砂漠へ行こう

38915。バブル世代の金融マンには忘れることのできない数字であるが、ついにこの数字に日経平均が到達した。また、終値ベースの38915円のみならず、日中の最高値だった38957円も超えた。

ここまで来ると、乗り遅れる恐怖感からか、海外投資家からの問い合わせがひっきりなしに来るという証券マンの悲鳴が報道されている。各メディアとも景気の良い話のオンパレードだが、Wall Street Journal が若干冷静な分析をしている。

まず日経平均はダウ平均株価と同じように、単純平均で、225銘柄の株価合計を225で割ったものである。つまり1単元あたりの株価が高い値がさ株の値動きに影響を受けやすい。ダウ平均は30銘柄ということも重なり、米国では時価総額を加重平均したS&P500の方に注目する投資家が多い。

日経225には配当金が含まれておらず、インフレの影響も考慮されていないので、本来長期的な変化を図るにはあまり適切ではない。WSJでは日経平均はFlawed Measure(欠陥のある指標)とまで言い切っている。確かに株価は、発行する株式数によって変動するので、恣意的に決まるという側面がある。

とは言え、日経平均先物がより優れたTopix先物に比べてここまで広く取引されているので、誰も日経平均を無視することはできない。確かに問題のある指標をベースにここまでの資金が動くというのは不思議なものである。ではTopixで見るとどうかというと、まだ過去最高値の2884円からは8%程度低い。つまり日経平均が過去最高を超えたといってもそれは象徴的な意味しか持たない。

配当についても、50年前に100ドルを米株に投資していたら62倍になったが、配当の効果を含めると250倍になっていたとのことである。米国より配当性向の高い日本ではこの影響は大きくなる。この観点からは、日本株のリターンはもっと良かったということになる。

また、日本はデフレだったので、資産価値が他国より下がっていないという面がある一方、インフレ調整後でも日本株のパフォーマンスは海外より低い。通常デフレが引き起こす通貨高も起きず、むしろ円安が進んでいる。

とは言え、最後はデフレマインドからの脱却、企業ガバナンスの向上、企業収益の向上など、明るいニュースが多い中、今回の株高は素直に喜んで良いのだろうと結んでいる。確かにバブル期と比べてもPERもそれほど高いわけでもなく、とてつもなく割高とは思えない。今後も日本が変わったとみなして参入する海外投資家も増えてくるだろう。