Research Unbundling ― 欧州で、トレーディングとリサーチサービスを切り離して、リサーチレポートを無料で受け取る代わりに取引をもらうという習慣が見直されたのは数年前のことになるが、Brexit後にこれがどう変わるかという論点が議論されるようになってきた。
2018年に導入されたMiFID IIの目玉として、市場の透明性を高めるために導入されたこの規制は、リサーチ業界を大きく変えた。ある程度予想されたことであったが、結局銀行が年間1万ドルといった固定サービスを提供するようになり、一つのレポートに2千ドルといった手数料をチャージする独立系調査会社が苦境に陥った。ファンドマネージャーはリサーチにかけるコストを削減し、結局手数料が半分になったという話もある。そしてカバー対象の企業も少なくなり、アナリストも人員削減の対象となり、リサーチ業界は縮小してしまった。
もともとはイギリスがこの規制の最大の支持者の一つだったが、Brexitで今後の動向が不透明になってきた。フランスやドイツなどは、どちらかというと規制変更を求めているという話もある。規制を完全になくすというところまではいかないだろうが、中小の調査会社に免除を与えるとか、ある程度の緩和が今年末までにも行われるという話になっているようだ。
もともと、リサーチレポートやマーケット情報などを定期的に提供する代わりに、その銀行に取引を持って行くということが、透明性と公平性の観点からは問題ということだったのだが、実はこれがそれほど大きな問題だったのか良くわからない。これを言い出すと、セミナー、接待を含む様々な顧客イベントを行うことも完全にアウトということになるのだろう。というよりリサーチより接待の方が問題なのではないかと思ってしまう。
Give and Takeというのはどこの世界でもあることで、いつも色々とお世話になっているから助けてあげるというのは人の世では普通のことである。もちろん、政治家の選挙の時のように、金品を配ってもらったから投票するということがあってはならないが、サービス業において、この線引きは非常に難しい。事務所開設祝いにお花を送るのも、海外コンプライアンス的には完全にNoであり、日本だけが特別に文化的に許されている。お花を送って数百円の図書カードやQuoカードが返礼されてくると、これは送り返さなければならない。お中元やお歳暮も同様に送り返すところが多くなってきている。
世知辛い世の中になってきたが、リサーチに関しては、しっかりした分析をするアナリストが激減して、中小企業の業務内容まで見る人が少なくなり、そうした企業が資本市場からの資金調達ができにくくなっているというのは、やはりどこかバランスがおかしいのではないか。法律事務所やコンサル会社でも、最初は無料でプレゼンをしたりすることがあるが、これを最初から手数料形式にしたら、コンサル会社は減ってしまうだろう。顧客訪問時に少し最新の市場動向の話をして、30分話をしたのだから1万円下さいと言ったら、顧客訪問はできなくなってしまう。
その意味で、欧州のMiFID IIの緩和がどこまで行われるかは注目である。