日銀のレポート「本邦レポ市場のトレンドと近年の特徴点」が非常に示唆に富む内容になっているので、ここで紹介したい。JGBレポ市場はYCCの下で低迷してきたが、日銀の政策変更を受けて突然取引量が急増した。受け渡し銘柄を特定しないGCも増えているのだが、それ以上に銘柄を特定したSCの増加が著しい。

特にこれを増加させているのが「非居住者」に分類される市場参加者である。SCの増加は日銀の政策変更を後押しするように金利上昇に賭ける10年近辺の銘柄をショートする戦略を海外ヘッジファンドが取ったことを示している。特に2022年の年末頃にこうした海外フローが急増し、市場からモノがなくなってしまったのは、市場関係者であれば記憶されているところだろう。アウトライトで長期国債を強烈にショートし、そのための玉をレポ市場で大量調達していたのである。これはある意味海外からのYCCアタックだったと言えるのかもしれない。

YCC撤廃後は5-10年ゾーンの特定銘柄のショートニーズは減ったのだが、その後は1-5年ゾーンでの両建ての取引が活発になり、先物vs現物の価格の歪みも解消された。金利のボラティリティは高まったものの、正常化と言ってよいだろう。
ただし、両方向のレラティブバリュー取引となると、やはり海外ファンドの取引量の方が増えやすく、今後も非居住者フローにフォーカスが当たってくるものと思われる。レポートによると、所在地別の取引残高では英国が突出しており、これが海外ヘッジファンドの取引量の代替指標となっているとしている。米国はデリバティブと異なってキャッシュ取引に関してオフショアブッキングに制約があるので、これはおそらく正しいと思う。
直近でも、日銀の量的緩和策終了に伴い、昨年6月以来四半期ごとに2000億円の国債購入の減額が行われており、市場に放出されるJGBが増えてきている。長期国債先物の取引量のうち海外投資家の占める割合は7割を超えており、海外中心の動きが強まっている。
とかく投機的などと言われて批判されがちなヘッジファンドであるが、海外では流動性向上に大きな役割を担っている。特に近年は市場アタックをする投機筋のみならず、市場の歪みを捉える参加者が増えており、こうしたフローは、ある意味流動性向上や市場正常化に役に立っていると言えなくもない。米国債のように保有主体の多様化は、国債の安定消化にも望ましいはずである。デリバティブの世界では、日本も海外並みに取引の透明化や標準化が進んでいるが、JGBについても市場の効率化を図ることが望まれる。