Basel III End Game

米国当局がバーゼルIII最終案を木曜に公表したが、これによって米銀大手行のRWAが20%増加するだろうというアナリストレポートが出ている。当初は12%程度の増加と言われていた記憶があるので、想定外に膨らんでいるということなのかもしれない。

この資本賦課の増加を賄うために、3から4年の収益を積んでおかなければならないとの分析だ。特にトレーディング業務の比率の高いGSやCitiに影響が大きいとコメントされている。JPMやバンカメは資本蓄積にかかる期間が2年未満とされており、影響は少なくなっている。FRB副議長のスピーチの中では2年というコメントがあったので、それほど大きな違いはない。

Bloombergニュースでも、米銀大手8行の資本増が19%と報じられており、20%との乖離は少ない。また、シリコンバレーバンクなどの地銀ショックを踏まえて、規制対象範囲が総資産1000憶ドルを超える銀行に拡大されおり、こちらの資本増加は16%と報じられている。FDICも対象となる銀行持株会社のティア1資本について、全体で16%の資本増強が求められるとコメントしている。先週別のニュースでも、この新規制によって、米銀6行の余剰資本が1180億ドル失われると報じられており、米国では大きな関心を集めている。

バーゼルIII Endgameと題されるこの一連の改革が施行されるのは2025年1月からだが、一定の移行期間があるため完全移行は2028年7月1日とされている。今回の最終案のコメント期限は11月30日になっているため、詳細な分析をしてコメントをまとめる作業が必要になる。日本でも資本対比の収益性に対する関心がようやく高まってきたように思うが、日本の金融機関への影響も予想される。金融機関の将来像を占ううえで非常に重要な変更なのだが、今一つ内容が分かりにくいためか、専門家が少ない。SA-CCR導入時もそうだったが、あまりよくわからないまま施行開始に突入し、それから突然プライシングが変わるということになるかもしれない。