LIBOR移行進捗状況

先週は日銀副総裁の講演(最終局面を迎えたLIBOR移行対応)、ISDAのBenchmark Strategies Forum、Quick社のセミナー等、LIBOR関連の様々な情報提供が行われた。そろそろマーケットも動き出す雰囲気が感じられるので、また直近のデータが気になる。

JSCCの清算取引データを見てみると、確かに直近LIBOR Swapの割合が減少傾向にある。6/3ベーシスやDTIBOR vs ZTIBORベーシスなどはそれぞれ適宜分類して、単純にLIBOR関連、TIBOR関連、OIS関連に分けてみた。

https://www.jpx.co.jp/jscc/toukei_irs.html

OISが突然取引される日はあるものの、やはり直近はTIBORへのシフトが起きているように見える。一昨日などはTIBORの取引量がLIBORに迫っている。DTIBORは20年までしか清算できないので、実はこれよりもTIBORは多い可能性もある。グラフの期間の取引量を合計すると、LIBOR関連が65%、TIBOR関連が19%、OIS関連が16%という割合になる。昨年は8割を超えていたLIBORの割合が65%というのは進歩だが、4月が67%、5月が66%だったことを考えると、それほどトレンドが大きく変わったわけではない。

やはりヘッジ会計がネックなのだろうか。当局としても金融機関にプレッシャーをかけるより、監査法人にLIBOR移行に協力するようにした方が効果的なのではないかとも思ってしまう。時価評価を嫌う日本の文化では、会計がデリバティブ市場に与える影響が他国に比べて極端に大きい。直接デリバティブ取引をすると時価評価しなければならないからという理由で、日本でRepackが多いのも会計が理由のように思う。

来月7月からは、新規のUSD LIBORスワップが原則停止となるが、厳密にいえばドル円の通貨スワップにもUSD LIBORが含まれているので、これも停止かという話もある。ただ、現状のマーケットを見ていると、7月に完全移行ができるとは到底思えない。GBPのロードマップ上もGBP LIBORレグを含む通貨スワップはQ3移行の停止を想定しているとも読める箇所があるので、しばらくは通貨スワップの移行は起きないのだろう。海外では通貨スワップの事前移行の動きも活発化しているので、日本の遅れがここでも目立ち始めている。ワクチンと同じように、日本は動き出すまでは異様に時間がかかるが、一旦動き出すとものすごいスピードで追いつくということになるのかもしれない。