さて、次は具体的な計算方法である。FVAはその名の通りファンディングコストなのだから、その銀行の無担保社債のスプレッドを使うというのが最も一般的かと思う。例えば、JPMの当局向け報告書によると、estimated market funding cost based on the bank’s own credit risk とある。ほかにも、アセットスワップスプレッドを使っているところもあるという報道もある。
海外の新規発行債については、SONIA(Sterling Over Night Index Average)参照債券の新規発行が先行しており、SOFR(Secured Overnight Financing Rate)参照の社債も増えつつある。SONIA参照の新発債については、これまでのところ、デリバティブ同様後決め複利方式が使われることが多そうだが、SOFRについては、複数の方式が使われているように見える。
New index bucketsの導入とCVA資本の合算方法の修正 所要資本を求めるにあたって、一定の条件のもとで、インデックスを構成する参照資産の一つ一つのデータを使うのではなく、新たなIndex Bucketsを使うことにを可能にしている。そして異なるリスク資産の所要資本を合計する際の手法も変更しているが、こちらも資本賦課削減に寄与するように読める。これらはSA-CVAにかかる修正である。
CVA資本の対象範囲の修正 リスクのそれほど大きくないSFT(レポやストックローン等の証券金融取引)と一定のクライアントクリアリングポジションが適用除外となる。また、CCPで清算された取引のMOPR (Margin Period of Risk、担保が入ってこない可能性のある日数分のリスクを考慮するもの)のフロアも引き下げられるようだ。これによってクリアリングする取引の所要資本が引き下げられるとともに、クライアントクリアリングビジネスの資本対比の収益性が向上することになる。
アナウンスの後、予想通り当局に一部高官からは反対意見が出されているが、あまり具体的な根拠のある反論には見えない。もともと関係会社間の内部スワップに対してそこまで証拠金が必要なのかどうかは疑問だったので、ある程度行き過ぎた規制の正常化がなされたというのが個人的な感覚である。そもそも、顧客と取引をして、それをBack to backで他のEntityにリスク移転をする際、その関係会社間のスワップにかかるコストを顧客に転嫁するというのもおかしな話である。とは言え、コストがかかる以上転嫁しないと赤字になる。多くの金融機関は赤字のまま取引をせざるを得ず、それが金融機関の収益を圧迫していたが、これがなくなるというのは市場の流動性拡大にとっても望ましいことだと言えよう。