。過去6か月のうちに$25bnを超える取引をしている場合に登録義務が発生する。現状だと43社が対象に含まれるようだ。業界では、これが生保や年金などのリアルマネーにまで対象が広がってしまうのではないかという懸念が広がっている。

確かにこの$25bnという閾値を超えないよう取引を控えるところが出てくると、米国債市場の流動性低下につながるかもしれない。

これとは別に、CFTCのリアルタイムレポーティングと同様、米国債取引に対しても取引報告を求める規制案が2/7に公表された。カレント銘柄のみではあるが、取引時間、価格、売り買いの別、出来高がすべて公表されることになる。デリバティブ取引のリアルタイムレポーティングと同じように、サイズの大きなブロック取引や、サイズをXXドル以上として公表するなどの免除措置はあるようだ。

当面はリアルタイムでの報告は行わず、End of Dayでの公表となるが、将来的にはこれをIntradayに変更し、Off the runの銘柄にも対象を広げたいとのことだ。

米国債市場については、決済期間短縮、清算集中、登録義務、報告義務と矢継ぎ早に規制強化が行われている。デリバティブ取引で起きたように日本国債についても変更が起きるのだろうか。