CCPの清算基金

ナスダックの清算基金が棄損し、清算参加者が損失を被った件以降、CCPの安全性に対する注目が高まったが、今般Risk.netで大手CCPの清算基金の構成についての記事が出ている。これを見ると、それぞれのCCPによってかなりリスクが異なっているように見える。安全第一のところは中央銀行や分別された預金が主であるが、ここで少しでも収益をひねり出そうというところは社債やAgency Bondに投資をしたり、リバースレポでYieldを享受しているところもある。

日本のCCPであるJSCCの場合は、43%が中央銀行預金、31%が国債で、安全性を重視しているように見えるが、Eurexのように社債に振り向けているところもある。

FMI原則はあるものの、確かに清算基金の構成までを制限する規制はないため、このようなばらつきがあるのかもしれないが、CCPの安定性にもかかわることなので、今後は何らかのルールができていくのかもしれない。

ある程度CCP間の競争によって技術革新を促すことも必要なのだろうが、何において競争するかCCPの場合はよくわからなくなってしまう。当然証拠金や清算基金が少なければ、コストが安くなり、一部の参加者はそれにメリットを感じるかももしれない。一方リスクが高まればそれを気にする大手や保守的な参加者はそのCCPを敬遠するかもしれない。では利益を上げているCCPが良いかというと、証拠金や清算基金を利ザヤの稼げる資産に投資することも可能だが、その資産が棄損するリスクもある。とはいっても利益が出ないCCPはそれだけで安全性がなくなる。

市場参加者からすると、同じ商品で複数CCPがあるとマーケットの分断が起きる。現状であれば国内参加者から固定受け金利スワップをJSCCで行ったものはJSCCの参加者とでなければ完全なヘッジができない。これをLCHでヘッジしてしまうとCCPベーシスという新たなリスクを取ることになってしまうので、以前より市場分断が起きている。こうなると、国のインフラとして一つのCCPにまとめた方が楽ではないかという意見も出てくる。

今更一つのCCPにまとめることは不可能だろうから、何とかCCPの相互接続、リスク移転ができるように進めていくのが一番ではないだろうか。当局を巻き込んだ大がかりな議論になるだろうが、昨今の流動性では、これを進める価値はあると思う。