デリバティブ取引の担保が急増

2021年版のISDA Margin Surveyが公開されている。証拠金規制によってこの数年の間にどのくらいマージンが増えてきたかを見てみると、特に昨年の増加分が激しい。このグラフは、初年度に規制対象となったPhase 1の大手ディーラーが受け取った担保額である。IMは規制上求められるIM、IAは規制対象外であるものの受領しているIndependent Amountである。

確かにPhase 5の対象者数が多かったというのもあるが、38%増というのはかなりの伸びである。IAの方が比較的安定しているで、増加分のほどんどが規制上求められているIM(Initial Margin)ということになり、IMだけを見ると58%増である。

ISDA Margin Survey 2021 ($bn)

あと3か月程度したら9月1日からPhase 6の市場参加者が加わるが、ここで更にどのくらい伸びてくるかに注目が集まる。30兆円程度となるのでかなりの金額がIMまたはIAとしてカストディアンに眠っていることとなる。

また、中国におけるネッティングが今年可能になる見込みなので、中国の大手銀行も証拠金規制対象となるため、ここからもIMの増額が見込まれる。また、市場変動が大きくなっているため、SIMMの数字が大きくなり、デリバティブ取引の総額も増えているというのも、IMが増えている原因かと思われる。

Phase 1対象者が受け取っているIMの74%が現金となっているが、IAの方は44%が現金であり、証拠金規制のかからないカウンターパーティーからの担保は現金以外の国債や社債で受け取っているようだ。

一方CCPにおけるIMは2021年に若干の減少となっている。特にLCHの減少が大きい。こちらも$323bnで相対取引のIM+IAと同水準なので、市場全体では80兆円近くのIMが存在していることになる。これに加えてVMがあるので、金融取引の担保額は証拠金規制導入後急増した。ここまでくると市中に流通しているマネーサプライにも若干の影響があるのかもしれない。