バーゼルendgameの緩和の話が注目を集める一方で、レバレッジ比率の話が出てこない。そもそも、3年前に米国SLRについてコロナ禍の一時的緩和が延長されなかった時には、かなりのマーケットインパクトが予想された。しかし、当局が同時にレビューを行うことを約束し、将来的な恒久的緩和の道を残したことにより、市場の変動を抑えたという印象があった。だが、その後どのような検討が行われているかについての情報が少ない。
そんな中、Bank Policy InstituteがWeb上で問題提起を行っていた。書かれてことは至極もっともな内容で、同意する点が多いので、ここで改めて紹介しておく。
レバレッジ比率は、その定義上、リスクベースの自己資本規制を補完するバックストップとして設計された。つまり、あくまでもバックストップであり、これがBinding Constraintとなってはならない性質のものである。もしこれが最大の制約となれば、ディーラーは米国債のような安全資産のマーケットメークを行うより、リスクの高い債券を売買した方が資本効率が高いこととなる。
おそらく制度設計当初はこれほどの影響があるとは思わなかったのだろうが、財政赤字の増加と金融緩和によって、米国債と連邦準備預金が予想以上に増えたのが第一の誤算である。つまりこの増加分を誰かが保有しなければならないのだが、SLR設計当初はここまで残高が増えることは想定されていなかった。実際に2020年4月にはコロナウィルス拡大によって、SLRの計算から米国債と準備預金を一時的に外したが、これが銀行のマーケットメイク能力を高めたことには疑いの余地がない。
その後、FRBからはSLR緩和のコメントはいくつか出ているが、おそらくFDICやOCCなど、その他の当局との調整がついていないのだろう。
以下の図はリスクベースの資本規制とSLRのどちらの手法で資本余力があるかを比較したものである。CitiとWellsを除けばリスクベースの方が余力が大きくなっている。つまり、SLRの方がBinding Constrantになっているということを示している。
https://bpi.com/wp-content/uploads/2024/07/Figure2_slr.png
こうした制約により米国債市場の流動性が落ちているため、レバレッジ比率規制の修正は不可欠となっている。調整方法としては以下のような方法が紹介されている。
- 最低要件の3%は維持したまま、eSLRのバッファである2%を半減させる。
- SLRの分母から米国債と準備預金を除く
- トレーディング勘定で保有されている米国債を計算から除く
- 財務省のリバースレポをSLRから除外する
いずれに選択肢についても、その理由が詳しく説明されているが、確かに既に別のところで資本要件が課されているので、それぞれ緩和できてもおかしくはない。だが、3や4はかなりハードルが高いことが予想される。準備預金については日本を含め除外されているところも多いことから、2の選択肢は比較的検討しやすい。ただ米国債すべてとなると、他の当局が難色を示すかもしれない。
なぜ半分かという理論づけが弱いが、バッファを2%から1%に減らすというのは、意外と進めやすいかもしれない。そもそも日本を含むその他の国は3%の最低要件のみを適用しており、米国だけがバッファを設けている。この辺りはトランプ氏が大統領となった場合には緩和されやすいのかもしれない。
いずれにしても政府債務がこれだけ膨らんで、米国債の流動性が脅かされている中、Basel III Endgameの緩和によってSLRが更に制約になるのは望ましくない。やはりレバレッジ比率はあくまでもバックストップであるべきである。
COVID-19 のパンデミックによる市場の機能不全に対応してFRB が米国債を大量に購入したことに対応するために行われた。現金と国債をSLR の分母から外すことで,FRB は銀行がこれらの資産に対して保有する必要のある資本の額を事実上引き下げ,危機の間,財務省市場と経済を支えるために銀行のバランスシートを自由にした。2021年3月に一時的なSLR 緩和措置が終了した後、FRBはSLRのいくつかの修正 案について近々意見を募集すると表明した[3] が、3年以上経った現在も公開協議は開 始されていない。
DeepL.com(無料版)で翻訳しました。