金融機関にいると、ロングとかショートとかいう言葉が頻繁に使われるが、慣れないと結構面倒だ。基本的にロングは買持ち、ショートは売り持ちなのだが、債券の世界では商品特性の違いもあるので厄介だ。また、受けと払いの方向もわかりにくい。会社による違いもあるかもしれないが一応主なものを整理しておく。
デルタショート
固定金利払い変動金利受けの金利スワップを行うと、金利ショートになる。金融機関によってプラスマイナスが異なることもあるが、一般的にはショート方向をプラスの数字で表すところが多いのではないだろうか。債券をショートするのと同じ方向で金利が上がれば利益が出る。
反対に固定受けだとロングとなりマイナスの数字として表れる。社債をロングするのと同じ方向で、金利が下がれば利益が出る方向だ。
クレジットロング
クレジットリスクを取るという方向なので、社債の買い、CDSの売りをクレジットロングという。全員がこう言うのか定かではないが、CVAトレーダーはこの言い方を使っている。CDSをロングするという場合もあるが、これはCDSの買いになるのでヘッジ方向、つまりクレジットショートになり、結構面倒なので、クレジットリスクを取っている方をロングと言う方がCVAトレーダーにはわかりやすい。
通貨ベーシスの受け
ベーシスが受けられたのでドル円ベーシスが拡大したなどというが、日本のカウンターパーティーがドル調達をする方向の通貨スワップを行ったときに、取引を行った金融機関行サイドではベーシスを受けることになる。日本の企業がドル調達をするということは、企業サイドが当初ドルを受け取って円と交換する。その後ドル金利を払い円金利を受け、最後にドルを返して円を受け取る。
現状通貨ベーシスはマイナスだが、このような取引が増えるとドル円ベーシスがマイナス方向にさらに拡大する。サムライ債を発行して円を調達し、それをドルに交換するような場合も同じ方向になるのでベーシス拡大要因になる。反対にドル債を発行して円に倒すときはベーシスの払いとなり、ドル円ベーシスは縮小しマイナスが小さくなる。
ドル円のショート
為替の場合はスポットでドルを売って円を買う場合にはドル円のショートという。最初にドルが来ているので、それをショートするということなのだろう。ドル円が下がるというと円高方向に進むということになる。
相場の強弱を表す用語
相場の方向を表す言葉には様々なものがある。一般的に国債が買われているときは「強い」というが、反対語は「弱い」ではなく「甘い」である。国債が買われて金利が低下しているときは強、売られて金利上昇すると甘と言われる。野球の打者の打率で3割2分9厘などというが、これは0.329。厘の後は毛、糸、忽と続く。0.329155だと3割2分9厘1毛(もう)5糸(し)5忽(こつ)となる。前日の引け(終値)から0.5bp下がれば5糸強(ごしづよ)と言う。他にも様々な特殊用語があるが、国債トレーダーに外国人がほとんどいないのは、これらの特殊用語のためなのかとすら思ってしまう。
外国人トレーダーは債券が買われているときはStrong、Firm、Bullなどと言うが、売られているときはWeak、Bearということが多く間違ってもSweatとは言わない。当然日本語で牛とか熊とも言わない。
Better offeredというと売られる方向だ。日本語でもオファーが強いなどと言う。あまり上がらないということでHeavyということもある。相場の重しになるという日本語と近いのだろう。
相場が上がっているときにラリーする(英語ではRally)という言葉も良く使われる。辞書では反発する、回復すると書かれているが、単純に上がっているときにもラリーすると言っているように思う。Underperforming、Outperformingも良く使う言葉だ。相対的な意味合いがあるので、30年だけが強いときに30年がアウトパフォームするという。
改めて見てみると相場の世界は日本でも海外でも不思議な言葉が多い。