LIBOR移行状況

ここからはLIBORからの移行が加速していくはずなので、2週間前に作成したグラフをUpdateしてみる。

https://www.jpx.co.jp/jscc/toukei_irs.html

JSCCでクリアリングされた取引のみになるが、あまり前回と変わり映えがない。取引量が低調というのもあるのかもしれないが、この期間のLIBOR関連スワップの割合は67%となっている。TIBOR関連が22%でOISは11%という結果で、前回よりOISが減っておりTIBORが2割を超えている。

ただ、ISDA-ClarusのRFR Adoption Indicatorの推移をみると5月になって明確な上昇トレンドが確認できる。RFRの割合が6.8%というのは過去最高であり、GBPの54.9%には遠く及ばないもののUSDの6.9%と同じくらいになっている。

https://rfr.clarusft.com/

また、FCAが市中協議で意見募集を始めたが、シンセティックLIBORのベースとなるSONIAのターム物についてRifinitivではなくIBA(ICE Benchmark Administration)を選び、QUICKのTORFについても言及している。USDのターム物ではCMEが選ばれたが、GBPにおいてはIBAが面目を保った形になっている。

さて、JPY LIBORに話を戻すと、次はFSBのロードマップのP5にもあるように7/31のQuoting Conventionの変更がある。USDも7/26に同様の変更が行われるが、海外では、LIBORスワップを行うときは、まずはSOFR Swapを行い、LIBOR vs SOFRのベーシススワップを入れるという方向で話が進んでいる。ただし、円については何故かここまで具体的な話は聞かれてこない。ひょっとして日本では、特に気にせずLIBORスワップが続けられることになるのだろうか。

確かに二つのスワップをしなければならないとなると資本賦課も上がり、管理も面倒なので自然とOISに移っていくことになるが、これが変わらないのなら、逆にOISスワップをするときにLIBORスワップとLIBOR vs OISの二つのスワップをブックしなければならないとなると、移行のきっかけにもならないのではないか。単に二つのレートのスクリーンがありますよ。でもOISがメインですよ。という緩い感じのConvention Changeではあまり意味がないような気が個人的にするのだが。。。

CMEのSPAN2の導入時期が近付いてきた

長らく間議論されてきたCMEの証拠金モデルの変更が今年第四四半期になりそうだ。COVIDによって先延ばしになってきた変更がようやく導入されることになる。SPAN(The Standard Portfolio Analysis of Risk)は1988年から証拠金計算に使われており、日本でもJSCCとCMEの間でライセンス契約が結ばれ、先物・オプション取引の証拠金所要額計算にも使われている。世界で32の取引所で採用されている手法なので、日本を含めて世界中にインパクトを与える。

新しい計算手法はSPAN2と呼ばれ、シナリオベースのSPAN1と異なり、ヒストリカルデータを使ったVaRタイプのモデルとなっている。市場リスク、ストレスリスク、流動性・集中リスクの3つの部分に分かれており、ローリング・ルックバック期間に基づいている。AnchorモデルかRolling Lookbackモデルかはよく議論になるが、Anchorモデルの場合は例えば金融危機の時期を含むように2008年からといった形で過去データを固定する。

Rolling Lookbackは常に過去何年かといった期間をずらしていくので、極端な市場変動の時期が外れてしまうと証拠金額が大きくぶれてしまう。こうしたブレを緩和するために、一定のフロアを設けたり、ボラティリティを調整することによって、極端な変動が発生しないようにしている。商品によっては季節性を考慮したりもする。仮想シナリオを含めるのも良く使われる方法だ。

16のシナリオに基づくSPAN1に比べ、ポートフォリオ全体の動きを包括的に考慮するため、同じネッティング契約のもとに入っている取引については、ある程度のオフセットが見込まれるのではないかと予想される。パラレルテストは既に始まっているが、概ね好評との報道が多いため、当局承認を経て実際に導入されることになるのだろう。

アルケゴスの損失により、各金融機関ともMargined Riskの管理方法については、活発な議論がされていると思われるが、このSPANもリスク管理手法の進化に重要な役割を果たすことになるだろう。無担保取引が多かった頃は企業分析、ヘッジ等がリスク管理上重要だったが、有担保取引や取引所取引が中心になってくると、こうした証拠金計算手法がリスク管理の中心になってくるものと思われる。