LIBORからの移行はいつ起きるのか

SOFR Swapの取引量が1月に過去最高を更新した。昨年10月のCCPのディスカウント変更時を上回る$223bnの取引があった。CMEの発表によると、同じくSOFR先物も1月の平均取引高が過去最高となり、月末のOpen Interestも最高水準となっている。とは言えeurodollar先物と比較するとまだまだ5%を超えるくらいであり、移行のペースは速いとは言えない。

流動性がないから取引を増やせない。でも取引を増やさなければ流動性は生まれない。鶏卵の典型例だ。これを断ち切るには誰かが流動性がなくても取引を始めなければならない。

トレーダーとしては、実はやろうと思えば取引を増やすことは可能だ。しかし収益になるわけではなくリスクはあるので、増やすインセンティブがない。特に顧客からのニーズもある訳ではない。当然顧客からすると、今後どうなるかが不透明な中、わざわざ新レートを使おうというインセンティブはない。とは言え、会社の方針として、あるいは当局の指示でもあれば、ディーラーサイドは、一気に移行を進めることは現実的には可能だと思っている。

新規の取引においてLiborが使えなくなる目標期限が迫っているので、おそらくここから一気に移行が加速するのだろう。というかこの頃には移行が本格化していないと、ターム物のレートの構築が遅れ、社債発行等の後継金利の第一候補がターム物RFR(Risk Free Rate)なので、キャッシュマーケットに影響が及ぶ。

日本円についてはTORFの参考値が公表されているが、まだこれを使った取引は見られていないものと思われる。透明性を高めるためTORFの公表を行うQuickベンチマークスという会社が先月設立されたが、確定値の算出開始には後数か月以上はかかる。TORFの確定値算出とLIBOR公表停止の間が数か月くらいしかなくなる可能性が高いことから、現実的にはTORFを使った取引がすぐに増えるような気もしない。残念ながらTORF先物もSOFR先物のような取引量になるとも想像しにくい。

他にも、LIBORとSOFRのスプレッドが決定される時期に移行が加速する可能性も高い。LIBORとSOFRの交換レートが決まれば、不確実性が低下するため、取引はしやすくなる。これらが起きるのは今後数か月のことなので、前もって準備をしようという動きも出てくる。

何となくマーケットを見ていると、今すぐには新レートを使った取引はしないものの、大手中心に、動き出した時のために準備をしておこうという動きは見られる。何かきっかけがあれば、こうした市場参加者が動き出し、それを見て慌てて他のところが追随するという流れになるのだろう。