欧州委員会が2020年4月に提言した景気対策の一つである。欧州各国の失業給付金支給や雇用維持のため、100bnユーロまで加盟国に低利融資をするものだ。緊急時の失業リスクを軽減するための一時的支援とでも訳すのだろうか。
2020年には、5年、10年、15年のEU SUREソーシャルボンドが39.5bnユーロ発行されている。投資家の需要もそこそこ集まったようだ。10年のSURE債は-0.42%でドイツ国債よりは利回りが高いが、イタリアのプラス0.5%よりはかなり低い。残りの60.5bnユーロのSURE債発行は2021年の早い段階で発行される見通しである。Temporaryという言葉が表すようにもともと一時的な措置として導入されたのだろうが、今後はこれが恒久化されると予想する声が多い。
他にも、欧州周辺国などで雇用をサポートするための財源がない場合でも、EUを通じて支援が得られるリカバリーファンドのフレームワークが作られた。EUは一つの国ではないため、従来は共通の税金などの財源がなかったが、このフレームワークによって、EUメンバー諸国のために債券発行ができるようになった。そしてこの債券の償還は、一部EU自身が集めた税金によって返済されることになる。税金の財源としては、プラスチックごみにかかる新たな環境税、デジタル課税が中心のようだが、将来的には金融取引税の導入も予想される。
750bnユーロがリカバリーファンドとして準備され、そのうち312.5bnユーロが加盟国に返済義務がないもの、つまりEU自身の集めた税金で賄われる。ひょっとするとこれがEUの統合を一歩進める重要なステップになるのかもしれない。2021年は約150bnユーロの発行が見込まれている。
ドイツと同じようなリスクでありながら、利回りがある程度乗っているので、一定の投資家需要が見込まれる。ただし、かなりの割合が中央銀行によって購入されているようだ。これがある程度ユーロ高に寄与している。そうすると、今後共通債の発行が増えるということは、ユーロ高の圧力がかかり続けるということなのかもしれない。そしてEUの債券購入プログラムは、今後も減ることなく継続されるということなのだろう。問題はいつそれが止まるか、そしてそれがどのような影響をグローバルマーケットに与えるかということである。