レポ取引のクリアリングは必要か

昨年のGilt Shockに際して英国金利が乱高下したことを受け、CCPの当初証拠金負担が上昇した。これを受けて当初証拠金が高止まりしていたLCHのRepoClearでは、証拠金モデルを見直しが先月行われた。とは言え、当然のことながら相対取引に比べたコスト高は否めず、取引が一方向に偏りやすいバイサイドがレポのCCP取引を増やすとは思えない。

CCPとしては急激な市場変動に備えて十分な当初証拠金を徴求しておかなければならないのだが、市場変動が激しくなると99% VaRなどのリスクをカバーする証拠金額が大きくなってしまう。特にレポの場合は相対取引のヘアカットが極端に小さいのが市場慣行となってしまっているため、清算取引と非清算取引の証拠金に大きな差が発生している。

現状の金利変動を考えると、レポという商品は清算集中が不可能な水準になっているのではないかと思われる。現在でも通貨スワップやスワップションの清算は進んでいないが、通貨スワップの決済リスクの他に、市場急変に備えて徴求しなければならない当初証拠金が大きすぎるというのが最大の理由だと思われる。

おそらく資本コストが高く、多くのポジションを抱えるセルサイドにとっては清算のメリットはあるが、エンドユーザーにとっては、引き続き相対で取引を続けるのが最も現実的な選択肢となっている。この状況を変えられるとしたら、清算集中規制だが、これにはかなりの抵抗が予想される。というのも、今回は銀行からの抵抗というよりはエンドユーザーからの抵抗となり、コスト高が国民の年金パフォーマンスなどに影響してくる可能性があるからである。

現実的には市場急変時には、債券買取プログラムや、政府によるファイナンスが可能になることが多いので、特に国債レポ市場は、CDSや金利スワップとは様相が異なる。なかなか受け入れられないアイデアだとは思うが、レポは銀行と超大手のBalanced Portfolioを持った市場参加者に限った清算が中心で、バイサイドは引き続き相対というのが、しばらくの間のスタンダードであり続けるだろう。

ディーラーを経由した清算も可能ではあるが、通常はエンドユーザーのポジション管理はディーラーに依存しており、CCPサイドでできることは限られている。エンドユーザーが大きな一方向の取引を増やしたとしてもConcentration Chargeをそのエンドユーザーに転嫁することは現実的には結構難しい。しかもこうしたユーザーが増えればディーラーの資本コストも上がってしまう仕組みになっているため、ディーラーとしてもこうした顧客との取引を増やすインセンティブはあまりない。

クリアリングサービスを提供することによって、他のビジネスの収益が増えれば意味はあるかもしれないが、Execusionは利益相反の観点からこの二つはリンクしておらず、逆にクリアリングしていることをレバレッジにして取引執行の収益を取りに行くことは認められていない。したがって、収益性が低く資本コストの高いクライアントクリアリングビジネスからの撤退というのは、大手ディーラーの中では常に議論されている。

選択肢としては、規制によってレポ取引のヘアカットを増やし、相対取引のコストを上げることによってCCPへの移行を促すという方法が最もやりやすい。あるいはクリアリングの資本規制を見直してクリアリングブローカーを増やし競争を促すという方法もあるが、これは当局サイドには評判が悪い。通貨スワップで使われているSwapAgentとCCPの中間のような仕組みができるとレポ市場にとっては最高なのだろうが、これについてはさらなる技術革新が待たれるところである。