米国不動産ローン危機はさらに拡大するか

入居率低下と金利上昇圧力にさらされている米国の商業用不動産市場の低迷に対する懸念が再燃した。これは昨年の地銀ショックに続く危機になるのだろうか。

Covid19による在宅勤務が進み、オフィス需要が減退するとともに、金利上昇による借入コスト上昇が追い打ちをかけた。ほとんど通常勤務に戻りつつある日本やその他のアジアとは異なり、欧米では在宅勤務がそれだけ定着したということなのだろう。オフィスの入居率が戻ってきた日本とは大きな違いである。

今年は、これまである程度の猶予があったコロナ関連融資の延長が終了するので、新たに資金調達をするか、物件売却を余儀なくされるかもしれない。価格が急落した時に資産を売れば、昨年の国債売却と同じような状況になる。特にNYCBはわずか2件の不動産融資から$185mmの損失を出し、貸倒引当金を$500mm以上積み立てている。

こうした危機時には安全資産である国債に資金が向かうので、金利が下がるのが一般的だが、雇用統計発表までは、パウエル議長のコメントにもかかわらず金利低下が続いていた。ここで注目されるのが、FEDが流動性供給プログラムを用意するかどうかである。

昨年3月はリスク管理者にとっては極めて忙しかったが、今のところ昨年ほどにはならないという空気が流れている。ただ、どこから第二のNYCBが出てくるかわからないので油断はできない。米国のマスコミはあおぞらとドイツ銀の損失にも触れているが、若干性質が違うように思う。とはいえ、米国でもこの問題はNYCB特有という見方をする人が多くなってきているようだ。

ここで危機がそれほど大したものではないということになると、米金金利が上昇し、また1ドル150円に向けた円安が進むのだろうか。