最近はビットコイン関連のコメントで有名になってしまった米国CFTCコミッショナーのStump氏であるが、先週4/19にCFTCのWebサイトで公開されたCCPに関するスピーチが興味深い。
ここでは国際規制当局間の連携の重要性が説かれており、地域に特化した規制の撤廃、規制のグローバル化が訴えられている。当然全く同じ規制を各国が導入するのは不可能ではあるものの、Compatibilityが重要との主張である。規制が重複してしまうと、増加の一途を辿るOTCクリアリングのリスク管理上のメリットが損なわれてしまうとの意見はもっともである。
そしてCase StudyとしてExempt DCOの話題に踏み込んでいる。DCOはDerivatives Clearing Organizationsの略で、米国で正式に認可を受けたCCPのことである。この他にExempt DCOというステータスがあるが、これは、米国マーケットに与える影響が軽微などの理由で、DCO登録を免除しつつ、米国参加者にも門戸を開くものとなっている。ちなみに欧州の場合は第三国CCPという認証がある。日本のCCPであるJSCCはこのExempt DCOとして登録免除決定を受けている。
今回Stump氏は、当時も話題になった2019年のExempt DCOに関するCFTCの決定が誤りだったのではないかと述べているのである。この提案によって、米国顧客はFCMを通じてExempt DCOにアクセスすることができなくなっているが、これを問題視している。上場先物にはこんな制限はないのでOTCだけに制限があるのもおかしいとしている。
これがなぜ重要かと言うと、現在米国の大手アセマネなどの主要市場参加者はJSCCに参加できない。欧州にはこのような規制がないので、JSCCのメンバーになっているが、JSCCのクライアントクリアリングの参加者に厳密な米国顧客はいないはずである。つまり、円金利市場にとって重要なのは、米国顧客がJSCCで円金利スワップをクリアリングできるようにすべきと言っているのに等しいということである。
つまり、参加者が異なること、ポジションの偏りによって生まれていたJSCC-LCHベーシスがなくなる方向に動くということなのだろうか(といっても最近はこのベーシスは既にかなり縮まっているのであまり影響はないかもしれないが)。
続けて、「米国外のCCPが米国顧客のために取引清算を可能にするため、DCO登録免除取得の道筋を再検討するよう自分が求めたにも関わらず、昨年はそのような努力はなされなかった。」とコメントしている。
最後にロケーションベースの政策を批判し、グローバル市場へのグローバルなアクセスが確保されるべき、世界中のCCPが競争することを認めなければならない、場所による制限を最小限にするよう努めなければならないとしている。マーケットのグローバルな性質を無視して域外の人が一定の地域のCCPにアクセスできなくなると、金融不安を軽減するどころか助長するので、国境を越えた協力、連携が不可欠であると述べている。至極もっともな内容でいずれも同感である。良く練られた良いスピーチだと思う。
こうして考えてみると、日本でLCHやCMEが日本の顧客に対して円金利スワップの清算ができないこと、米国顧客がJSCCに入れないことというのは、Stump氏にとっては大問題ということになるのだろうか。