金融とITの融合

金融データ分析を行うCoalition Greenwichのレポートについての記事が出ていたが、バイサイドの株式トレーディングに係る予算が12%増加したとのことだ。コロナ禍で、リモートワークに対応するためにシステム投資を増やしたところが多いようだ。予算のうち40%がリモートワーク環境に対するものなので、感染終息後もリモートワークを一部活用することになりそうだ。

次に大きいのはオーダーマネジメントシステムに対する出費で27%を占めている。また、AI、ブロックチェーン、クラウド技術に対する予算も33%程度増やすとなっている。Robotic処理などの次世代テクノロジーに対する出費も増加する見込みだ。

確かにデリバティブ取引周りの処理についても、コンファメーションを郵送やFAXで送っていた頃とは大きく異なり、かなりの部分がオートメーション化された。取引のブッキングや照合作業もほとんどが機械化されており、ミスも減ってきた。

このように金融はますますテクノロジーに依存する形に変化している。業績好調にもかかわらず、人員削減は続いているが、テクノロジーに対する出費は軒並み増えている。人の仕事がマシンに変わると言われて久しいが、少なくとも予算や人員を見ているとこれは既に業界の常識になっている。

既にかなりの部分がオートメーション化されてしまったため、口頭で確認した内容が間違っていると、それがそのまま下流のプロセスに流れ、Booking、クリアリング、清算機関へと流れてしまう。電子取引の多い海外では、あまり問題にならないが、ボイストレーディングが中心の日本では、誤ったコンファメーションを出したり、当局報告データに誤りがあることを恐れるためか、わざわざこの自動プロセスを外し、複数の人がチェックするというオペレーションを行っているところもあると聞く。

日本では、システム投資にお金が流れにくい。そんなコストを掛けるよりは人海戦術でやった方が確実という結論になることも多い。解雇という選択をしにくいため、余剰人員活用をしたいというニーズもあるのかもしれない。

しかし、ここまで海外のシステム投資が増えてくると、このままでは日本の金融が大きく取り残されてしまう可能性がある。大手はきちんと戦略を立てて、システム投資をしているところが多いが、バイサイドや大手機関投資家で、Coaltionが分析したような積極投資を行っているところは少ないように思う。

海外投資家に聞くと、フェイルに対する慣行、資金決済、口座開設にかかる手間の他にも、何か日本の金融は特殊だというイメージがあるようで、極力オフショアで取引をしたいという意見が多い。

アジアを含めた海外の資金の影響がここまで大きくなってくると、日本の金融ガラパゴス化は、日本にとってあまり良い影響があるとは思えない。本当は日本で作った基準がグローバルに広がっていけばよいのだが、金融においては、残念ながら極力グローバルスタンダードに合わせていく方が望ましいのだろう。