Term SOFRのクリアリングに向けた動きが見られ始めた

CMEがTerm SOFRとOvernight SOFRのベーシススワップのクリアリングを銀行と検討していると報道された。これまではOvernightのSOFRに取引流動性を集中させるために、Term SOFRの取引には制限がついており、クリアリングもできていないため、コスト高となっていた。これが可能になると、これまでエンドユーザーとのTerm SOFR取引のヘッジに苦戦していた銀行が、容易に取引できるようになり、市場の流動性と効率性向上に資することとなる。

しかし昨日も書いたように、当局はSOFR以外のベンチマーク取引を拡大することには慎重になっているため、BSBYやAmeribor同様、Term物SOFRに対して厳しい立場を取るのではないだろうか。そもそもディーラーマーケットがない取引をCCPでクリアリングするのが望ましいのかという問題も残る。

銀行の信用リスクを織り込んでいるCSRがIOSCO準拠と認定されないという問題の他に、信用リスクは含まれていないものの、ローンなどで幅広く使われ始めているターム物金利のクリアリングもできないということで、米金利市場はあらゆる市場分断が起きている。その分のコストは銀行やエンドユーザーが負担している状況であり、早晩何らかの対策が必要となる。

日本円のターム物金利であるTORFは未だ取引がそれほど多くないためこのような切迫した状況にはなっておらず、欧州でも同様である。利用者が多いからか米金利だけが特殊な状況となっているが、この流れはもうしばらく続きそうだ。個人的にはターム物のクリアリングは歓迎すべきであり、その分のリスクは流動性チャージなどによってIMを多めにとって対応すれば良いと思う。そして流動性が上がってくればその流動性チャージを減らして徐々に正常に近づけていけばよい。

CSRについては未だ方向性を見極めるための時間をとっても良いが、Term SOFRの方はそれほど不正リスクなども大きくないものと思われる。相対で取引が残るのもリスクなので、クリアリング自体はそれほど問題視する必要はないのではないだろうか。

いずれにしてもOvernight SOFTとTerm SOFRのベーシスを安定させないと不効率である。そしてこの市場を分断しておくメリットはあまりなく、当局が気にするようなLIBORの二の舞にもなりにくいのではないかと思う。

日本でもJSCC-LCHベーシスリスクをヘッジするためにSPVを使ってStructured Notesに仕立て上げてEnd Userに売るケースが見られるが、同様のスキームを使って、このOvernight SOFTとTerm SOFRのベーシスをヘッジしようという動きもみられる。このベーシスは流動性の問題から広がることがあるが、結局最終的にはゼロ近辺に収斂するというViewを持つ投資家が多いため、若干のレバレッジを掛ければ、おそらく取引が可能だろう。もちろん当局やARRCの判断も重要だが、ここまで市場取引を制限する理由があるかどうかは、デメリットも含めて議論する必要があろう。