金利低下が株式上昇を促す

米国金利上昇とイールドカーブのスティープ化はほぼマーケットコンセンサスになっている。短期金利は中央銀行の政策によってゼロ近辺に抑えられるだろうが、ワクチンの広がりによる景気回復、インフレ懸念、国債発行増などの理由から、長期金利の上昇を見込む投資家が多い。

こうした金融政策や景気刺激策は米国以外でも行われているが、金利上昇の見通しが強いのは米ドルだけのようにも見える。当然日本ではイールドカーブコントロール(YCC)により金利が低く抑えられており、欧州でもほぼYCCに近い金融政策が取れらているといって良いだろう。

こうなると金利がゼロに近い日欧の投資家は米国債の購入を進めるだろうし、社債の投資意欲も高まる。これによって米金利の上昇がある程度抑えられるだろう。また、金利がなくなってしまったことから、株式やその他の資産に投資資金をシフトさせる動きも見れられる。これはおそらくインフレが制御不能になるまで続くのだろう。ということになると、米金利上昇、スティープ化は市場コンセンサスではあるものの、10年金利で1.25%とか1.5%といった水準がせいぜいということになる。

2020年は感染拡大にもかかわらず、株価は軒並み上昇したが、中央銀行の政策によって金利が抑えられ、資金が消去法で株式市場に流れたからなのだろう。そうすると金利が上昇すれば債券市場に資金が戻り、株価下落というシナリオもあるのかもしれない。

また、パッシブファンドの急増により、優良企業を選別して資金が流れるというよりは、インデックスのウェイトに従って自動的にお金が流れるようになっている。もしかしたらこれまで債券のようなFixed Income商品に投資をしてきた投資家が、金利低下によってインデックスファンドをFixed Income商品の代わりに購入するようになっているのかもしれない。いずれにしても、しばらくは金利が急上昇することはなさそうなので、既に割高な株式市場もこのままのペースで上昇するということになるのだろうか。

気になるのはインフレだが、各国が食糧備蓄を増やす中、食料価格が上昇の兆しを見せている。農産物先物やオプション取引において年後半の価格上昇を見込んだ取引が投機筋からも増えてきている。先進国というよりは、新興国や欧州周辺国においてインフレが発生し、それが何らかの形でグローバルに波及した時が市場の転換点になるかもしれない。

このような市場の異変によって一旦マーケットが動いたときにすべてが逆流して株価下落というのが最もあり得るシナリオだが、それが起きるまでにはまだしばらく時間はありそうだ。