米国Basel III最終化案

米国バーゼルIII最終化案(Endgame)の詳細が3/19に明らかになった。概ね想定通りだが、若干認識していなかった変更が含まれているように読める。

まずは、資本計算の新しい方式が提案されている。これまでは、標準的手法と内部モデルを使った先進的手法の両方を計算し、内部モデルの計算が標準的手法より資本削減につながらないようなフロアが求められていた。今後は、両方式の計算の義務付けを廃止し、拡大リスクベースアプローチ(Expanded Risk-Based Approach)なるものが使われるようになる。

大手銀行は、二つの資本計算を行い、それぞれの資本賦課の低減を図ってきた。これが一つの計算方法に統一される意義は大きい。

この手法のもとでは、住宅ローンにつき、従来の画一的なウェイトではなく、LTVに基づいてリスクウェイトを細分化することになるようだ。また、全体的に事業法人向けローンのリスクウェイトを100%から95%に引き下げ、そのうち投資適格等級の企業向けローンのリスクウェイトはさらに65%に引き下げられる。全般的に規制緩和方向に見えるが、計算方法の精緻化も併せて行っており、望ましい方向性のようにみえる。

次にオペレーショナル・リスクの標準化であるが、自社モデルの利用が廃止され、銀行の業務量に基づいた標準的な算出方法を用いることになる。ここはもう少し読み込んでみたい。ただし、投資運用やカストディ業務などリスクが低いとされる業務についての資本賦課も低くなりそうだ。

信用リスクとオペレーショナルリスクについては、内部モデルの使用が禁止されることになるが、市場リスクについては、当局承認を条件に使用が認められる。

市場リスクについては、従来のVaRに代わり、テールリスクをより正確に捉える期待ショートフォールが導入されており、これは最近のリスク管理の変化の方向性と一致している。

CVAリスクについては、BA-CVAとSA-CVAをベースとしつつも、リスク感応度をより精緻に考慮し、国際基準に近づけた形に変更とある。BA-CVAを使っていたとしても、直接カウンターパーティーのCDSでヘッジしなくても、同一業種、地域だったりすると、限定的ながらヘッジ効果が認められるようになる。インデックスものに関しては、構成銘柄が同じセクター(業種よりも広い概念)、信用区分(投資適格、非適格の区分)にあれば、シングルネームヘッジと同じように扱い、リスクウェイトに0.7を乗じる。構成銘柄が複数のセクターにまたがる場合は、各銘柄のリスクウェイトを特定し、元本で加重平均し、0.7を乗じる。

SA-CVAでは、デルタリスク、ベガリスクを補足するので、金利、為替、オプションによる市場リスクヘッジが資本賦課を軽減させることができる。CVAヘッジを行っている銀行であれば、この効果が反映される意味は大きいので、SA-CVA導入のインセンティブは大きい。また、クライアントクリアリングの顧客レグを含めた清算取引がCVA規制の除外と書かれている。これは若干驚きだ。これでクライアントクリアリングビジネスは一気にやりやすくなるのではないか。

このほかG-SIBについての変更もあるが、別記事でまとめたい。本最終案のコメント期限は6/18となっている。そこから最終規則の公表までは数か月かかるだろうから、正式な施行日は年後半か来年になりそうだ。