Basel III Endgameが大幅緩和される?

英国局は、米国での規制の状況を見極めるため、銀行資本改革を少なくとも2016年1月まで延期する予定だと報じられた。先にEUが同様の延期を発表しているため特に驚きではないが、金融業界で注目を集めてきたバーゼル3エンドゲームの延期が確実になってきた。Until at least Jan 2026と報じられていることから、さらなる延期の可能性もあるかもしれない。

直接には、英国総選挙の公示によって規制当局が動けない期間ができるため、金融機関に1年の準備期間を与えるためには延期がやむなしという結論に至ったとされている。

これとは別に、英国では再来週の9月12日に、バーゼル3.1の2度目の改訂版を公表する予定とのことである。これがほぼ最終版に近いものになると予想されている。ちなみにバーゼル3.1は英国におけるバーゼル3最終案のことを指す。おそらく3.1という呼び方を使っているのは英国だけではないだろうか。

英国、EU、米国によって、実施スケジュールは何度も延期されてきた。イングランド銀行は昨年、米国が発表した2025年6月のスケジュールに合わせてスケジュールを変更した。米国では、当初バーゼル案よりも厳しい規制を課すとして激しい論争が巻き起こり、今年初めにパウエル議長が見直しに言及したところだ。あまりに厳しい規制のため当局を相手取った訴訟を起こすとした銀行まである。

政治家も、これまでは銀行を厳しく締め付ければ人気が出たということもあり、規制強化を訴える議員が多かったが、ここへ来て逆の動きも見え始めている。米国の驚くべきところは、メディアをロビー活動に活発に使うという点である。日本のテレビでバーゼル3を廃止せよなどというCMを見ることはないが、米国では政治的なCMや業界のロビー活動に関連したCMをよく見かける。

以下の動画などは、バーゼル3によって一般市民が買うものの価格が上がる、家が買えなくなる、子供を進学させる、退職後の生活が厳しくなるなどと訴えている。日本では考えられないCMだ。

このようなCMはこれだけでなく、検索すればほかにも似たようなCMが見つかる。一般大衆に訴えかけるCMまで出てきたということは、Basel IIIがかなり骨抜きになる可能性が出てきたということなのだろうか。

こうした米国の動きを察知したEUも既にバーゼル3最終化を延期し、今回英国がこれに加わる。

それだけ資本コストが世界の金融機関の収益性にインパクトを与える重要な要素ということになる(日本はすでに3月に導入してしまったが)。東証のPBR改善要請もあったことから、今後は資本効率を重視した経営が重要になってくるが、そうなると日本でも資本コストに対する見方も変わってくるかもしれない。