リアルタイム取引が金融を変える

SNSによって信用不安が広がり金融を揺るがしたことが、今回のG7でも取り上げられた。24時間いつでも預金が引き出せるようになり、急速な資金流出への対応が課題とされた。

ビットコインなども既に24/7(週7日24時間)取引が可能であり、為替もほぼ24/5である。クレジットカードはいつでも使えるし、PayPayやLine Payでの資金移動も24/7だ。米国ではオンライン証券が個人向けに株式の24時間取引も可能にするところが現れている。

海外では日中のレポ取引も始まり、クロスボーダーでも取引が可能なところまで来ている。こうしたレポが広がれば急な資金ニーズに対応できる。金利が急上昇した時などに手持ちの国債によって資金調達を行いマージンコールにも対応することができる。分散型台帳技術(DLT)を使って決済を行えば、レポ金利なども分単位で計算できる。

ISDAの年次総会でこうしたリアルタイム取引について議論が盛り上がっているようであり、5年から10年すれば、ほとんどの資産が24/7で取引できるようになるかもしれないという意見も聞かれた。海外では、NYやSingaporeなど、24時間に近いところまで取引時間を拡げようという動きがある。JPXも取引時間の延長や休日取引の範囲を広げている。そのうち取引時間内、時間外取引などという言葉も死語になるかもしれない。

こうした技術をマージンコールにも使えるようにして、決済リスクも極限まで減らせば、金融システムに発生するリスクが少なくなる。ここまでテクノロジーを使った決済などが活発に議論されている中、日本の状態は若干心配だ。システム投資額が日本は極端に少なく、基幹システムもレガシーシステムが数多く残っており、最新のテクノロジーを利用したシステムに置き換わる速度が遅い。

確かに海外では、金融機関の社員が独立して金融システム会社を興すことが多いが、日本ではこうした動きは見られない。日本進出を検討するスタートアップもみられるが、企業系列のシステム会社の寡占状態を突き崩すのは困難という結論になってしまっているところが多い。とは言え、今後の金融のカギを握るのはテクノロジーであることは間違いないので、テクノロジーの進歩にはついていかないと日本の金融自体が地盤沈下してしまう危険性もある。