緊急時に便利な米国NO ACTION LETTER

ここでNo Action Letterのことを書くのは久しぶりだが、今回3/17にCFTCがコロナ対策のNo Action Letterをいくつか出している。しかも長官のビデオメッセージ付きだ。No Action Lettterは規制の期限をいったん延期したり、規制上明白になっていない点について期限付で免除規定を加えたりするときに頻繁に使われてきた。法制化することなく柔軟に実施できるため、米国規制においては非常に便利なツールになっている。No Action、つまり規制を厳密に守れなくても当局として罰則することはないということなのだろうが、今回もコロナウィルスによって自宅勤務を余儀なくされる金融機関職員が出てきていることから、例えば自宅から取引執行を行う場合に、その会話の録音義務を免除するという内容が入っている。

日本にはこのように突然レターを出して規制の効力を簡単に変更するというツールがないため、おそらく個別のコミュニケーションがあるのだろうが、こうした内容が全業界に一律透明性高く周知されるという点で優れているように思う。

米国ではカリフォルニア州、ニューヨーク州などで感染状況がかなり悪化しており、外出禁止令や自宅待機令がこれからも拡大していく可能性がある。おそらく銀行業は病院等と同じく必須業務として免除されるのだろうが、それでも感染者が出た場合などを想定してかなりの人員が自宅勤務になっていると報道されている。特に今週はリーマンショックの初期のような市場混乱となっているが、自宅勤務がこの流動性低下に拍車をかけているように思われる。今回の危機はリーマン以上という意見も多い。少なくともリーマンショックの時はオフィスにいることができたのだから。

海外では、当局の柔軟な対応により、バックアップセンターや自宅勤務での業務継続が図られている。日本の場合は特に何ら指針が出ている訳ではないしニュースもないが、恐らく個別に対応しているのだろう。とは言え、金融危機以降のコンプラ意識の高まりで、トレーディング業務を自宅からとか、営業活動を家からというと社内コンプライアンス部門から反対されるのは目に見えている。バックアップセンターにしても、長期で使うなら支店登録をするとか、支店長やコンプライアンスオフィサーを置くとか、法廷帳簿を分けるべきだとか、様々な意見がきっと出てくるのだろう。こうした懸念を払しょくするにもNo Action Letterのような方法は極めて有効だと思われる。

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