バーゼルのFXサーベイ

バーゼルからは3年ごとに為替市場についての分析がTriennial Central Bank Surveyとして公表されているが、本年2022年が公表年に当たる。為替取引の市場は相川らず順調に右肩上がりの成長を続けている。全体の取引量は7.5兆ドルとなり、3年前から14%増となっている。

通貨別にみるとドルの圧倒的地位は揺るがず、シェアは89%で3年前からほぼ変動はない。なお、為替取引は通貨ペアで統計をとるのでこのシェアの合計は200%となっている。つまりドル円であればドルと円の両方にカウントされるため合計が200%になってしまうということだ。

円もほぼ横ばいの17%で、何とかEURの31%に続く3位の地位を保っている。4位はGBPの13%で、ここまでは大きな変動はないが、5位にCNYが7%で入ってきている。つまりAUD、CAD、CHFを一気に抜き去り5位に躍り出たということだ。世界の5大通貨にCNYが入ってきたというのは中国の影響力の拡大を物語っている。

為替の世界ではG10通貨とEM通貨のように分けて議論をするが、G10に入るAUDがEMのCNYに抜かれるというのは象徴的な順位逆転だ。ちなみに他のG10通貨はNZD、CAD、NOK、SEKだが、いずれも数%のシェアとなっており、SGD、KRW、INR、MXN、TWDなどと取引量はそう変わらない。日本の国力低下が騒がれているが、為替に関しては以前大きな地位を保っているように見える。

全体の取引量をみると2010年から2022年の過去12年の間に為替取引は約2倍のマーケットとなっている。スポット取引に比べ、フォワード、FXスワップ、通貨スワップの伸びが著しい。ノンバンクへのシフトが続くと思われたが、直近では銀行を通じた取引が増えているようだ。1日平均の取引量としては、USDが6.6兆ドル、円が1.2兆ドルだが、CNYも0.5兆ドルまで増えてきている。2010年にCNYが$34mmだったことを考えると約15倍になったということだ。シェアを落としているのが、AUD、CHF、RUB、TRYなどだが、全般的に欧州からアジアシフトの流れがみられる。

政治的混乱が起きず、このままの流れが続くと、次回3年後のサーベイではCNYがGBPやJPYを抜いているのかもしれない。