中東情勢がデリバティブ市場に与える影響

戦争などが起きると、通常は安全資産が買われるのだが、今回の中東情勢はインフレ懸念を加速させ、各国金利は上昇基調となっている。米国も9月までの利下げはないという意見が支配的となり、これまで2回の可能性があると言われていた利下げの回数予測も1回とするところが多くなっている。

国債利回りの更なる上昇に備えたヘッジ取引が活発化し、DTCCのデータによると、世界の金利デリバティブ取引高は戦争の翌週1週間で20兆ドルを超え昨年の平均の約2倍となり、過去最高水準の活況を呈している。米国では、年内の利下げ観測後退から特に短中期ゾーンの金利スワップの取引増が著しい。

欧州でもウクライナ戦争時のインフレショックの連想から、金利上昇圧力が高まっているためか、米ドル金利スワップもよりも欧州通貨の金利スワップの方が取引が増えている印象がある。英国では年内利下げ期待が大きく後退し、フランスやドイツでも短期債を中心に国債が売られ、利下げどころか利上げの話まで出始め、金利が上昇している。

一方為替市場では、安全資産のドル買いがみられ、円やユーロに対してドルが強含んでいる。EUは石油の64%を輸入に頼っており、日本はほぼ100%を輸入に頼っている。一方、引き続き安全資産とされるスイスフランが強含み、対ユーロで約11年ぶりの高値を付け、介入の話すら出てきた。一時期はスイスフランとともに円が買われることもあったが、昨今では円は有事で売られることが多くなってきた。

この高いボラティリティが継続すると、ストレス損失、VaRの上昇を招くため、CCPの当初証拠金やSIMMのパラメーター変更を通じた相対取引の当初証拠金の増加が起きる可能性が高い。これまでのところ、市場変動が大規模な倒産につながるようなことにはなっていないが、同時期に起きているプライベートクレジットの変調は気になるところである。ここで何か大きなショックが起きると、各種資本規制強化の動きが出てきても不思議ではない。少なくとも、銀行内部では、ストレスシナリオの見直しの議論などが出てくるだろうし、いったいどこまでのストレスを想定してリミットや資本を積めばよいのかという問題がクローズアップされることになるだろう。