今週水曜3/6に突然バーゼルIIIの見直しのニュースが出てきた。日本語に翻訳されたニュースの見出しも「ウォール街の大きな勝利に道」、「米当局は資本要件を大幅緩和」といったセンセーショナルなものとなっている。
CNBCのビデオクリップを見てみると、確かにパウエル氏も今回の規制強化案が多くの批判の対象となっていることを認識しており、何らかの見直しが必要と認めている。ただし、単に矢継ぎ早な誘導尋問的な質問に短く答えているだけのように見えるのだが、これ以外のところでもう少し踏み込んだ発言をしているのかもしれない。
とはいえ、全般的に「大きな勝利に道」というほどの変更が行われるかどうかは懐疑的ではある。
今回のコメント期間に寄せられた意見は300を超えるが、よく言われている通りそのうち97%が規制強化案全体またはその重要部分にかなりの懸念を示したとのことである。特に痛切に批判をしてきるのがFinancial Services Commiteeのレターで、確かに銀行だけでなく幅広くBasel III Endgameに対する批判が高まっているのがわかる。
実際に細かい内容はわからないが、ロイターの報道の一部では、オペレーショナルリスクの計算方法の変更の影響が最も大きく、低所得者向けの住宅ローンや再生可能エネルギーの税額控除に対するリスクウェイトが削減またはゼロになるという話が紹介されている。そして草案の大幅修正を行うことによって資本の上乗せ幅は大幅に圧縮される見込みとまで書かれている。
パウエル氏はまだ検討が始まったばかりなので、具体的な変更点は示していない。ただし、米地銀危機で打ち出された長期債発行拡大を義務付ける規制などについても再検討が行われる可能性があると述べている。
個人的には、クライアントクリアリングに対するCVA Capital、OTCデリバにおけるSA-CCR上の取り扱い(STMとCTMのネッティング)などがどう見直されるかに注目している。これらは、細かい点ではあるものの、デリバティブ市場の流動性に影響を与えるからである。
折しもBasel III Endgameを控えて、今年から流動性の悪化が始まるのではないかという懸念が高まりつつあったところなので、早急に検証作業結果が公表されることが望まれる。