LIBORの終焉と今後の金利指標

昨日ついにUSD LIBORが終焉を迎えた。もちろんSynthetic Liborで一部残るものもあるが、一般的には昨日2023年6月30日がLIBOR最後の日として記憶されることになるだろう。JPYやGBPなどの他の通貨はすでに2021年に移行を終えているので、日本ではあまり大きなニュースにはなっていないが、それでもYahooトップニュースにLIBORのことが出ていたのが興味深かった。

こうなると当然CSR(Credit Sensitive Rates)がどうなるかということに注目が集まるのだが、最終レポートが出ると言われていた昨日を迎えても、当局サイドからのアナウンスは見つからない。協議に時間がかかっているのかもしれないが、IOSCOから適格ベンチマークとして認定される可能性は極めて低いものと思われる。

このCSR問題は、シリコンバレーバンクなどの米地銀破綻を受けて米国では大きな問題になっている。そもそもLIBORの代替レートであるSOFRだと、基本的にリスクフリーレートであるため、銀行の信用力を反映していない。つまり、リスクフリーレートで貸付をしているところに銀行危機が起き、ファンディングコストが上がってしまうと、銀行としては損失になってしまう。

これを解決するためにBSBYやAmeriborなどのCSRが出てきたのだが、そのレート決定の裏付けとなる実取引が少なく、いわゆる逆三角形問題が起きている。EYなどの独立監査によるとIOSCO準拠とのことなのだが、結局LIBORと同じような不正につながるのではないかと当局が懸念するのは至極当然と言える。

それでもBSBYの場合裏付けとなる現取引は1日$600bnを超える日もあり、SOFRには及ばないとはいえかなりのボリュームになっている。Euriborの参照取引などに比べると遥かに取引量が大きい。SECのゲンスラー氏がこれを認めるとは全く思えないが、パウエルFRB議長からはAmeriborについて肯定的なコメントも出ている。こうした状況に鑑みると、IOSCOがTIBORのレビューを行い、その透明性に疑義を示していないことはラッキーなのかもしれない。そのため、日本では海外のようなCSRの問題が起きていない。そもそもIOSCOはベンチマークを認定する団体ではなく基準やBest Practiceを示すだけなので、今後どのような議論になるかはよくわからない。

結局銀行のファンディングコストの急上昇に対する懸念は強いものの、実際はSOFRをベースとした取引がメインとなっている。英国などでは、そもそもCSRの話もほとんど聞かれない。EURもEuriborからESTRへのシフトは起きるかもしれないが、CSRの議論は盛り上がっていない。本当に銀行危機が起きたら大変なことになるのだろうが、当局としてはそんなことが起きないよう規制を強化するというのがメインシナリオなのかもしれない。日本の場合はもう少し金利に関しては融通が利くというかFlexibleな印象があるので、本当に銀行危機が起きれば、金利を上げられる余地は他の通貨に比べて大きいような気がする。

まずはIOSCOの出方に注目したい。