米銀の変化に見る金融の方向性

米銀決算が好調である。マイナス金利、規制強化、マージンの縮小と色々なマイナス要因は挙げられるが、この10年で米銀の収入は拡大し、ROEも上昇、収益性は高まっているように見える。だが、特に好調なのは預金取扱銀行であるJPM、BAML、CITIである。規制対応、電子化等規模の経済の働く分野の重要性が増したということもあるが、今後はコマーシャルバンクの時代なのかもしれない。2000年くらいには、5大銀行の時価総額はほぼ横並びだったのが、現在でがJPMの時価が突出しており、BAML、CITIと続く、Wells Fargoなどもスキャンダルがなければもう少し好調だったかもしれない。一方マーケット業務を中心とするGS、MSの時価総額は回復したとは言え、コマーシャルバンクには及ばない。

GSはMarcusやAppleとのパートナーシップでコマーシャルバンクに参入を図っており、MSはWealth Managementへのシフトを進めている。やはりトレーディングに対する資本賦課の方が厳しかったというのが最大の理由だと思うが、顧客のニーズも伝統的な銀行業や資産運用ビジネスにシフトしているのかもしれない。ある意味当局主導でこのシフトが起きたとも言え、当局の方向性に沿ったビジネスをするところが利益を上げられるということなのだろうか。金融機関の将来を考える時に、本来どのようなビジネスを提供すべきかというよりは、資本制約の少ないビジネスは何かを考えて事業再編を考える方が成功しやすく、そうなるとすべての銀行が同じ方向に向かってしまう。そして、中小銀行よりは大銀行が有利になり、新規参入は可能なように見えて、周辺業務以外は実はそれほど進んではいない。

翻って国内を見ると、日本は伝統的にコマーシャルバンク優位の国であり、伝統的な銀行業務を得意とする点からも、もっと国際的にプレゼンスがあっても良いはずである。米銀は、Wells Fargo以外はかなりトレーディング業務を行っており、今回の決算でも実はトレーディング収益をかなり上げている。伝統的な銀行業務を活かしてトレーディングに結び付けているようにも思える。そうなると、日本でも銀行と証券をどう一体的にビジネスとして相乗効果を発揮するかというのがキーになっていくように思える。