米国債務上限問題がマージンコールに与える影響

毎回問題になる米国債務上限だが、米国債がデリバティブ取引の担保として広く使われていることを考えると、既に米国だけの問題ではない。ISDAのAGMでのパネルディスカッションで議論されているのを聞いて初めて気づいたのだが、債務上限に関する6/1までに合意されないと、解決策が見つかるまでに満期を迎える短期の米国債は無価値になるとのことだ。

こうした米国債を担保にとっているCCPや市場参加者は、ヘアカットを変更することによって別の担保への変更を依頼することも可能だが、そうすると金融市場にパニックが生じてしまうかもしれない。また、今後はこうした担保を不適格とするようなルール変更が必要になってくるかもしれない。

確かにデフォルトする可能性が高い担保を受け取るのを避けたいというのはリスク管理上きわめて自然である。だが、そうなると満期の違いによって適格担保が変わることになり、一時的に混乱が発生する。

現状短期国債の担保ヘアカットはCCPによって異なっているが、概ね0.25%から3.75%のレンジに収まっている。過去の短期国債の市場変動からすると妥当なのだろうが、米国の債務上限のような特殊事情は考慮していない。

他にもCCPの担保条件には満期までの期間制限がある。例えばLCHは3日以内に満期を迎える米国債は非適格となっている。Eurexは15日、ICEは2日だが、CMEにはこうした制限がない。おそらく相対のCSAでこうした条件を加えているところはないものと思われるが、今後は何らかの制限をつけるところが出てくるかもしれない。

米国債のクーポン支払いが重なるという問題もあるだろうが、これはSubstition(担保の入替)で対応可能だろう。

CCPは当局とも会話をしているらしいので、何らかの対応がなされるのだろうが、市場参加者の間でこれに対策を考えているところは少なそうな雰囲気がある。もし信用力に懸念のあるヘッジファンドと取引をしていて、こうした米国債を担保に受け取っていれば、意外と注意をした方が良いのかもしれない。少なくとも該当国債を誰から受け取っているかは調べてみた方が良さそうだ。