TONA先物は成功するか

10/5、TFXに続いてOSEがTONA先物の上場をアナウンスした。来年早々には取引可能になるが、米ドルのSOFR先物のような成功を収めるかに注目が集まる。米国では、SOFR先物に加え、ターム物SOFRの流動性も上がってきた。他にもBSBYのニーズも根強いようで、複数の金利商品が併存する形になっている。米金利の急上昇も重なっているからかもしれないが、さすがにドルの流動性は他通貨を凌駕している。欧州ではESTR先物に対するニーズもちらほら聞かれるようになってはいるものの、ドルとは比較にならない。

円については更にニーズが少なるなることが予想されるが、このような状況の中二つの先物が作られることになっている。日銀が政策変更をして円金利市場が活発になればもしかしたら取引が増えるかもしれないが、それが唯一の望みである。マーケットが現状のままであれば、統一して流動性を集中させた方が良いようにも思うが、競争促進という意味合いもあるのだろうか。

先物の取引が増えれば、それを日本円のターム物であるTORFの計算に加えることができるので、TORFの信頼性が上がる。もともとLIBOR改革は実取引に基づかない金利指標で操作されやすいという問題があったのだが、TORFも裏付けとなる実取引がない日があり、前日のデータをキャリーオーバーしている。1か月物では、このようなケースが全体の73.8%に上るというから驚きだ。

ただし、残念ながら長年円金利マーケットに携わっている人からすると、先物がいらないとまでは言わないものの、米国のように広く使われるようになると予想する人は少ないのではないだろうか。金利スワップとのクロスマージン、先物を使うことで所要資本が削減できるといった何らかのメリットがないと、取引量が爆発的に増えるとは思いにくい。マーケットができるには、まず短期の円金利市場が機能することが先決であり、その意味でもすべては日銀にかかっていると言えるのだろう。

米国レポ市場の安定性強化策

米国金融安定理事会(FSB)が、ストレス状況下での流動性アクセスの回復力を向上させるための政策をまとめた。予想通り、CCPや取引所のような多数の参加者が直接取引できるようなプラットフォームの活用が謳われている。マージンコールによって年金ファンドが資産売却を迫られたり、投資家の解約請求を受けたりすることが多くなる一方、銀行がバランスシート制約のため取引を受けられなくなっているため、米国債市場が幾度も混乱してきた。少なくともCCPで清算すればバランスシート制約からは一定程度解放されることになる。

FSBは、過去10年間に起きた国債市場の変化によって、ストレス下において流動性が極端に低下するようになったと認めている。そしてそういった状況において流動性を提供すべき金融機関が満足に仲介機能を果たせなかったと結論づけている。結局は銀行がその役割を果たせなかったので、中央銀行がそれを補完した形になっているというのは、個人的な感覚にも合う。

当然のことながら、かといって銀行規制を緩める方向に動く訳ではなく、今回はノンバンクによる仲介機能の拡充を訴えている。ノンバンクが参加してくるとなると、同時に市場監視、モニタリングなどを強化する必要がある。銀行に対するモニタリングはかなり厳格になったが、ノンバンクやその他のレポ市場への参加者に対しても同等の透明性を求めていく必要がある。

米国や英国では、過去10年間に債務債務が約2倍に膨らんでおり、英国でも1.5倍になっている。当然国債市場も大きくなるので、この透明性、流動性向上は急務となっている。そこで今回のCCP案が出てきた訳だが、CCPによる清算は参加者のコスト増から、清算集中義務を掛けない限りは取引が増えない可能性にも触れている。とはいえ、国債現物取引とレポに対して清算義務を課すのはおそらく現実的ではない。だが、個人的には資本規制を考えると銀行にとってはCCP清算にも一定のメリットがあると思っている。ノンバンクによるAll to Allプラットフォームについては、考え方としては正しいのだろうが、これが市場の主流になるにはかなりの労力と時間が必要だ。

それにしても、こうした市場の機能安定化のための検討が真剣に議論されているというのは称賛に値する。政府債務、国債市場の規模を考えると、日本でももっとこうした検討がなされても良いと思う。もちろん、日本でも有識者を集めた会議や検討は多数行われているが、CCP、新たなプラットフォーム、取引報告など、FSBが議論している詳細というよりは、もっと日本の国債マーケットはどうあるべきかといった大所高所にたった意見が中心であり、かなりハイレベルな印象がある。検討会に参加している委員の役職が高すぎて現場から離れているのからなのだろうか。もっと日々実務に携わる専門家が細かいところまで議論をする場があっても良いかもしれない。