エジンバラ改革

ロンドンでは金融規制緩和の話が頻繁にメディアを賑わすようになった。Brexit後の金融業界の復活をかけて、以前の金融ビッグバンの再来を期待する声が多く聞かれる。英国財務省の中堅大臣ポストであるCity MinisterのAndrew GriffithがFCAや英国中銀といった規制当局向けに書簡を送り、ロンドンを金融資本市場の中心地として復活させるため、より迅速で透明背の高い改革を求めている。政府としても近々改革案を出す予定だったのだが、そのスピード感に不満を感じているのか、大臣による異例の介入となっている。

この改革案は、当初ビッグバン2.0と言われていたが、発表の場となるスコットランドの首都の名前を取ってエジンバラ改革と名付けられた。ただし、1986年のビックバンに比べるとかなり控えめな内容となりそうであり、後世に名を残すようなものにはならないように思える。

とは言え、欧州の杓子定規ないくつかの規制に対する批判が高まっている中、英国がEUの呪縛から逃れて、自由に制度設計をできるようになったことに対する期待は高まる。これで英国が地位を回復すれば、金融危機以降、厳格化が常に行われてきた金融規制に、新しい流れが生まれるかもしれない。ソルベンシーIIやMiFid IIなどで見直しが入ることが予想されている。

一方、EUの方では英国から取引を呼び込むべく、LCHに対するプレッシャーを強めている。CCPでの清算についての新しいルールが近々公表されるが、かなりEUの保護主義的な内容になっているという話が聞かれる。一応2025年に期限を迎える一時的免除以降もEUの市場参加者はLCHで清算できることにはなっているが、細かいところでLCHの使用を制限するような内容が織り込まれるのではないかと言われている。ただし、LCHを使っている市場参加者に対して追加の資本賦課を求めるという案は採用されないようなので、一安心といったところか。

英国とEUの規制の動向をみていると、英国の方が経済原則に則った規制を実現しようとしているように見える。いずれにしても今週は双方案が明らかになるだろうから、その詳細に注目が集まる。

バーゼルのFXサーベイ

バーゼルからは3年ごとに為替市場についての分析がTriennial Central Bank Surveyとして公表されているが、本年2022年が公表年に当たる。為替取引の市場は相川らず順調に右肩上がりの成長を続けている。全体の取引量は7.5兆ドルとなり、3年前から14%増となっている。

通貨別にみるとドルの圧倒的地位は揺るがず、シェアは89%で3年前からほぼ変動はない。なお、為替取引は通貨ペアで統計をとるのでこのシェアの合計は200%となっている。つまりドル円であればドルと円の両方にカウントされるため合計が200%になってしまうということだ。

円もほぼ横ばいの17%で、何とかEURの31%に続く3位の地位を保っている。4位はGBPの13%で、ここまでは大きな変動はないが、5位にCNYが7%で入ってきている。つまりAUD、CAD、CHFを一気に抜き去り5位に躍り出たということだ。世界の5大通貨にCNYが入ってきたというのは中国の影響力の拡大を物語っている。

為替の世界ではG10通貨とEM通貨のように分けて議論をするが、G10に入るAUDがEMのCNYに抜かれるというのは象徴的な順位逆転だ。ちなみに他のG10通貨はNZD、CAD、NOK、SEKだが、いずれも数%のシェアとなっており、SGD、KRW、INR、MXN、TWDなどと取引量はそう変わらない。日本の国力低下が騒がれているが、為替に関しては以前大きな地位を保っているように見える。

全体の取引量をみると2010年から2022年の過去12年の間に為替取引は約2倍のマーケットとなっている。スポット取引に比べ、フォワード、FXスワップ、通貨スワップの伸びが著しい。ノンバンクへのシフトが続くと思われたが、直近では銀行を通じた取引が増えているようだ。1日平均の取引量としては、USDが6.6兆ドル、円が1.2兆ドルだが、CNYも0.5兆ドルまで増えてきている。2010年にCNYが$34mmだったことを考えると約15倍になったということだ。シェアを落としているのが、AUD、CHF、RUB、TRYなどだが、全般的に欧州からアジアシフトの流れがみられる。

政治的混乱が起きず、このままの流れが続くと、次回3年後のサーベイではCNYがGBPやJPYを抜いているのかもしれない。